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2019年5月

2019.05.30

亥子ころころ

西條奈加 2019年6月24日刊行 講談社

久しぶりの西條奈加さんの小説だ。
#NetGalleyJP さんで見つけて、ほくほくして申し込んだ。
こちらは『まるまるの毬』という前作があるそうだが、前作のエピソードは程よく紹介されているので、この本から読んでも十分に楽しめる。
江戸を背景に、美味しい和菓子と職人の矜持、親子の機微がよりあわさって、味わい深い。

西條さんの物語には、巨悪のようなものは出てこない。
少しずつすれ違ったり掛け違ったりしたものが、平凡なはずの毎日の中で思いがけない悲劇を生むことはある。
それぞれの人生の大事件を、心を込めて、頭を使って、丁寧に取り組むことで、もつれた糸をほどいていくのだ。
だからこそ、読み終えた時に気持ち良い感じが残る。

それにしても、旅行なり、出張なりで、それなりに出歩くのが好きであるが、お土産ものとして伝統的な地の和菓子に注目するのっていいなぁと思った。
特に、茶道が盛んだった土地では、今に伝わる銘菓も多いし、和菓子屋さん自体も多い。
今までも好きであれこれと食べてみたつもりではいるが、この物語の中には知らないものばかり出て来て、それを想像したり、調べたりすることもとても楽しかった。
こんな御菓子屋さんが地元にあったらいいのに。きっと常連になっちゃう。

自分自身が専門職としても一か所で働き続けていると、新しい技法や知識にうとくなっていることに気づき、愕然とすることがある。
自分よりもはるかに若い人が第一人者として華々しく活躍しているのを見ると、焦燥と渇望がないまぜになって湧き上がってくるのだ。
そんなことを感じたばかりだったので、主人公の治兵衛が雲平に対して抱く思いが、わがことのように感じた。
話し合いながら何かを作り上げていく喜び、面白み、楽しみが、今は得られていることが、改めて貴いと思った。
今、一緒に働いてくれている人たち、学び合う仲間たちを大事にしていきたい。

#亥子ころころ #NetGalleyJP

2019.05.27

極彩色の食卓

みお 2019年6月22日発売 マイクロマガジン社

口に入れるもの、目にうつるもの、耳に聞こえるもの、鼻をくすぐるものが、すべて心の滋養となって、2人の画家が再生していく。
食卓に並べられる料理の色彩の美しさ、四季を彩る部屋の美しさなど、挿絵はないのに目に浮かぶような、視覚の想像が存分に刺激される物語だ。
一年の時間が物語のなかで流れ、人々が変化していく。その物語そのものも、とても素敵なものとなっている。

絵に挫折した美大生の燕と、天才的な画家でありながら作品を発表しなくなった律子という年配の女性。
二人の関係は、性愛や恋愛ではなく、母子のようでいて姉弟のようでいて、絶妙の距離感を持って描き出さるところがいい。

何かを描きたしながら、人生は深まっていく。
一度ついてしまったものは、消したくても消すことはできない。
痕跡をいかしながら、より美しく色を重ね、絵を複雑にしていくことなら、できるかもしれない。
そんな希望に、心がとても満たされた。

主人公の燕の巣は、木にかけられるものではないけれど、そんな野暮は言ってはいけない気はする。
柏木というと、思い出すのは源氏物語だ。ここからは少し、ネタバレになるかもしれないが、連想をつらつらと書いていきたい。
柏木親子と律子は血縁関係にない。律子の本当の弟子となっていくのは燕だ。燕は柏木の陰に守られて育つ。
律子はその柏木に師事し、その情熱と技術は燕に与えられていくのだとするなら、夫は源氏。柏木は柏木。燕は薫だ。
律子が女三宮と重なって仕方なかった。老いの予感に頑迷になる源氏に若さと美しさで追い打ちをかけた女三宮。
柏木を拒み通すことができた女三宮が、祈りのうちに過ごし続け、老いていったとしたら、律子ではないか。
源氏物語は、香りと弦楽を伴う物語であるが、この『極彩色の食卓』は色があり、味がある。
美しくて美味しい、魅力的な物語だった。

#NetGalleyJP
#極彩色の食卓

2019.05.17

大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A

石田 眞・浅倉むつ子・上西充子 2017 旬報社

この本を必要とするのは、大学生だけではない。
すべて働く人が知っておいて損がないことが、どこかしらにあると思う。
労働契約や罰金、有給休暇やハラスメント、裁量労働制ってなに?ということなど。
就職前の活動から、退職に至るまでのあれやこれやは、働いていると無関係ではいられないことが書いてある。

労働法や労働問題を専門とする先生たちによるまっとうなアドバイスだから、身近な大人よりも信頼してよいと思う。
決して分厚い本ではないし、Q&A方式で具体的なトラブルを挙げて説明してある点でも、参照しやすい。
普段から読み込むまではしなくても、身近にあるとよい本。

アスピーガールの心と体を守る性のルール

デビ・ブラウン 2017 東洋館出版社

対人関係に苦慮しやすい発達障害傾向のある少女たちのために書かれた本だ。
アスペルガーの少女という意味の、アスピーガールという可愛らしい呼び方にこだわらず、お付き合いがうまくいかない、お付き合いというものがまだよくわからない、という人たちに読んでもらいたい。
これは性のハウツー本ではなく、人付き合いのためのハウツー本だから。
きっと、必要としている人は多いと思う。

文字を読むと疲れてくるという人なら、目次を見て、気になったところだけでも読んでほしい。
できれば、男の子たちにも知っていてもらいたい。
大人の人たちも、彼らがどんなことで困りやすいか、どんなアドバイスが役立つのか、知ってもらいたい。
望まないセックスから身を守る。当たり前のことをわかりやすく、優しくて気さくな言葉で書いた、とっても素敵で、素晴らしい本だ。

表紙も可愛らしくていいなぁ、と思った。
性という一文字に過剰に反応してしまう人もいるとは思うけれども、もし見かけたら、恥ずかしがらずに手に取ってもらいたい。
ちっとも、恥ずかしいものじゃないのだから。
あったかくてまっすぐな、応援の言葉に触れてほしいなぁ。

2019.05.13

滔々と紅

志坂 圭 2017 ディスカヴァー・トゥエンティワン

旅先で大きな書店に立ち寄った時、さわや書店の方の誉め言葉が帯になっており、興味を持った。
その時は帰宅してから最寄りの本屋さんに取り寄せをお願いしたが、残念ながら取り寄せが難しくて手に入れられなかった。
それから2年。
幸いにも、#NetGalleyJP さんで読む機会を得た。

忘れたことはない。
冒頭のインパクトは、それぐらい大きなものだった。
目の前に浮かぶほど、ありありと描き出された干ばつに襲われ、極度の飢餓にさらされた農村。
見えるようであるが、けして映像化は許されないであろう、凄惨な場面から物語は始まる。
駒乃という少女の物語だ。

駒乃は江戸吉原の大見世である扇屋へと口入される。
禿「しのほ」となり、新造「明春」となり、やがて、「艶粧」花魁となる。
同じ人間であるはずなのに、役職が変われば、呼び名も変わっていくのだ。
江戸時代も終わりがけの天保年間の吉原を再現していくような詳細な書きっぷりは、読み手を物語に引っ張り込む力がある。

もしかしたら、もっと暴力的で容赦のない描写も書ける作者なのかもしれない。
そこを、主人公に駒乃を据えることで、死や暴力にさらされ流されながらも途絶えることのない、生が際立ったのではないか。
駒乃の人生は、今時の感性からすれば苦労の連続だったとしても、翡翠花魁やなつめなど、あたたかでやわらかでうつくしいものがなかったわけではなかった。
キラリと輝くうつくしいものが、彼女の未来を照らしていた。

私が主人公に共感して、一体化するように読んだかというと、そうではない。
駒乃はじゃじゃ馬で、一本気で負けず嫌いで、だからこそ生き抜いたというふさわしい力強さが魅力があるのだけれど、当時と現在では死生観や価値観がおそらく違う。
常識や感覚が違う。
その違う感じを忘れさせない緊張感が、最初から最後までぴんと一本、通っているのだ。
その一本線に、思いがけない伏線が仕掛けられており、読後には爽快感が残る。

江戸ものというと、吉原ものが多いのはなぜだろうか。
そこに資料が多く残っているせいなのか。平和で過酷な農村では物語になりづらいのか。
色街がけして物珍しいわけではない。今も、結局は、自分の身体を使うしか、糊口をしのぐ手段を持たない人たちは尽きないのであるから。
尽きないからこそ、現在と重ね合わせて、もしかしたら、主人公と一体化して読む人たちもいるのかもしれない。
そんなことも考えさせられた。

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