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2022.03.12

桜風堂夢ものがたり

村山早紀 2022 PHP研究所

「会いたかったひとに会える奇跡」があるなら、あなたは誰に会いたいですか?

帯を読んだ時に、ふっととあるツイートのことを思い出した。
亡くなった人と話ができるという「風の電話」と呼ばれる電話ボックスがあるという。
このツイートを見たときから、私は誰と話したいだろう?と考え続けている。
もう一度、出会えるなら、私は誰と会いたいだろう。

もう一度、会いたい人をぱっと思い浮かべられないことは、幸いなことなのかもしれない。
私が同居する家族と死別していないからこそ、思い浮かばないのではないかと思うからだ。
確かに、大学や大学院の指導教授に今を伝えたい気持ちもある。この世にはいない親戚たちもいる。すれちがったままになってしまった、かつての友人とか。
でも、それよりも、私は今はまだ共に過ごしている家族やパートナーと別れてからのほうが堪えるだろうし、その時にこういう祈りを必要とするのではないかと思うのだ。

『桜風堂夢ものがたり』は、本屋大賞にノミネートされた『桜風堂ものがたり』の素敵なスピンアウトだ。
桜風堂店主の孫である透の秋の日の冒険を描いた「秋の会談」。ここで透はずっと読みたかった本と出会う。
少年たちのちょっと無謀な冒険はどきどきする。仲良し三人組で冒険するなんて、そういう連作の子ども向けの有名の物語があったことを思い出す。
こういうお互いに特別に思うような仲間を得られることは、それ自体がとても幸せなことのように思う。
誰かが何かを望んだら、仲間は協力し合うものなのだ。だって、仲間なんだもん。
童心にかえる思いで冒険譚を読み、三度ぐらい読み返してから、やっと次の章に進んだ。

「夏の迷子」の主人公は、銀河堂書店の店長の柳田六郎太。私のお気に入りの人物のひとり。
その人が迷子になっている。かなりしっかりと遭難してしまったらしい。
ぱらりと開いて見えてしまった文字に展開が心配で、なかなか読み始めることができなかったのが、この二つ目の物語だ。
村山さんの物語はハッピーなものも多いけれども、人が死ぬときには死んじゃうので、絶対に大丈夫だと安心できない。
もしや、柳田店長が帰らぬ人になるのではないかと思うと心配で、読むのが怖かったのである。
いろんな意味で、ひやひやが止まらず、最後まで読んでも信用できなくて安心できなかった。

そして、安堵したのもつかの間、「子狐の手紙」で追い打ちをかけられた。涙腺が。
この短編の主人公は、三神渚砂だ。有能でかっこいい、若きカリスマ書店員。彼女もとても魅力的で、大好き。きっと、ファンも多いはず。
彼女は家族関係で苦労があったことは、これまでのシリーズの中でも登場しており、別れたままの父親と折り合いがつかないままになっていることが、読み手としても気になっていた。
満を持しての父親との邂逅は、私のほうが号泣しまくるような感動的なものだった。
これはいかんですよ。泣きますよ。普通、泣くって。
ティッシュペーパーじゃなくて、タオル推奨です。
渚砂ちゃん、よかったなぁ…。

そして、『灯台守』。
夢のような美しい物語。
儚い、けれども、信じる者には確かに「在る」ものを思い出させてくれる、美しい物語だった。

春夏秋冬にちなむような短編であるが、季節の順に並んでいないこともよかった。
桜野町の一年間ではなく、おりおりに触れての物語という風に読むことができたらから。
本を開けば、いつでも桜風堂に行くことができる。
今はその奇跡だけで、私には十分である。
三毛猫のアリスがおり、オウムの船長がいる、素敵な素敵な本屋さん。
物語のひとつひとつが、世の光となって灯し続ける、その世界を感じることができるだけで、今は十分である。

人間たちが、不幸な方へ行かないように。孤独な想いを抱かないように。
人間というものは、ほんとうには孤独ではないときも、ひとりぼっちだと思い込んで、うつむいてしまうから。誰かの優しい眼差しで見つめられていても、気づかないから。(pp.243-244)

願わくば、遠くで戦火に追われている人々の心にも、ひと時恐怖を忘れ、希望を思い出し、勇気を奮い立たせる、そんな灯となる物語が傍らにありますように。
優しさと安らぎを思い出す、猫のぬくもりにも似た、そんな灯となる物語が、だれの傍らにもありますように。

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