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2020年4月

2020.04.28

オルセー美術館で探せ!


ニコラス・ピロー/作 木村泰司/日本語版監修
2020/06/26発刊予定 フレーベル館

こういう絵本、大好きだ。
オルセー美術館には行ったことがなくても、ここに出てくる絵は、どれもこれもがビッグネームの作品ばかり。
ゴーギャンに、ミレーに、ゴッホに、ルノワールに、マネにモネに、ドガにクリムト…、
作品自体がよく知られている絵も多くて、オルセー美術館に行くならこれを見なくちゃと言われていそうなものばかり。
絵ばかりではなく、ロダンの「地獄の門」のような彫刻作品も出てくる。

オルセー美術館のマスコット的な作品であるシロクマの彫刻が、それらの作品の中に隠れている。
そのシロクマ君を探そうという絵本なのだ。

とても楽しい。時々、難しい。
シロクマ君がとても可愛らしいうえに、「そこかい!」「それかーっ」と思わず笑いたくなるような隠れ方をしているのだもの。
子どもと一緒に楽しむこともできれば、大人がくすくすと楽しむことだってできるだろう。
絵がとても鮮明に美しく印刷された本になりそうで、画集としても楽しめそうである。シロクマ君アレンジだけど。
巻末にはしっかりとした解説もあるので、おうちぐらしの友として、美術の勉強をしてみるのもいいと思った。

#オルセー美術館でさがせ #NetGalleyJP

2020.04.26

極彩色の食卓2:カルテットキッチン

みお 2020年5月20日発売予定 マイクロマガジン社

前作と同じように、とても色彩豊かな小説だ。
前作は前作で完成されていたけれども、とても気に入った小説だったので、こうして、登場人物たちに再び出会えて嬉しい。

主人公の燕は、今も律子さんの家に住み、料理の腕を振るっている。
画家である律子さんと、絵について学んでいる最中の燕は、色彩を大事にする人たちだ。
彼らのなかでは、景色や音や雰囲気が、色彩に変換されて認識されているようなところがある。
料理だって色彩が大事で、その日の気分や気温や天気や時間を表すような色彩の料理の次々が美味しそうなところが魅力の小説だ。

今回の作品では、燕は新しい登場人物たちと出会う。
彼らは、「色」ではなく「音」に関わる人々。だから、カルテット。
色と音と味。五感を刺激する要素が以前よりも幅広くなって、読み手に訴えかけてくる。
Stay homeのこの期間、家の中で閉じこもりがちになっていると忘れそうになるのが、こういう五感に訴えかけてくる世界の豊かさではなかろうか。
そういう意味で、一足先に読ませていただき、心をリフレッシュさせてもらったような気がした。

それにしても。
前作からいけ好かないけれども気になる不思議な人物、柏木さんのフルネームが出てきたのであるが、そこでそうきたか!と思わず拍手をしてしまった。
作者の方は憶えていらっしゃるかわからないが、Twitterでのささやかな会話を私はよく憶えている。
これは、もっと続きが読みたくなった。

2020.04.24

心にいつも猫をかかえて

村山早紀 2020 エクスナレッジ

エッセイと小説と写真、3度美味しい贅沢な本。
著者初のエッセイは、見送った猫、すれ違った猫の数だけ、思い出が切ない。
猫に限らず、小さないきものと一緒に生活したことがある人は、その命を見送った経験もあるかと思う。
小さないきものと一緒に生活したことがなくとも、知っている人や知らない人の死に触れることはあるだろう。
そういう過ぎ行く命への深い愛情と、見送ったからこその後悔が語られる。

そういう猫たちと暮らしてきた日々の思い出とともに、子どもの頃の思い出や、作家としての経験、未来へと思い描くことなどが語られる。
どんな人があんなに心揺さぶられる物語を紡いでいるのか。
どれだけ、本と本屋さんという文化を大事に思っているか。
どれほど、「ふかふかの毛並みの、翼や鱗を持つ命たちの、その魂」(p.25)を愛しているか。
このエッセイと、この期間に書かれた小説は、愛して愛してやまなかった命を見送った後の喪失と鎮魂の過程であるようにも感じた。
自分自身にも、愛する命にも、命には限りがあることを見据えているから、ぶれずに優しく、謙虚で、凛として強いのだと思う。

長崎を舞台にした春夏秋冬の4つの物語。
ところどころ、長崎の言葉に訳された台詞が出てくる。九州に縁が薄い人には聞きなれない言葉遣いであるかもしれないが、私にはなじみのある言語。
方言には独特のイントネーションやリズムがある。音色がある。
その長崎弁が最大限に効果を発揮していると感じたのが、夏の物語、「八月の黒い子猫」だ。
前もってnoteで公開されたときには、全編が標準語で書かれたものと、一部が長崎弁で書かれたものの2パターンがあった。
その時も、これは長崎弁のほうがいいと強く感じたのを憶えている。
断然、こっちがいい。
私には秋の物語もほんのりと切ないし、冬の物語も胸が痛いものがあるが、春の物語は号泣ものだった。
どの猫の物語も、猫って人間を愛してるくれるんだと教えてくれる。
村山さんと猫。この組み合わせは、絶対、泣く。そういうものなのだから、箱ティッシュやタオルは用意してから読むのがよいと思う。

エッセイと小説の両方が楽しめるだけでも贅沢だが、この本にはたくさんの猫たちの写真がちりばめられている。
村山さんの家族である歴代の猫さんたちも、町の景色のなかの猫さんたちも、どちらも表情豊かだ。
Twitterで見たことのある写真があると、思わず頬がゆるんだ。
しかも、街猫さんたちの撮影をしたマルモトイヅミさんが描いた、イラストの猫さんたちもとても可愛い。
奥付の猫さんは何度も何度も見ては、にっこりとしたくなる。イラストも入れて、この本は4度美味しい。
表紙や帯の手触りもよく、細かなところまで気配りされた、丁寧に作られている本だ。
手触りも入れたら5度も美味しい。

著者とはTwitterでお話しすることがあり、実際にお会いしたことがある。
エッセイを読んでいると、村山さんにお会いしてお話ししている気持ちになった。
私の頭のなかでは、読んでいる文字が村山さんの声や話し方で再生されるのだ。
これは、小説を読んでいるときにはおきないことで、エッセイだからこそ、御本人とお話ししているような体験になるのだと思う。
地方のなまりのない、鈴を転がすような澄んだ声と柔らかな声音で、表情豊かに話される御様子まで、目に浮かぶようだった。
世界が平穏を取り戻したら、再びお会いしにうかがいたいなぁ。
そして、記憶のなかの長崎の景色をアップデートするのだ。

この本、読んでいて面白かったのは内容だけではなく、エッセイと小説の両方があるという読み心地の部分もだ。
私の感覚だが、エッセイを読む速度と物語を読む速度、違うことを感じた。
物語はすっと没入する感じ、エッセイはゆったりと語り合う感じがする。
前者は映画館で見る映画のようなものだし、後者は面と向かったの対話やラジオを聞くのにも似ている。
似ているようで、まったく違う「読書」なのだ。それが交互にくるので、読んでいる自分のペースに変化が生じ、一冊を読むなかでの起伏となるのが興味深い体験だった。

今、我が家にいる猫たちの中でも、ひたむきに信頼と愛情をささげてくれる猫がいる。
彼らの信頼を裏切らず、彼らを最期まで見届けたい。
せっかく我が家を選んで、来てくれた猫たちなのだから

2020.04.22

ひみつのポムポムちゃん とつぜんのシンデレラ

ハタノ ヒヨコ (イラスト,原案)/村山 早紀 (著) 2020 講談社

なんて、かわいい。
子ども向けの本を手に取ることなんて、久しくないことなので、新鮮な気持ちで読ませていただいた。
今どきの小学生の女の子も、こんな魔法を好きになってほしいなぁ。

主人公のりんごちゃんは、かわいらしい女の子だ。
自分のすてきなところに気づいていない、自信があまりない女の子。
けれども、心が優しくて、友達のためにがんばろうとする、すてきな女の子なのだ。
彼女の相棒は、うさぎのシュシュ。
りんごちゃんがポムポムちゃんにどうやって変身するか、物語のお楽しみだ。
いつだって、魔法はすてきな女の子の味方なのだ。

この本、コラムがあったり、迷路があったり、小さなお楽しみがいっぱいにちりばめられているのだ。
読むことに没頭することに慣れていない子どもでも飽きずに楽しめるようにしてある工夫だと思う。
最初は大人と一緒に読む子もいるかもしれないし、そうしたら、大人は子どもにどう声かけするのかも聞こえてくるような気がした。
読書を好きになるようにこめられた魔法に、かかってほしい。

刊行予定 2020年5月19日
#NetGalleyJP  #ひみつのポムポムちゃん

2020.04.17

魔女たちは眠りを守る

村山早紀 2020 KADOKAWA

いてもいなくて、おんなじ。そんな気持ちに駆られることがある。
人の子は、寂しいときに、そんな気持ちに襲われる。
よくないものがいたずらするような暗がりは、そんな寂しさにつけこむことがあるから要注意だったりする。

いるのに、いないふりをする。いないと思われている。
人の子たちとは逆の、それが魔女たちだ。
目立たないように、魔女たちは町から町へと移り住みながら、人に紛れて長い命を生きる。
人より長いいのちから人の子を見守る、というところが、ちょっと不思議な感覚をもたらしてくれる。

おそらくは、ひとの子が蝉の一生を見てその短さを嘆くように、魔女たちはひとの命の短さを惜しむ。(p.258)

考えてみれば、人のほうが、自分よりも短い命を見守りながら暮らしていることが多い。
人より長いと言われる命はなかなか少なく、日常的に一緒に暮らす可能性の高い長命のいきものというと、大型インコぐらいしか思いつかない。
犬や猫でも兎でも、飼っていたことがあれば、その駆け足のいのちを見守り、見送る切なさは想像がつく。
もっとも、人よりはるかに短い命の猫たちは、その晩年になるとどうやら人を見守っているような境地に至る気がするのだけど。

魔女たちは魔法を使うけれど、攻撃的なものではないし、万能でもない。
力を使いすぎれば、魔女たちはきらめく光だけを残して消えてしまうこともある。
数少なくなった同胞たちのなかで、七瀬は、それでもおそらくは年若いほうの魔女で。
舞台となる町を見守るニコラは、ずっとずっと長い時間を過ごしてきた魔女で。
彼女たちは、出会った人々を忘れることなく、守り続けている。

ひとは自分だけのためには強くなれないんだ。(p.116)

弱いのに、不思議な力もないのに、一生懸命に強くなろうとする。
その人の子のさがを、魔女たちはたぶん無視できない。
魔女たちは、とてもとても長い時間をかけて生きており、たくさんの命を見送ってきた不在を抱えて生きている存在である。
そこに著者の愛を感じる。世界を愛しており、ひとの子を愛している。過ぎ去り、うつろう世界を惜しみながら。
深い、深い愛情が、すべての眠りを優しく守ろうと、手を差しのべているのを感じた。

夢のある眠りも。
夢のない眠りも。

キノノキの連載時から読んでいるが、こうして1つの物語として本に納められると、記憶していたよりも長くて大きな物語だった。
表紙も美しくて、実物を手にするのが楽しみ。
この記事の表紙は、でも、長崎の夜景を。

今回も、#NetGalleyJP さんで読ませていただきました。

2020.04.14

異世界居酒屋「のぶ」6杯目

蝉川夏哉 2020 宝島社文庫

気づいたら、もう6冊目。
毎回、楽しみにしているシリーズだ。出たらすぐに買い、すぐに読み、何度も読み返す。
から揚げが出てきてはから揚げが食べたくなり、串カツが出てきては串カツが食べたくなり、こんな居酒屋が歩いて行ける距離のところにあればいいのに、と何度願ったことだろう。

今回は、ガレットがたまらなく食べたくなった。
完璧と名付けられたガレットを、香り高いシードルと共に。
そうできたら、どんなに素晴らしいことだろう。
調べてみたら、Covid-19の世界的な流行に伴い、外出自粛要請や緊急事態宣言が出ているなか、ガレットを食べに行っていたお店も休業している。
自分で焼けばいいのだろうけれども、お店の雰囲気やバターの香りを思い出して、せつない気持ちになった。

物語の中で、人々は毎日の生活を謳歌している。
顔馴染みの人々との会話、家族との再会や交流、恋愛や結婚、職業人としての成長。
その毎日に、美味しい酒があり、美味しい食事がある。
そういう極めて「人間らしい」営みが、今、現実では感染症の流行によって阻害されていることを強く感じた。
心配事がゼロではないけれど、当たり前に出かけ、当たり前に働き、当たり前に笑い、当たり前に語らう。
つい最近まで当たり前だった日々がここにある。

世の中が落ち着いたら、トリアエズナマで祝おうか。
それとも、しみじみとレーシュを味わいながら、あんかけ湯豆腐やだし巻き卵をゆっくりと噛みしめるのもいい。

美味い料理を、自分の好きな場所で、自分の好きな人と食べる。(p.50)

そんな日常が早く戻ってきてほしいと思った。

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