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2020.01.24

かなりや荘浪漫2 星めざす翼

村山早紀 2020 PHP文芸文庫

今年になって、初めて出勤した日。
がんの再々発がわかってから仕事を休んできたが、抗がん剤治療にも慣れてきて、職場復帰したいことを話し合い、短時間だけであるが久しぶりに出勤した日。
その日の帰り道、職場近くの行きつけの本屋さんに行った。
ちょうど、この本が手に入った。私の再出発の記念品であり、自分への御褒美として、手に入れることができた。

表紙を開いたところで、本のカバーのそでの部分に引用された文章に目を留め、それだけで胸がいっぱいになった。

自分の好きな作品を買い求め、支持していくことで、作品を応援することができる。
これは「魔法」なのかも知れない。
ささやかで、でもたしかに、自分の望む、良い方向へと世界を変えてゆく魔法。ひとつひとつは小さな応援の声、励ましの言葉が、インターネットの力を借りて、世界に響くとき、集まって、大きな力を持つ、魔法になる。……世界には魔法使いが満ちているのだ。

作者はこの世界に魔法と魔法使いを見出している。
だから、この本は、読み手を魔法使いにしてくれる本だ。
一番の魔法使いは、そんな魔法を使う村山さんだと思うのだけど。

『かなりや荘浪漫 廃園の鳥たち』の続きになる。
前作は入院中に読んだ。レビューというよりも、入院生活の記録のような記事を書いている。

前作でかなりや荘という舞台にたどりついた茜音ちゃんだったが、今作ではいよいよ重要な人物たちが舞台にあがってくるという趣だ。
茜音ちゃんはどちらかというと平和で穏やかな少女なのだけども、彼女の才能を周りが放っておかない。
本人が想像もつかないような戦場へと送られようとしているんじゃないかと心配になっちゃう。

しかも、茜音ちゃんを育てようとしている編集者の美月さんにも、ライバルがいるわけで。そのライバルのほうが、茜音ちゃんのライバルになるであろう少女よりも、よっぽど命がけの雰囲気で。
帯にある「命がけで戦うライバル」は、むしろ、大人たちのほうではないかと…。
大人だからこそ、本気の戦いになる。大人げなく、本気の戦いをしてほしい。
かなり、胸の熱い展開である。

戦いそのものは次の巻を待たないといけないが、2つの番外編がそれぞれ素晴らしかった。
この本のための書きおろしである「冬の魔法」も優しくて素敵な物語であるが、個人的には「空から降る言葉」に号泣せずにはいられなかった。
村山早紀さんの物語では、私は繰り返し、泣く、泣くと書いているけれども、本編では油断していたのだ。物語が大きく動くのはこれからで、読むほうも余裕があった。次はなにが起きるか楽しみになるほうが勝っているぐらいだった。
その油断したところに、がつんときた。

これ、なのだ。こういうことなのだ。こういう避難場所が、人を救ってくれる。
私はとてもよく知っている。こんな場所を私も持っている。そんな体験がいくつも私を支えてきてくれた。どんなにぼろぼろに打ちひしがれていたとしても、生き返らせてもらってきた。
そのことを自分なりに書いた「セラピストたち」という記事は、noteで書いたもののなかで一番評判がよかったが、私が書きたかった自分の体験が、そのまま物語となって紡がれているような、不思議な感動だった。
本編も番外編も、命を削るような思いで仕事をしたことがある人の心に、きっと響くと思う。

私がそこで泣くだろうってことは、お見通しだったようなんですけどね。
やっぱり、村山さんは魔法使いだと思うのだ。

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