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2020.02.27

イタリア「地パスタ」完全レシピ

小池教之(料理)・池田愛美(文) 2019 世界文化社

その土地その土地の風土と歴史。
どんな食材があって、どんな食材が好まれて、どのように料されるか。
その土地ならではの味というものがあって、イタリアのなかにもいろんな味がある。
「その土地に生まれ、受け継がれて、郷土の料理として存在している」数多くの「地パスタ」。その土地ならでは、その地方特有のパスタ。
単なるレシピ本よりも、もう少し文化史や民俗学ぽいというと、大げさに聞こえるかもしれないが、食を通じてその土地を知るような本だ。

イタリアに20ある州ごとの紹介から、それぞれの料理の背景。
乾燥パスタの種類や、手打ちパスタの種類。
基本のトマトソース、ラグー、ブロードに、多様な主材料、多様な仕上げのトッピング。組み合わせは無限だ。
色鮮やかでうっとりと味と香りを思い浮かべたくなる写真に、それが思い浮かぶような解説。
情報がぎっしりと書き込まれており、読んでいるだけでも面白い。
手打ちパスタを使ったレシピでは、パスタそのものの作り方も、時に工程の写真つきで紹介されている。
レシピの説明はどれも簡潔で明快、わかりやすい。

たとえば、南米原産のトマトがヨーロッパに伝わるのは大航海時代の16世紀以降。
その前にイタリアで作られていたパスタはどんなものだっただろうか。
そんな好奇心を満たしてくれるようなパスタもある。

ウサギや鹿、いのししといったジビエを使ったラグーのレシピもある。
馬に仔羊、鳩を使ったレシピもある。
これらはさすがに自分では作ることはないと思う。
材料を手に入れるあてもない。
それに、食べてみたいと、作ってみたいの間には、それなりの溝があったりする。

この本のレシピはひとつも作ることがないかもしれない。
それでも、何度も見たい、知りたい、手元に欲しいと思って購入した。
こんな思いがけない出会いがあるから、本屋さんは楽しい。
帯に「パスタ図鑑」と書いてある通り、レシピ本というよりも、図鑑であり事典である。
いや、カチョ・エ・ペペや自家製トマトソースのスパゲッティ、絶望のスパゲッティといった基本のパスタなら作れそうであるし、レシピ通りの味を試してみたいと思う。

できれば、この本を持って行って、これが食べたいと指さしたら作ってくれるようなお店がどこかにないものか。
美味しいパスタが食べたい。

2019.12.24

呪いの言葉の解きかた

上西充子 2019 晶文社

「呪いの言葉」は、相手の思考の枠組みを縛り、相手を心理的な葛藤の中に押し込め、問題のある状況に閉じ込めておくために、悪意を持って発せられる言葉だ。(p.16)

著者は、労働、ジェンダー、政治といった社会のなかに、その呪いの言葉を見出していく。
同時に、呪いを解きほぐす言葉を見出していく。
呪いを解きほぐす言葉は、大きくわけて、二種類ある。
誰かが自分に届けてくれた「灯火の言葉」と、誰かが自らに向けて発した言葉や自分たち自身の中から湧き出てくる「湧き水の言葉」だ。

このネーミングがなんとも素晴らしいなぁと思った。
これらの呪いの言葉は、時に、認知のゆがみであるとか、非合理的な信念であるとか、そういった言葉で私が慣れ親しんでいるものとクロスオーバーする。
ネーミングが変わると、手触りまでよくなるような響きやすさを感じた。
間違いや失敗ではなく呪いなんだから、それを解いてみようよという流れは、すんなりと受け止めやすい気がする。

困ったことがあるときに、相談できる相手がいること。責められ、自分だけで対処することを求められるのではなく、手を差し伸べてもらえること。そういう、安心して助けを求められる条件を欠いており、助けを求めたときに、助けが得られたという体験を欠いている人が、大きな困難に直面したときに、いきなり適切な対処能力を発揮することはできない。(p.104)

もっともである。
こうして社会という人と人との間の問題として見ることは、問題を目の前の一人の自己責任に落とし込まないために必要である。
心理職として人と相対するとき、心だけを見つめていても、見逃してしまうことがある。
その心の置かれた時代と場所まで視野に入れて見直すような感覚を覚えた。
そうせざるを得なかった背景を思い、それでも今この瞬間まで生き延びてきたことに敬意を払うことを忘れてはいけない。

問題を「開く」こと、ひとりではできないことは「できない」と言い、適切な助けを求めることこそが大切なのだ。(p.117)

時にマンガやドラマを題材にしながら、呪いに縛られて問題を感じている人を分断しないように語り掛ける。上西さんの目線はひたすら優しい。
穏やかにきっぱりと現実を語る口調に、安心や信頼、誠実さを感じた。

心理職は、灯火の言葉をなんとか送ろうと差し出したり、湧き水の言葉が湧き出てくるのを手伝い見守るような仕事だと思う。
いつもいつも、相手にフィットするとは限らず、どうせ仕事なんだからと受け止められることもある。それは間違いではないが。
また、口先だけのリップサービスや気休めぐらいの軽さでしか、伝えられないときもある。
そういう忸怩たる思いをすることはあるが、そこを、「みずからの職業を引き受けたうえで、みずからの生身の身体から、相手に向き合って、届けてくれる言葉だと受けとめたい」(p.211)と上西さんは書く。
この一節は、私にとっての強い灯火の言葉となった。

ことばは光となり、水となる。
たんぽぽの綿毛のように、いつしか広がり、届くべき人に届くかもしれない。
読み終えて、表紙がとても素敵だと思った。

2019.05.17

大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A

石田 眞・浅倉むつ子・上西充子 2017 旬報社

この本を必要とするのは、大学生だけではない。
すべて働く人が知っておいて損がないことが、どこかしらにあると思う。
労働契約や罰金、有給休暇やハラスメント、裁量労働制ってなに?ということなど。
就職前の活動から、退職に至るまでのあれやこれやは、働いていると無関係ではいられないことが書いてある。

労働法や労働問題を専門とする先生たちによるまっとうなアドバイスだから、身近な大人よりも信頼してよいと思う。
決して分厚い本ではないし、Q&A方式で具体的なトラブルを挙げて説明してある点でも、参照しやすい。
普段から読み込むまではしなくても、身近にあるとよい本。

アスピーガールの心と体を守る性のルール

デビ・ブラウン 2017 東洋館出版社

対人関係に苦慮しやすい発達障害傾向のある少女たちのために書かれた本だ。
アスペルガーの少女という意味の、アスピーガールという可愛らしい呼び方にこだわらず、お付き合いがうまくいかない、お付き合いというものがまだよくわからない、という人たちに読んでもらいたい。
これは性のハウツー本ではなく、人付き合いのためのハウツー本だから。
きっと、必要としている人は多いと思う。

文字を読むと疲れてくるという人なら、目次を見て、気になったところだけでも読んでほしい。
できれば、男の子たちにも知っていてもらいたい。
大人の人たちも、彼らがどんなことで困りやすいか、どんなアドバイスが役立つのか、知ってもらいたい。
望まないセックスから身を守る。当たり前のことをわかりやすく、優しくて気さくな言葉で書いた、とっても素敵で、素晴らしい本だ。

表紙も可愛らしくていいなぁ、と思った。
性という一文字に過剰に反応してしまう人もいるとは思うけれども、もし見かけたら、恥ずかしがらずに手に取ってもらいたい。
ちっとも、恥ずかしいものじゃないのだから。
あったかくてまっすぐな、応援の言葉に触れてほしいなぁ。

2019.04.05

世界一美味しい煮卵の作り方:家メシ食堂ひとりぶん100レシピ

はらぺこグリズリー 2017 光文社

この本の大きな特徴はお料理ごとに予算が書いてあること。
外食で食べるときのお値段と見比べてみるとよいと思う。

そして大事な裏技が書いてある。

「料理なんて適当でOK!」

本当にその通りで、レシピ通りの材料が手に入らない時には違うもので代用したり、付け加えたり、減らしたり。
市販のものだって、どんどん取り入れて利用すればいい。
毎日の料理ってそういうものであることを踏まえた上で、もっと気軽に作ってみようよと提案する本になっている。
料理がなんだか小難しくて面倒くさくて、ハードルが高いと感じている人にお勧め。

タイトルから煮卵だけで一冊の本になっているのかと勘違いしていたので、私も驚いた。
これ一皿で一食になるような、ご飯ものや麺類が多いかな。
自分なりの味付けを探したり、栄養のバランスを考えるようになる手前の、まず作ってみるところから始める人を、これでいいの?と驚かせたい。

2019.03.29

常備菜

飛田和緒 2011 主婦と生活社

表紙のマカロニサラダが美味しそうで購入した。
というか、気づいたら先に家族が購入していた。
本屋さんに平積みにされていた時、何度も目がとまった。
手に取りやすい小さめサイズで、見た目がとても愛らしい。
この本から、同じ大きさのレシピ本を集め始めた。

いつも台所にあるような材料で作れる、毎日のおかず。
紹介されているレシピはシンプルで、好みに合わせてアレンジしやすい。
今回は、NetGalleyJPの《料理レシピ本大賞 歴代大賞作品を実際に作ってみたキャンペーン》に参加するために、ひじきのサラダを作ってみた。
ひじきと新玉ねぎ。レシピでは、すし酢であえることになっているが、家にはなかったことと、家族が海藻のにおいが強いと嫌がるから、ライムや黒酢、ポン酢などを適当に加えて、ごま油をひとたらし。
白と黒の組み合わせがユニークで、お気に入りのサラダ。緑を加えてもはえるし。今回やルッコラやクレソンをあわせてみたが、夏場に紫蘇やミョウガ、カイワレ大根とあわせても好き。
まさか、ひじきをサラダで食べるとは思ってもいなかったので、とても印象深いレシピだったりする。

もう一つ、紫玉ねぎがちょうどあったので、白菜のコールスローも作ってみた。これはこの色合いで作ってみたかった。
白菜の淡い黄緑色と酸に触れてピンクがかった紫玉ねぎのコントラストが、とても可愛らしくて綺麗なのだ。ディルをトッピングしてみる。
キャベツのコールスローも好きだが、白菜で作ると一層柔らかくて穏やかなサラダになる気がした。

まだ作ったことがないレシピもこの本の中にはあるけれど、私が定番にしたものもあれば、家族が定番として作るようになったものもある。
我が家の定番を増やしてくれた、大事な一冊。

つくおき:週末まとめて作り置きレシピ

nozomi 2015 光文社

以前からブログで知っていた方の本。
なるべく自炊で節約したいけれども、週末ぐらいしか料理ができない。そんな人におすすめの一冊。
実際に著者のペースでお料理をするには慣れも必要かもしれないが、マルチタスクをスムーズに行うためのタイムスケジュールも示されている。
なかなかいっぺんに料理をすることに慣れれないという人には、このタイムスケジュールも参考になるだろう。

これも≪料理レシピ本大賞 歴代大賞作品を実際に作ってみたキャンペーン≫のなかに挙がっていた。
私が選んだのは「みそ豚」。豚肉を味噌漬けしておいてから、玉ねぎと炒めるというお料理。
手順も少なく、実際にやってみると簡単。だが、濃厚な味がとても美味しい。

私はワケギがあったので、それを加えてみたけれど、野菜をあれこれ変えながら楽しむこともできるだろう。
キャベツやレタスも合いそうだ。ニラとキャベツと玉ねぎで回鍋肉風にしてみてもよい。アスパラやブロッコリー、パプリカもきっと美味しいに違いない。
炒める時に唐辛子を一振りしても味に変化がつけられる。
休みの日に多めに味噌漬けを作っておいて、週に2回でも、野菜を変えながら作ってもいい。
とてもいいアイデアのお料理だと思い、これは我が家の定番にしようと思った。

ラクうまごはんのコツ

瀬尾幸子 2104 新星出版社

とても丁寧な本だなぁと思った。
なにも難しいことは書いていないのだけれども、美味しいご飯を自分で作れるようになりたいなと、気合が入ったときに初めて手に取ってほしい。
道具も材料も、なにも特別なものはいらないのだけれども、それぞれについてわかりやすくきちんと説明してある。

紹介されているレシピも、よく見慣れたものばかり。
いわば、家庭科で習ったお料理を、大人になった今、大人の目線と理解力で振り返るところから、「ちゃんとわかった」「ちゃんとできる」に繋げるような作りになっていると思う。
あの時には言われたとおりにやっただけのことが、実はこんな意味があったんだとわかるかもしれない。

この本も≪料理レシピ本大賞 歴代大賞作品を実際に作ってみたキャンペーン≫の中の一冊。
私が選んだのは、切り干し大根とさつま揚げの煮物。
先日、自分なりに作ったときには少し歯ごたえが残った切り干し大根の煮物だった。
それがどうだ。この本の通りにやると、とろけるようにふっくらと柔らかい煮物ができあがった。
とても簡単なのに。なんだろう。この裏切られた感じ。ずるい。

2018.10.29

世界一やせるスクワット

坂詰真二 (監修) 2017 日本文芸社

スクワットはどういう効果があるか。
適切に行うにはどうしたらいいか。効果的にするにはどうしたらよいのか。
スクワットの種類やそのほかの運動について、写真つきで丁寧に説明してある。
きちんと健康的なからだを作っていくためのアドバイスとして、手に取る価値がある一冊だ。

運動をしないといけないとわかっていても、私が苦手意識を持っているのがスクワット。
下手にやれば膝が痛くなりやすい。どうすれば正しいか、わかっていないとやりづらい。
やれるだけやってみよう、ちょっとだけでもやってみよう、の、ハードルが高いトレーニングだと思っていた。
でも、ちょっとだけでもやってみようかな。そんな気持ちになれた。

本当は、一週間でもやってみてからレビューを書こうと思ったんだけども、風邪で寝込んでいたのでこれからの課題。

2018.10.13

性の多様性ってなんだろう? 

渡辺大補 2018 平凡社

中学生ぐらいの人に向けて書かれた本だ。
筆者が若い人と語り合うような構成になっている。
とても読みやすく、若い人が性について戸惑い、悩むときに、支えになるような一冊である。

性は、身体の性別やDNAのタイプ、性自認、性役割、性志向など、多次元の概念から構成されている。
丁寧に考えていくと、人というものは人それぞれであることにたどりつく。
多様性であることを肯定していく語り手の言葉は読み進めるほど、安心感を持った。
誰かが性のことを悩むとき、問題は悩ませている社会であり、システムであり、その社会を作っている大人たちの責任であると、きちんと指摘しているところがいい。

この本に無関係な人はいない。性に関心がない人も、性を有している。
性的な視線にさらされているかもしているし、無意識のうちに性役割や文化を受け取っている。
だから、性を語ることは、すべての人について語ることになる。
この本を、LGBTの理解するための本と紹介するのはもったいないと思った。
すべての人が、自分は自分、これでいいんだと思えたら、少しだけ楽になれる。

男性と女性が結婚して、二人ぐらい子どもを持つことが当たり前だと思っている人たちがいある。
それが「普通だから」と思考停止している人に、それって本当?と確めたい。
これは、大人に読んでほしい本だなぁ。

Here is something you can do.

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