蟋蟀
玄侑宗久 2011 Story Power(小説新潮10月号別冊)
未曾有の震災を経て、「今こそ物語の力を、物語に力を」と編まれた一冊の中で、もっとも物語の力を感じさせられた短編だ。
物語中、震災の日より半年を経ている設定に愕然とした。
指折り数えるまでもなく、確かに、現実でも、半年が経っている。
もう半年。まだ半年。
その時点から振り返って語られるその日の記憶がすさまじかった。
映像メディアでは扱われない情景。報道されないからないわけではなくて、報道しえないなにものかは、きっと、いっぱいあった。
小説という媒体だからこそ、ようやく膾炙されるのだ。
支援者支援という領域がある。
被災者でありながら支援者にまわった人は、半年を経て、燃え尽きずにいられるのだろうか。
それぞれが、ちゃんと自分の心の痛みをやわらげる機会を持てているのだろうか。
ちゃんと悲しめているのだろうか。
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ストーリーパワー(Story Power) 2011年 10月号 [雑誌] 販売元:新潮社 |
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