たいせつな気づき:新型コロナウイルスをのりこえた未来の物語
トモス・ロバーツ 2021/02/24(刊行予定) 創元社
美しくて柔らかくて優しい色合いの絵本。
その色合いを味わうだけでも、心が穏やかになるような画面だ。
水彩のぼかしたような輪郭が、画面を一層、柔らかくしているのだと思う。
この絵本はロックアウトされたなかで、作者が自分が絶望しないために描いたという。
人には希望が必要だ。
出口に光が見えるトンネルを行くのと、光が見えないまま洞窟を進むのでは、耐えがたさが異なる。
作者自身のための希望は、きっとほかの人にも光を灯すだろう。
日本では、今のところ、本格的なロックアウトを経験していない。
去年の緊急事態宣言と巣ごもりの勧めの時期を思い出す。
本格的なロックアウトではなかったものの、それでも、Covid-19についてわかっていないことがまだまだ多い状況で、不安ばかりを煽られていた。
私自身、抗がん剤治療が終わって日が浅く、横になって過ごさねばならない日々だったから、外出そのものが難しかったのであるが、難しいとしてはいけないの間は大きい。
そして、高齢の両親が、自分たちと私を守ろうと必死に閉じこもろうとする姿が、レイモンド・ブリッグス『風が吹くとき』の主人公夫婦に重なって見えた。
政府の広報を素直に信じて、実直にその通りにして、大丈夫だその通りにしているんだと言いながら、死んでいく人たちにしてはならないと、強く思ったことを今もはっきりと覚えている。
あの時に、私はこんな希望を描くことができただろうか。できていただろうか。
医療従事者など特定の職業や職場では家族以外の接触を厳重に禁じた生活を継続している人たちはいる。
他国のロックアウトに比べればゆるやかな規制であるが、今もまた緊急事態宣言が出ている都道府県がある。
ワクチンの接種は開始されたが、まだまだ、Covid-19に警戒した生活は続けなければならないだろう。
次の流行の波、その次の流行の波が、これからもまだ人の命を奪っていく可能性もある。
生活への打撃を受けて、終わりの見えなさに打ちのめされそうな思いをされていらっしゃる方も少なくないと思う。
現に、自殺者数は増加している。
どうか、未来に希望を。
奇跡を思い描くことは、こういう時にこそ必要なのだと思い出させてもらった。
それがよかった。
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#NetGalleyJP で拝読させていただきました。
これから出る本です。
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