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香桑の近況

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2020年5月

2020.05.21

少女の鏡:千蔵呪物目録1

佐藤さくら 2020 創元推理文庫

2つの物語が語られる。
1つは現代を舞台にしており、美弥という少女と鏡の物語。
そこに2つめの物語が絡まる。100年前のとある村の物語。少年と大型犬の物語だ。
長くはないページ数のなかで、長い長い物語が紡がれている。

この中には、いくつもの呪いの作法が出てくる。
名づけのまじないであったり、血筋のまじないであったり、まじないであり、のろいであるものが散りばめられたファンタジーだ。
朱鷺という少年の名前が、それがもう、のろいであり、まじないであり、つまりは立派な魔法の呪文になっている。
日本にかつては数多くいたという鳥の名前。それは今も佐渡トキ保護センターで飼育され、野生に帰して定着させるよう、試みられている。
実際には、そのトキたちは、日本で生まれ育ったトキは一旦は絶滅し、中国から譲られたトキの子孫にあたる。遺伝子上にはほとんど個体差レベルの違いがないと言われているが、血脈は途絶えている。
一度は失われたもの、過去に息づいていた存在であり、今は幻となってしまったもの。美しい字面と音に、そういうイメージを背負った名前だと思った。

のろいとまじない は、紙一重だ。
呪うと祝うが、紙一重であるように。
強すぎる気持ちが、よかれあしかれを問わずに、事象をゆがめてしまう。
そういうものを呪いと名付けて、物語は進んでいく。
でも実は、その呪いは、誰もが用いる可能性を持つ。魔法であるが、非現実的でもなんでもない。なるほど、確かにある。
その当たりの作者の洞察が素晴らしい。

報われないために努力するとは、なんともしんどい。
この作者は、自意識が育つ年頃の、周囲と比較しては自分の至らなさに傷つく心情を描かせると抜群である。
その心情は、大人になっても尾をひきずっていることも多い。
いつしか、ああ自分はこの程度のものかとあきらめをつけられることもあるが、その時がいつ来るのかは人それぞれだ。
そういうあきらめることのまだできない、だからこそ終わりのない、自分自身との戦いを描くことが得意だと思う。
思うような自分になれない悲しさであり、自分というものと折り合いをつけることの難しさであり、その自分の苦しみに気づいてもらえぬやるせなさがある。
自己愛とか自尊心とか自己肯定感とかなにそれ美味しいの?とばかりの葛藤や苦悩を描くことができる人だと思う。

そういえば、私の通っていた学校は、百年を超える古い学校だけに、しっかりと七不思議があった。
教師から教えてもらったぐらい、しっかりと語り継がれている七不思議だった。いくつかバージョンがあったようで、寄せ集めると不思議は7つにおさまらないのだけれど。
クリスチャンスクールだったのに、それはそれこれはこれで、人は不思議なものを好む。
子どもの頃は見えないものに憧れるものなのに、見えないものへの憧れをイタいもの、蔑むべきもの、嘲うべきものと感じるようになる境目も、人の成長の中には組み込まれているようだ。
それでも、年齢ばかりは大人にとっても、その憧れが心の奥底には息づいているから、人はファンタジーやホラーを好むのではないか。
見えないものは、いまだに、人を魅了する魔法の力を持ち続けている。

それにしても、思い入れがあるほど、本の感想を書くことは難しい。
かっこつけようとすればするほど、こけてしまうようなもので。
力が入りすぎると碌なことにはならないのに、わかっていても力を入れたくなる。
だって、応援している作者のお一人の新作だから。
だから、祈りであり、願いとして、この呪いが広まればいいと思っている。

ところで、冬二さんをわしゃわしゃとしたいのですが、どこに行けば会えるのでしょう?

少女の鏡:千蔵呪物目録1

佐藤さくら 2020 創元推理文庫

2つの物語が語られる。
1つは現代を舞台にしており、美弥という少女と鏡の物語。
そこに2つめの物語が絡まる。100年前のとある村の物語。少年と大型犬の物語だ。
長くはないページ数のなかで、長い長い物語が紡がれている。

この中には、いくつもの呪いの作法が出てくる。
名づけのまじないであったり、血筋のまじないであったり、まじないであり、のろいであるものが散りばめられたファンタジーだ。
朱鷺という少年の名前が、それがもう、のろいであり、まじないであり、つまりは立派な魔法の呪文になっている。
日本にかつては数多くいたという鳥の名前。それは今も佐渡トキ保護センターで飼育され、野生に帰して定着させるよう、試みられている。
実際には、そのトキたちは、日本で生まれ育ったトキは一旦は絶滅し、中国から譲られたトキの子孫にあたる。遺伝子上にはほとんど個体差レベルの違いがないと言われているが、血脈は途絶えている。
一度は失われたもの、過去に息づいていた存在であり、今は幻となってしまったもの。美しい字面と音に、そういうイメージを背負った名前だと思った。

のろいとまじない は、紙一重だ。
呪うと祝うが、紙一重であるように。
強すぎる気持ちが、よかれあしかれを問わずに、事象をゆがめてしまう。
そういうものを呪いと名付けて、物語は進んでいく。
でも実は、その呪いは、誰もが用いる可能性を持つ。魔法であるが、非現実的でもなんでもない。なるほど、確かにある。
その当たりの作者の洞察が素晴らしい。

報われないために努力するとは、なんともしんどい。
この作者は、自意識が育つ年頃の、周囲と比較しては自分の至らなさに傷つく心情を描かせると抜群である。
その心情は、大人になっても尾をひきずっていることも多い。
いつしか、ああ自分はこの程度のものかとあきらめをつけられることもあるが、その時がいつ来るのかは人それぞれだ。
そういうあきらめることのまだできない、だからこそ終わりのない、自分自身との戦いを描くことが得意だと思う。
思うような自分になれない悲しさであり、自分というものと折り合いをつけることの難しさであり、その自分の苦しみに気づいてもらえぬやるせなさがある。
自己愛とか自尊心とか自己肯定感とかなにそれ美味しいの?とばかりの葛藤や苦悩を描くことができる人だと思う。

そういえば、私の通っていた学校は、百年を超える古い学校だけに、しっかりと七不思議があった。
教師から教えてもらったぐらい、しっかりと語り継がれている七不思議だった。いくつかバージョンがあったようで、寄せ集めると不思議は7つにおさまらないのだけれど。
クリスチャンスクールだったのに、それはそれこれはこれで、人は不思議なものを好む。
子どもの頃は見えないものに憧れるものなのに、見えないものへの憧れをイタいもの、蔑むべきもの、嘲うべきものと感じるようになる境目も、人の成長の中には組み込まれているようだ。
それでも、年齢ばかりは大人にとっても、その憧れが心の奥底には息づいているから、人はファンタジーやホラーを好むのではないか。
見えないものは、いまだに、人を魅了する魔法の力を持ち続けている。

それにしても、思い入れがあるほど、本の感想を書くことは難しい。
かっこつけようとすればするほど、こけてしまうようなもので。
力が入りすぎると碌なことにはならないのに、わかっていても力を入れたくなる。
だって、応援している作者のお一人の新作だから。
だから、祈りであり、願いとして、この呪いが広まればいいと思っている。

ところで、冬二さんをわしゃわしゃとしたいのですが、どこに行けば会えるのでしょう?

2020.05.12

フェオファーン聖譚曲(オラトリオ) op.2 白銀の断罪者

菫乃薗ゑ 2020年7月3日刊行予定 opsol book

あの真っ赤な本が届いてから、まだ日が経っていない気がする。
2冊目は真っ青。そして、今度は百合の花。
この物語は、ここで終わるわけではないが、ネタバレをしたくない。
一気に読ませる力強いファンタジーなのだから、表紙を開き、流れに身を任せてほしい。
今回も一足先に#NetGalleyJP で読ませていただいた。

となると、書けることは限られてしまうのであるが、複雑に入り組んだ勢力図が面白い。
大きく分けて、舞台は二つ。一つは中央。城内での権力争いである。
魔術師の塔は長を失って弱体化していくとして、王位継承者は決まっておらず、貴族の権力闘争もある。
一見強固に見える権力の中で、千々に分断されては対立し、転落していく有様が目まぐるしい。
もう一つは辺境。主人公であるアントーシャはオローネツから反撃の、革命の、狼煙を上げることになる。
フェオファーンと名乗る1つの集まりとして、彼らはますます強く結びついていく。
この対称。

登場人物は非常に多いのであるが、彼らがop.1とは違う顔を少しずつ見せることで、ぐっと深みが増した気がした。
優しい人物の厳しい表情や、あどけない人物の貪欲さや冷淡さ、無表情で無感動な人物の情の部分といった具合に。
それぞれが一面的ではない、人らしい人としての厚みを見せることで印象が少しずつ変わり、読み手も思い入れの持ちようが変わる。
個人的には、お気に入りはコルニー伯爵である。彼らの旅の無事を祈るとともに、ぜひともフェオファーンに合流してほしい。
あと、オスサナにはぜひとも感じのいい女性のままでいてほしい。
オローネツの男たちは、目いっぱい暑苦しいままでいてほしい。これは望むまでもなく叶いそうだけど。

もう一点、この物語の魅力に感じたのは、色合いの美しさである。
建物の色合いにも、出てくる石や金属の色合いにも、意味が与えられている世界である。
人々の衣装の描写も美しく、襲の式目を想起した。そういう描写の細やかさがあるので、人々のいる景色も想像しやすい。

弾圧し、迫害し、略奪してきた者たちに対して、人々の怒りが燃え上がる高揚感がたまらない。
この熱が冷める前に、続きを読みたい。

ファンタジーはいい。
現実に疲れた時には特に。

2020.05.11

きょうりゅうのずかん

五十嵐美和子・富田京一(監修) 2020年6月25日刊行予定 白泉社

きょうりゅう。

この言葉には、大人になってずいぶん経った今でも胸が躍ります。
漢字で恐竜と書けるようになる前から、好きなもののひとつでした。
#NetGalleyJP さんで読ませていただきました。

この絵本、ページ数に比して情報量が多いことと言ったら!
ちゃんと種類ごとに紹介されている恐竜たちは、私が小さい時に見たものと少し違った姿です。
ティラノサウルスはゴジラ立ちからニワトリ立ちに変化しました(立ち方の呼び方は、私が勝手に名付けたもの)。
ブラキオサウルスより大きな恐竜も増えました。
羽毛がふさふさしているなんて、昔は想像がつかなかったものです。
トリケラトプスやステゴサウルスは健在です。

みんな、とっくに化石になっているので、健在というのも変だけど、こうして今も彼らが愛されていることが嬉しい。
小さな恐竜好きさんたちが目をキラキラさせているところが想像できて、にこにこしながらページを繰りました。
化石のでき方や彼らが滅びた理由、現在も見られる恐竜や恐竜に関わるお仕事についても触れらています。
大人もこどもも目をキラキラさせる絵本です。きっと。

Photo_20200511231801  

のら猫のかみさま

くすのきしげのり(作)・狩野富貴子(絵) 2019 星の環会

猫だから。
ただそれだけで選んだ絵本です。
#NetGalleyJP さんで読ませていただきました。表紙の画像も、そちらからお借りしました。

この絵本を読めるようになるのは、小学校にあがったぐらいでしょうか。
漢字にはていねいにルビがふってあります。
犬や猫の毛並みの柔らかさを感じる絵は、少し大人びた穏やかな色合い。
動物たちの表情は優しくて、文も絵も、心根の美しい絵本です。
もしかしたら、この意味は大人になってから徐々にわかるものかもしれません。
幼い心に、なにかよきものの種をまく、そんな一冊だと思いました。

もう何年も前の冬。我が家に野良猫の親子が来ていました。
お腹をすかせていて、うちにいた猫の残したものをあげるようになりました。
先代猫が風になると同時に、その親子の子どもたちが我が家の猫になりましたが、母親猫はどこに行ってしまったのか。
絵本の主人公とその母親猫が重なり、彼女を思い出してとても切なくなりました。

教えてくれることはひとつではありません。
彼らは一生懸命に生きているのだということ。
ひもじいなかで必死にで生きている命があるということ。
優しさや幸せはさりげなく、気づいたらあるかもしれないこと。
ありがとうは魔法の言葉であること。。。

絵本は子どものものという思いがあるので、自然に丁寧な言葉で感想を綴りたくなりました。
ですますの言葉遣いが似あう、上品な絵本です。
きっと、読んだあなたものら猫のかみさまになれるのです。

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