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2020年11月

2020.11.21

願いの桜:千蔵呪物目録2

佐藤さくら 2020 創元推理文庫

呪いと祈りは表裏一体。
物に託された気持ちが強すぎる時、周りにも影響を与えるような呪物になる。
その呪物を集めていた家が襲撃され、呪物が散逸してしまった。

前作とは違う町の中学校で、いつもと違う変わったことが起きている。
中学校は、複数の小学校から進学してくることが多く、出身校によって体験や雰囲気が異なることもあって、途端に居心地の悪さを感じる子たちがいる。
生真面目なたちの亜咲美も、中学校の教室に居心地の悪さを感じている1年生だった。
この教室の様子であるとか、なじみ切れない居心地の悪さであるとか、著者がこれぐらいの少年少女たちをよく理解していると感じた。

物語を連れてくるのは亜咲美であるが、一族が管理していた呪物を集め直している朱鷺と冬二との間を繋ぐのは、朱鷺とは昔馴染みの骨董屋である。
さらさらと流れるように読みやすい物語だったのであるが、こうして説明を書いてみようと思うと、登場人物も多く、粗筋も一筋縄ではいかない複雑さに気づく。
最初に出てきた登場人物からまっすぐ物語が進まずに、斜めにスライドしていくようなイメージ。
スライドしていくのが疾走感があり、それが物語に引き込む仕掛けのように作用しているのかもしれない。

気づくと、戦後の荒廃を見失った現代的な景色のなかに立ち尽くす。
人々が精いっぱい、町を守りたいと祈りをこめて、よかれと思ってしたことが、時の流れのなかで失われた後、どうなっていくのだろう。
このシリーズだから紡げる景色が、まだまだあるような気がする。

それにしても、もふもふのでっかい犬にだきつく幼女のイラストは反則だろー。
というか、私もにーさんにやりたいぞー。いいなぁいいなぁ。
にーさんモテモテでよかったなぁ。
ねーさん、ちょっぴり不憫ね。本人は気にしてないだろうけど。

2020.11.20

約束の猫

村山早紀 2020 立東舎

5000年の時をかけて、この膝の上に来たと思えば、どっしりとした丸い温もりがますます愛しくなる。
猫にまつわる美しい物語が四つ。その物語それぞれにあわせたページのデザインが、これまた美しい。
こういうページの上下を縁取るように飾られていると、とても特別な本に触れている気がしてくる。
表情豊かな少女たちのイラストも、愛らしい猫たちも、げみさんならではの豊かな色彩で目を楽しませてくれる。
心の中で、猫の温もりを感じ、毛並みのふわふわを感じ、生まれたての子猫の心もとないような柔らかさを感じながら読みたい。
優しく低い喉音や、すぅすぅという寝息や、時折こぼれるぷしゅぅという溜息が聞こえてくるかもしれない。
とてとてという軽い足音と、なにかの荷物を崩すときの大きな音、びっくりして斜めに飛び上がる姿。
小さな命への愛と、その命が人に注ぐ愛とがみっちりと詰まっている。

七日間のスノウ。
命はもろくてはかない。
それは人も、猫も変わらないのだけれど。
たとえ、短い命であったとしても、その命は大事な命。
病がちの兄弟がいる人なら、より一層、主人公の気持ちに寄り添えるのではないか。

五千年ぶんの夜。
冒頭、一瞬、これはスノウが主人公なのか?と疑うほど、捨てられた孤独感がリンクした。
不安な時、想像力は現実からちょっと離れて暴走する。
子どもならではの自由な想像力は、現実感を伴うから、怖い時は本気で怖い。
まるで世界の終わりを体感しているような孤独感をやわらげて、今ここの現実にひきもどしてくれるのは、温もりだったり手触りだったり、ごろごろと穏やかで低い喉音だったりするわけで。
猫という存在は確かに魔法の塊のようなものかもしれないなぁ。

春の約束。
外で生きる猫たちは、決して楽な生き方をしていない。
庭先や道端に猫のいる景色は好きだけど、今よりもっとのどかな時代に比べると事故だって多いし、猫を嫌う人もいればいじめる人もいる。家のなかでいじめる人もいるけれど。
猫ならば気楽というわけでも幸せというわけでもないし、かといって、人は人でなにかと生きることが難しいことがある。
それでも、猫であれ、人であれ、親は命を生み出すときに、幸せを祈るものだと思いたい。
すべてではないにしても。
それでも、そこに幸せを祈る気持ちがあることを信じる物語。

約束の猫。
何度だって、帰ってきてほしい。
羨ましくなる。
でもほんと、猫って律儀だから、きっと約束は守るんだと思う。
何度だって。

 

2020.11.19

トラネコボンボンのお料理絵本:旅するレストラン

中西なちお 2020年11月27日刊行 白泉社

トラネコボンボン!と見かけてすぐにNetGalleyさんにリクエスト。
以前、「世界一周猫の旅」という本と出合って、すっかりファンになってしまった中西さんの描く世界とボンボンの新しい本だ。
独特の線画と、装飾的なコラージュのような画面。水彩のような色合いの柔らかさ。
絵のことはよくわからないのだけども、この人の描く絵は部屋に飾りたくなる。

この本はトラネコボンボンの色彩豊かでおしゃれで楽しい絵本。
四季を通じて、その季節ごとに、いろんな仲間たちと食事を楽しむ優しい物語だ。
冬の場面は、有名な絵本を思い出して、くすりと笑ってしまった。
ひらがなで書かれていることから、幼い子どもと楽しむこともできると思う。

そこに登場したお料理やお菓子が、巻末にたっぷりとついている。
そのお料理は手が込んでいるものが多く、カラフルできっと写真に撮りたくなる。
こんなアイスクリーム、子どもたちも大人も大騒ぎになりそう。
フランスパン一本のサンドイッチも、きっと盛り上がるに違いない。
絵本を読んだ後に、ほら、このお料理って見せたりしたら、小さい子の歓声が聞こえてきそう。
著者の絵も、文も、お料理も楽しめる贅沢な絵本だ。

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