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香桑の近況

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# ここでないどこかで

2020.06.19

世界 魔法道具の大図鑑

バッカラリオ他 著/ソーマ 絵/小谷真理 日本語版監修/山崎瑞花 訳
2020 西村書店

マラクルーナという人が集めてきた魔法の道具。
彼の家は二階建てで、地下室つき。ベッドルームやキッチン、バスルームといったどこの家にもありそうな部分に、書斎や温室まである。貯蔵庫、物置小屋や屋根裏部屋などなど、部屋には一つ一つ名前がついている。
そんな、いかめしく、ちょっと古そうなお宅を、自由に探検させてもらえるような絵本になっている。

シックな色合いが大人っぽくて好みだ。
その上、衣服のデザインであるとか、細かな模様の壁紙だとか、細かいところまで、じっくりと何度だって見たくなる。
宝物庫があるのは、見逃せない。
けれど、家全体が宝物庫のようなものだ。
ページを開いた時から、ワクワクが止まらなくなる。

マラクルーナは、読者を最初に書斎に案内する。
床にも本が積み重なり、紙が散らばっているような書斎だ。
壁の一面に作り付けの書架がある。壁にはろうそくのブラケット、机の上にランプと羽ペン、砂時計。ふかふかクッションの肘掛け椅子に、なんだかよくわからないものもいっぱいある。
そのなんだかよくわからないもののなかに、いろんな魔法の道具があることを、ひとつひとつ教えてくれる作りになっている。

これが興奮せずにいられようか。
あれもこれもそれもあれもこれも!!
聞いたことある。知っている。知っている。と、ドヤッとしたくなる人もいるに違いない。
その中で知らないものがあると、ちょっと悔しくなって、調べたくなることだろう。
ファンタジーを読み始めたばかりの年若い人であるなら、この図鑑を片手に、それぞれの財宝を求めて、いくつもの本の渡り歩く冒険者となれる。

どんなアイテムが出てくるか、御自分の目で見て確かめていただきたい。
これは、ファンタジーが好きな人の頭のなかにある城だ。
あの物語、この神話、そのゲーム、あのマンガ、このアニメ。
古くて忘れられそうになっているものもあれば、最近になって知られたものも、分け隔てなく集められたコレクション。
いつかどこかで触れた魔法の道具、噂に聞いた不思議な道具が、ぎっしりに詰め込まれている。
きっと私のなかにも私の城があり、書斎があり、戸棚があり、倉庫があり、陳列室がある。
ファンタジー好きな人はそれぞれの城で、それぞれのコレクションを展開しているはずだ。
子どもの頃からのワクワクを取り戻してくれる素敵な本。

#NetGalleyJP さんで拝読。

2020.04.14

異世界居酒屋「のぶ」6杯目

蝉川夏哉 2020 宝島社文庫

気づいたら、もう6冊目。
毎回、楽しみにしているシリーズだ。出たらすぐに買い、すぐに読み、何度も読み返す。
から揚げが出てきてはから揚げが食べたくなり、串カツが出てきては串カツが食べたくなり、こんな居酒屋が歩いて行ける距離のところにあればいいのに、と何度願ったことだろう。

今回は、ガレットがたまらなく食べたくなった。
完璧と名付けられたガレットを、香り高いシードルと共に。
そうできたら、どんなに素晴らしいことだろう。
調べてみたら、Covid-19の世界的な流行に伴い、外出自粛要請や緊急事態宣言が出ているなか、ガレットを食べに行っていたお店も休業している。
自分で焼けばいいのだろうけれども、お店の雰囲気やバターの香りを思い出して、せつない気持ちになった。

物語の中で、人々は毎日の生活を謳歌している。
顔馴染みの人々との会話、家族との再会や交流、恋愛や結婚、職業人としての成長。
その毎日に、美味しい酒があり、美味しい食事がある。
そういう極めて「人間らしい」営みが、今、現実では感染症の流行によって阻害されていることを強く感じた。
心配事がゼロではないけれど、当たり前に出かけ、当たり前に働き、当たり前に笑い、当たり前に語らう。
つい最近まで当たり前だった日々がここにある。

世の中が落ち着いたら、トリアエズナマで祝おうか。
それとも、しみじみとレーシュを味わいながら、あんかけ湯豆腐やだし巻き卵をゆっくりと噛みしめるのもいい。

美味い料理を、自分の好きな場所で、自分の好きな人と食べる。(p.50)

そんな日常が早く戻ってきてほしいと思った。

2019.10.15

白銀の墟 玄の月 第1巻・第2巻

小野不由美 2019 新潮文庫

18年前。
景王陽子は、利き腕をなくした女将軍と角をなくした黒麒が戴に戻るのを見送った。
たった2騎でなにができるのだろう。
どちらも大きな傷を抱えていた。体にも、心にも、大きな喪失を抱えていた。
それでも、彼らは彼らの国に帰らなければならならなかった。
自分たちだけが安全な場所でのうのうと過ごすことを、自分に許すことはできなかった。
読者もまた、悲壮な覚悟をもって旅立つ彼らの背中を見送ることしかできなかった。

あれから、18年が経った。
あっという間のようであり、彼らの消息を知ることをあきらめたこともあった。
しかし、ようやく、物語に時代が追い付いたように感じた。
戴の悲惨は、今の、この国の悲惨に他ならない。
そう考えるほど、現実に貧困や無力感が充満しつつある。他人事ではない。
なにをどうすれば、人々が食べるに困らず、寒さに凍えず、いたずらに殺されない、そんな政治が行われるのだろうか。

戴の嘆きを自分の嘆きと重ね合わせながら、2冊の物語を読み進めていった。
あまりにも重なりすぎて、その重たさに嘆息し、のろのろとしか読み進められなかった。
希望はどこにあるのか。
あの方はどこにいるのか。
古馴染みの名前と再会するたびに、読む速度は速まっていった。
彼は、彼らはどうなったのか。今も生き延びているのか。味方になってくれるのだろうか。
味方が集まれば、そこに希望を見出すことができるのではないかだろうか、と。

読み進めるほど、希望にすがりたくなる。
逃げ水のような、追いかけるほど遠のく希望であるが。
一喜一憂を何度しても、その希望に手を伸ばさずにいられない。
どうか、この国の悲惨が終わるようにと。

しかし、また一ヶ月を待たなくてはならない。
見届けないわけにはいかない。彼らの旅のゆくつく先を。
希望は残されているのだろうか。

 *****

以上、ネタバレしないように精一杯、留意してみた。
この本を読むのは、自分の目で確かめたいと思う人ばかりだろうと思うので。
物語の重厚さ、さすがでした。

2019.07.08

フェオファーン聖譚曲(オラトリオ) op.1  黄金国の黄昏

菫乃薗ゑ 2019/08/28刊行 opsol book

国を倒す。
復讐と革命の物語だ。

ロシア風の名前と東アジア風の世界観、ヨーロッパ風の食文化や生活風土。
剣と魔法の物語であり、専制君主が君臨する王国、その宮廷を舞台とした物語だ。
ロジオン王国の貴族たち、魔法使いたち、騎士たちと、登場人物が多い。
長編となる物語の第一章であるが、意外なほど、登場人物たちの立ち位置が目まぐるしく変わる。
そのスピードが、読み手を引き込む力になる。建物や衣装など、想像の手がかりとなるような描写がもっとあればと思う反面で、このスピードを殺さないように冗長な描写は控えめにして、物語が展開していくとよいなぁと思った。

ありがちな異世界からの召喚の魔法に頼ろうとする、黄昏を迎えた国。
その幕引きを、主人公アントーシャはどのように成し遂げるか。
これはぜひとも続きが読みたい。
真っ赤な装丁も印象的であり、実物を手に取ってみたいと思っている。

#NetGalleyJPで読ませていただいた、これから出る本。楽しみだ。
著者と出版社の、これからの活躍を応援したい。

#フェオファーン聖譚曲オラトリオ #NetGalleyJP

2019.04.23

シェーラ姫の冒険(下)

村山早紀 2019 童心社

新しい国を1つずつ回りながら、宝石を1つずつ集めていきます。
シェーラ姫の冒険の後半は、びっくりするような出来事が待っています。

同じ目的を持つ、3つの勢力。
シェーラ姫とファリードとハイル。
孤高の魔法使いサウード。
元盗賊ハッサンとアリの二人組。
さあ、彼らのうちの誰がどうやって、宝石を全部そろえて、魔法の杖をつかむのでしょう。
誰のどんな夢がかなうというのでしょうか。

明るくて元気で可愛くて、心も明るくて元気で可愛いシェーラ姫は、笑顔と怪力の持ち主で最強の魔神の守護を得ていますが、大人たちと戦うには向いていません。
それに、彼女は自分のためではなく、自分の故郷を救うために頑張っているのですから。
だから、戦う理由がないのです。ただただ、助けたいだけ。守りたいだけ。

人は大人になると、大人の基準で物事を理解し、判断し、行動しようとしてしまいます。
打算であるとか、計算であるとか、現実的なものは、そういう大人の使う論理です。
そんな大人たちになってしまっていたサウードもハッサンも、ある意味、シェーラ姫に調子を狂わされてしまったのでしょう。
自分のことしか考えないあまりに竜になってしまった魔法使いと遭遇した時、そして、シェーラ姫が一番の危機に陥った時、サウードもハッサンもハシーブも、かっこいい大人たちに大変身するのです。
シェーラ姫が道すがらに出会ってきた色んな国々の大人たちも、危機が自分たちを脅かすからだけではなく、自分たちの代わりに戦っているのがシェーラ姫だからこそ、最大限の協力を差し出したのだと思います。

ああ、こんな大人でありたいな。
私はそう願っています。
できることはささやかであるけど、子どもを守ろうとする大人でありたいな。
その願いを、そのまま口にしてくれる大人たちがかっこよくて、大人になってから読んでいる私は胸がきゅうっとなったのです。
とりわけ、私は、ハッサンの大ファンになりました。
子どもの時に読んでいたら、きっと違っただろうけど。

この物語には、魔神たちが出てきます。
とても大きな力を持った不思議な存在です。
彼らは、まるで犬や猫のように、ひたむきに人間を愛してくれます。
あまりに一途だから、ちょっと切なくなるぐらい。
そして、先に逝ってしまった存在も、ずっと自分の一部として力を与え続けてくれることを教えてくれるのです。
とても、この作家さんらしいなぁ、なんて思ったりもしました。

子どもである人も、かつて子どもであった人たちも、この物語はけして誰も見捨てません。
寂しい人、つらい人、苦しい人、悲しい人、傷ついた人の心にも、シェーラ姫の笑顔が届きますように。

ああ。なんだ。
それって、サウードじゃないか。

2019.02.04

シェーラ姫の冒険(上)

村山早紀・著 佐竹美保・絵 刊行日2019年3月15日 童心社

母親の大きな指輪を借りてみたり、ミントティーや羊の焼き肉ってどんな味だろうと想像したり、かつて、たくさんの子どもたちが魅了された物語。
初読みの大人も、最初の数ページでわくわくして、冒険の旅の仲間となりました。
大人が読んで違和感のない、さりとて児童文学の気配のある、絶妙の難易度調整がされた整った日本語になっています。

悪い魔法使いに石にされてしまった王国を救うため、7つの宝石を探す旅に出た3人の子どもたち。
素直で元気でお人好しで優しくて怪力なかわいいお姫様。シェーラは心も体も強くあろうとしている特別なお姫様ですが、誰もが思わず笑み返したくなるような魅力を持っています。
シェーラの幼馴染のファリードは魔法使い。
途中から旅に加わるハイルは元盗賊で、短剣使い。

子どもたちの敵である悪い魔法使いサウード。
元盗賊の錬金術師ハッサン、魔法の杖と地図の話を教えてくれる賢者ハシーブ、正義の海賊シンドバット。
砂漠のオアシス、海の中の幽霊船に守られた島、雪深い山奥に建つ王国、空を飛ぶ賢者たちの住む都市。
それぞれの章(きっと、これが一冊ずつだったのでしょう)ごとに、新しい舞台が広がり、新しい登場人物と出会い、シェーラは成長していくのです。
悲しいことやつらいこともあるけれど、シェーラ姫たちと一緒なら、きっとなんとかできると信じられる、素敵な物語です。

読み手は旅の4人目の仲間になったり、シェーラ姫に乗り移ってみたり、ファリードやハイルに憧れてみたりしたことでしょう。
たくさんの子ども達が魅力されたのもよくわかります。
こんな物語に幼いうちに出会えると、きっと心のなかでキラキラとお人好しで優しくて素直な笑顔が輝き続けるに違いないと思いました。
シェーラ姫のお友達だった人は再会を喜んでください。

初めて出会う人は、私と一緒に冒険を楽しんでほしい。
美しくて楽しくて、童心に戻ってわくわくして読み進めました。
続きが気になります。早く読みたくなります。
でも、一言ひとこと、丁寧に読みたくなる美しい物語。
本として手もとにくる日を楽しみにしています。

これはおまけの感想ですが、なんとなく、「ですます」調で感想を紡ぎたくなりました。
#NetGalleyJP さんで読ませていただきました。

2018.06.23

魔導の黎明

佐藤さくら 2018 創元推理文庫

真理の織り手。
このシリーズの名前がようやくわかった。

シリーズ4冊目にして最終巻。1巻と並べて表紙を見比べると、一層、感慨深い。
レオンは40代、ゼクスは30代になった。
相変わらず、仲が良くて。
相変わらず、じっとはしていられない二人だ。

物語はラバルタとエルミーヌの二つの国を行きかう。
ラバルタではますます、悲惨な状況になっている。
魔導士を弾圧するようになった国で、そこで生きるしかない人々が抵抗と反乱の狼煙をあげて10年。
さらなる差別、さらなる暴力が、人を追い詰めていく中で、希望を見出すことはできるのか。

『系譜』『福音』『矜持』の登場人物たちが次々と登場する。
あの人も、この人も。ああ、これはきっとあの人だ。
懐かしく感じる人もいて、物語がここまで進んできたことに感動した。
登場人物たちと作者と共に歩んできた過程に、感慨深かった。

物語ではあるが、この社会の閉塞感は、どこか現実の写し鏡となっている。
差別に対抗するために差別をしようとする人たちがいる。
暴力を振るわれないために、暴力で相手を殲滅させないと気が済まない人たちがいる。
差別や暴力の連鎖は、今、世界の各地で、この身近な場所でも、大なり小なり繰り返されている。
読みながら、そこにガザの人々が思い浮かび、ネット上のレイシズムやヘイトな言説が思い起こされ、時に息苦しくなりながらも、最後まで没入せずにはいられなかった。

もしも、自分の生きる価値がわからないとか、自分はだれにも必要とされていないと悩む人がいたら、このシリーズと出会ってほしい。
この作者の紡ぐ物語と出会ってほしい。
生きていいんだよね、と。
生きていいんだよ、と。

作者の方に心からのお疲れさまと、次作を楽しみにしていることを伝えたい。

2018.02.19

紅霞後宮物語 第七幕

雪村花菜 2018 富士見L文庫

早くも7巻。久しぶりの本編に感じる。
いよいよ皇后として出陣した小玉の戦争が語られる。
戦争だけに、ぽろぽろと人が欠けていく。

物語の流れのなかでは、重要な巻になるのかもしれない。
歴史が動いた……ことになるのかな。

カクヨムに掲載されていた中編を読んでいたせいか、登場人物たちに対する自分の気持ちが変わったような気がする。
たとえば、梅花。たとえば、麵屋のおっちゃん。たとえば、樹華。
どの人たちが背負ってきたものや、かつての日々からの隔たりを思うと、何とも言えない思いがわきあがってきた。

こんな形でしか、夫婦であることを確かめられないとは、不器用な二人だ。
少々変わっているかもしれないが、二人はまぎれもなく夫婦である。
小玉の気持ちは、すでにもう固くなっている。次は、それに文林がどう応えるか。
引き続き、見守りたい。

2017.11.16

魔導の矜持

佐藤さくら 2017 創元推理文庫

敗走戦が一番難しいと聞いたことがある。
逃げることもまた戦いである。

シリーズ3冊目となる今作の主人公を誰か一人と決めることが難しい。
デュナンという少女の逃避行から目を離すことができなくなる物語。
魔導士への弾圧が厳しくなるラバルタで、魔導士の見習いであるが落ちこぼれ。
人とは少し違うことを苦にして、自信を持てずにいる女の子だ。

そのデュナンが、妹弟子・弟弟子らを連れて逃避行をすることになる。
一緒に旅をする仲間に、1作目と2作目の登場人物たちも加わって、いくつもの運命が絡み合いながら、あの戦いの後の世界が紡がれていく。
それぞれの立場、それぞれの悩みや苦しみ、それぞれの戦いを見ていると、どの人物たちも愛しくてたまらなくなった。

これは、ディストピアを救う物語ではないが、ディストピアで生き延びる物語だと思う。
苦しくてしんどくてたまらないときに、思いがけない一言やささやかな出会いが、許しや癒しになることがある。
生き延びることができたとき、世界には悪いことばかりではないと気づく。たとえ、世界はなにも変わっていなかったとしても。
生きのびることだけ頑張れたら、きっと、なにかいいことだってあったりする。
頑張って生きていない人間なんていないのだから、誰にだってそんなことがあるかもしれない。
世界は悲惨がいっぱいのままではあるが、きっと主人公達はこれからも生きていく。

ともに戦う誇らしい仲間を得たような気持ちで読み終えた。
晴れやかなような、爽やかなような、少し胸を張って、前を向いて、姿勢を正したくなるような気分だ。
あなたはあなた。自分は自分。そのままでいいと、登場人物に呼びかけたくなる声は、周り回って読み手に戻ってくる。
落ちこぼれなどない。人はそれぞれ違っていていい。字が読めなかろうと、人と違う力を使えようと、人と感じ方が違っていようと、それはそれでいい。
登場人物たちの成長のきっかけを描く物語であり、そこに触れて帰ってきた読者自身が、隠れ世に行きて戻りし体験をする主人公になるだろう。
私はこのシリーズが絶品のファンタジーであり、王道のファンタジーであると思うのは、この点だ。

『系譜』や『福音』の主人公たちの成長を見守ることができるから、先にそちらを読んでから、この『矜持』を手に取ってもらいたい。

2017.09.21

紅霞後宮物語 第零幕:2、運命の胎動

雪村花菜 2017 富士見L文庫

ようやく文林が登場し、未来の夫婦が出会う巻。

小玉が順調に軍のなかで活躍し、頭角を現しつつある時期の物語である。
なんでこの人、皇后になったんだろう?という戸惑うことになった。
こんなに軍人としての適性を発揮していくのに、なんで後宮にいなければならないのか。
本編の第一巻の主人公の戸惑いを、今になって私が感じた。

と、同時に、文林よ、彼女をくれぐれも大事にするんだよ、と言い聞かせたくなった。
大事にしたくなっているとか、言うている場合じゃない。
大事にするんだ。しなければならない。それぐらいの傑物だぞ、と。
この第零幕を読む限りにおいて、あんなにこじれなくてもよかったのに、と思っちゃう。
相手が小玉ならば、仕方ないのだろうか……。

小玉と明慧が二人並ぶ景色を見られたのはよかった。
楊三郎氏が意外にも出番があったのも嬉しかった。
著者の方が精力的に書いてくださるのも、読者としては嬉しい限り。

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