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2021年1月

2021.01.17

星をつなぐ手:桜風堂ものがたり

村山早紀 2020 PHP文芸文庫

知識の源となり、ひととして生きていくための、すべての素地を作るものである活字。空想の世界に遊び、疲れた時の癒やしとなり、孤独なときは友となってくれる、書物。
それを集め並べ、人々に手渡すための場所――書店。(p,104)

本と本屋さんへの深い愛情を感じる一冊だ。
本屋大賞にノミネートされた『桜風堂ものがたり』の続編だから、前作から続けて読んでほしいとも思うけど、この本だけでも十分に楽しめる。
2018年に発行された単行本は、特に好きな終章ばかりを何度も読んだのだけれども、文庫化されたことをきっかけに改めて最初からじっくりと読み直した。

最寄駅から山道を徒歩30分ぐらいのところにある、かつての観光地。
温泉もある。観光ホテルもある。
昭和の終わりの方の時代に旅館はなくなってしまって、忘れ去られようとしているような小さな田舎町。
そこに昔からある一つの町の本屋さんが舞台だ。
一度は店主の急な体調不良のために、消えてしまいそうになっていた本屋さんの名前を桜風堂という。

その本屋さんが大きな危機を乗り越えるところは、前作に描かれている。
危機を乗り切ることができたのは、とても奇跡的なことだったと思うのだ。
でも、大事なことはめでたしめでたしのその後の毎日を、いかに生き延びるか。
なにしろ、今の日本では、本屋さんを取り巻く状況はとても厳しくて、毎日のように本屋さんが閉店していっているのだから。
その上、今、この2021年の1月は、昨年に続いてCovid-19が流行しており、本屋さんだけではなく、飲食店やホテルや…これまでの馴染みのお店が閉じて行っている。

自分は無力だと思う。大切にしていたものがみんな消えて行き、流れ去ってしまい、それを食い止めようとしても、とどめるだけの力を持たない。(p.234)

こんな無力感に襲われることもしばしばある。
このCovid-19が終息したとき、自分や家族や大切な人たちが誰一人として欠けることなく生きていられるのかも心配になることがあるが、どれだけのお気に入りのお店が生き残っているのだろうと悲しくなったり、切なくなったりする。
それは私だけのことではないだろう。

そういう御時世だからこそ、桜風堂に訪れる幸せな奇跡の物語に心を慰められた。
人の好意や熱意や祈りが、一つ一つはささやかなものであるけれど、重なりあい、組み合わさった時に、大きなうねりとなって流れ出すことがある。
その流れを感じることに、慰められたのだと思う。

「遠いお伽話」が、ほんとに遠い遠い過去のものになりつつあるのを感じる一年だった。
馴染んだものや思い入れのあるが姿を消していくことに、削られるような思いをした人も多かろう。
最前線で病と戦うわけではなくとも、感染症という目に見えない敵に対して不安を抱え続ける戦いを続けるには、心や魂に滋養が必要である。
それがエンターテイメントの効用であるように思う。アートの力であるように思う。

まだ世界は終わっていないのだから。
不安に押しつぶされそうになったり、絶望に飲み込まれそうになったり、知らぬ間に疲労消耗していた時にはファンタジーの魔法を思い出してほしい。
そして、「地球は揺り籠のように、たくさんの命の思い出を抱いて、宇宙を巡ってゆく」(p.322)。
今日も。明日も。

2021.01.14

おうち性教育はじめます:一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方

フクチマミ 村瀬幸浩 2020 KADOKAWA

性に関わることは、口にし慣れている人と、し慣れていない人のギャップがとても大きいように思う。
性についての悩みもおうかがいすることがあったり、若い方に避妊や性暴力について話すことがあるため、私は仕事としては平気であれこれ口にする。
が、プライベートの文脈で、例えば、親と話し合えと言われたら、余計な羞恥心が刺激されることがないわけではない。
だからこそ、子どもにどのように性にまつわるいろんなことを教えるかという場面に立たされた時に戸惑うのも、それが大多数の反応ではないかと思ったりもする。

日本での「性教育」は高校の保健体育にゆだねられている。
しかし、性暴力や性虐待は小学生段階(場合によっては未就学の段階)から起きることを考えると、幼少時から教えてもらえるほうが子どものためだと思う。
その点、本書の3-10歳からの家庭での性教育を、まじめにきちんと取り上げているところが素晴らしい。
更に、性教育と言われると、すぐに避妊と性行為の話に勘違いされやすいのだが、そんな矮小なものではないことを教えてくれる内容になっている。

幼少時から家族が教えることがベスト。
そのためには、まずは親が性教育ってなにか、どういうことを教えていけばよいか、どうやって伝えればよいかを知らなくてはならない。
プライベートパーツの考え方、男性のからだの仕組み、女性のからだの仕組み、そして、性行動と避妊について。
口にするのも恥ずかしいとためらってきたことを、どんな言葉で伝えればよいか、その文例の一つ一つがあたたかくておだやかで素敵なメッセージになっている。

これらの知識は、男性も女性も等しく知っていてほしいこととして語られるところが、とてもいい。
生々しさの希薄なほのぼのとした絵柄のマンガだからこそ、家庭や職場でも堂々開きやすい本になっている。
小学生が読むには難しいところもあるかもしれないが、保護者が勉強した後、中学生ぐらいになった子どもが自分で読んでみるようになってもいいかもしれない。

この本の最後の章では、大人にこそ知っていてほしい性の知識について触れられている。
SOGIといった最近の概念も紹介しつつ、性をどのように考えればよいのか、大人が変わっていくための指針となる情報が詰め込まれている章だ。
その中で、性行為を、①子どもをつくるため、②共に楽しく生きるため、③支配するため、の3つに分類している。
AVなどの大人がフィクションとして楽しむために描かれるのは③が多いことと、従来の性教育が①にばかり注目しがちだったことを考えると、②の部分にあえてしっかりと触れてあるところに、この本の価値があるように思った。

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