2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

著者名索引

香桑の近況

  • 2019.1.25
    2018年 合計33冊
    2017年 合計55冊
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計475冊
無料ブログはココログ

« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »

2019年2月

2019.02.20

黒猫の夜におやすみ:神戸元町レンタルキャット事件帖

三國青葉 2019 双葉文庫

神戸元町でレンタルキャット屋を営む主人公が拾った黒猫は、ちょっと普通じゃない猫だった。
ベーカリーや焼き菓子の名店が多い神戸を舞台にしているだけにあり、美味しいものがあれこれ出てくるところが、目の毒だったりする。
つい、あれも食べたい、これも食べてみたいと思ってしまうのは人情だ。

外からお迎えした猫が、こんな秘密を抱えていたら。
猫好きの女性にとって、こんな猫なら大歓迎だろう。
そういうロマンがたっぷりの小説だ。

猫と長く生活していると、彼らは人間の言葉がわかっているに違いないと思うことがある。
飼い主が落ち込んだり、傷ついている時に、彼らは見守るように寄り添い、傍らを温めることで慰めをくれる。
逆に、私が怒り猛っていた時には、走って逃げて近寄らなかったこともあったけど。
それが10歳を越え、20歳を越えると、いつの間にか飼い主よりもはるかに年上で、むしろ保護者のように、見守ってくれるようになっていた。
特別な猫だった。

20日間ほど、行方不明になって、痩せ細って帰ってきたことがあったけど、その時に初めて気づいた。
無事は嬉しいが、無事だからと言って、何があり、どこにいたかは、知ることができない。
なぜなら、私が彼らの言葉を理解できないからだ。
猫とおしゃべりできたら、どれだけにぎやかで、楽しいだろう。
彼らの気持ちももっとわかってあげられるかもしれないのに。

そんなことを、猫と生活してきた人なら考えてもおかしくないと思うし、そういう夢をある意味でかなえてくれる物語だ。
私の大事な特別な猫も、あの時、人助けの冒険をしていたのかもしれないなぁ。

保護猫活動をしている人のTwitterなどを思い出して、特にクレオの話に心が動かされた。
優しくて細やかでひたむきに人を愛してくれる存在なのだ。
どうか、彼らに選ばれた人もまた、精一杯、最後まで、彼らを慈しみ育てることができますように。

2019.02.13

コンビニたそがれ堂:猫たちの星座

村山早紀 2019 ポプラ文庫ピュアフル

これは自分の物語。

特別な一冊が、また増えた。

この世で売っているすべてものが並んでいて
大事な探しものがある人は 必ず ここで見つけられる

風早町を守る狐の神様が趣味でしているコンビニたそがれ堂。
そのシリーズも8冊目となった。今回は「一冊丸ごと猫特集」である。
今日のたそがれ堂のお客さんになるのは、しっぽの短い麦わら色の子猫。

子猫がとぼとぼとてとて、冬の寒い町を一人で歩いているところを想像してほしい。
温かい安心できる家から離れて、足の裏を汚したり、怪我したりしながら、お腹をすかせて歩いている。
それだけでもう、私は泣かないように唇をぎゅっとかみしめたくなる。

その子猫の願いを聞いた押しかけ店番のねここは、二つの物語を聞かせてあげるのだ。
人と猫の、優しい優しい物語を。

生きていく末に、人は必ず老いる。病を得ることもある。
そして、必ず死ぬ。
死は悲しみや寂しさをもたらすものであるが、死なない人はいない。
この数年の著者は、いつか気持ちよく旅立つような、そんな死もあるだろうと、教えてくれるようになった。
死を嘆くばかりでもなく、恐れるばかりでもなく、満足した心持で、いつか来る日を迎えることができるかもしれない。
それは、人生の折り返し地点を過ぎた私にとっては、この上ない希望であり、福音だったりする。

ここからは、多少のネタバレも含む。

小説家は魔法使いのようだと思った。
冒頭の子猫が歩いているシーンから涙ぐんでいた私だったが、『サンタクロースの昇天』の後半は、涙が流れて止まらなくなった。

だが、本番は『勇者のメロディ』のほうだった。
村山さんが、私をして特に泣いちゃうかもねと予告してくださっていた意味がよくわかった。
これは泣く。絶対に泣く。今、読み返していても泣く。
私にとっての勇者のメロディであるDQ2の「果てしない世界」を耳に蘇らせながら読み進めた。

そう。そうなんだよ。
このシリーズを読んだ人なら、自分がたそがれ堂に行ったらなにがほしいか、きっと考えたことがあるだろう。
私は行ってみたいなと思っても、ほしいものが思い浮かばないのだ。
しいて言えば、美味しいと噂のおでんとおいなりさん、そして、コーヒーをいただきたい。
それだけで、もう十分、私は自分の人生を満たされてきた。あきらめてきたものもいっぱいあるけれど、それは今ほしいものではない。
私よりも誰かもっと必要な人に、奇跡は譲ってほしいとさえ思っている。

そんな心を、どうやって見抜かれてしまったのだろう。
自分が暴かれるようで恥ずかしいけど、自分をわかってもらえたという体験が襲ってきた。
しゃくりあげるように泣いてしまったとしても、仕方なかったのだと思いたい。図々しいとは思うけれど、これは自分の物語だと思うことにする。
実際に占い師のような仕事をしているわけだし。
いつか、見送ってきた猫たちと会える日を夢見ておきたい。

そして、麦わら色の子猫にはとっておきの魔法が与えられる。
素晴らしい未来。これ以上の魔法はない。

2019.02.04

シェーラ姫の冒険(上)

村山早紀・著 佐竹美保・絵 刊行日2019年3月15日 童心社

母親の大きな指輪を借りてみたり、ミントティーや羊の焼き肉ってどんな味だろうと想像したり、かつて、たくさんの子どもたちが魅了された物語。
初読みの大人も、最初の数ページでわくわくして、冒険の旅の仲間となりました。
大人が読んで違和感のない、さりとて児童文学の気配のある、絶妙の難易度調整がされた整った日本語になっています。

悪い魔法使いに石にされてしまった王国を救うため、7つの宝石を探す旅に出た3人の子どもたち。
素直で元気でお人好しで優しくて怪力なかわいいお姫様。シェーラは心も体も強くあろうとしている特別なお姫様ですが、誰もが思わず笑み返したくなるような魅力を持っています。
シェーラの幼馴染のファリードは魔法使い。
途中から旅に加わるハイルは元盗賊で、短剣使い。

子どもたちの敵である悪い魔法使いサウード。
元盗賊の錬金術師ハッサン、魔法の杖と地図の話を教えてくれる賢者ハシーブ、正義の海賊シンドバット。
砂漠のオアシス、海の中の幽霊船に守られた島、雪深い山奥に建つ王国、空を飛ぶ賢者たちの住む都市。
それぞれの章(きっと、これが一冊ずつだったのでしょう)ごとに、新しい舞台が広がり、新しい登場人物と出会い、シェーラは成長していくのです。
悲しいことやつらいこともあるけれど、シェーラ姫たちと一緒なら、きっとなんとかできると信じられる、素敵な物語です。

読み手は旅の4人目の仲間になったり、シェーラ姫に乗り移ってみたり、ファリードやハイルに憧れてみたりしたことでしょう。
たくさんの子ども達が魅力されたのもよくわかります。
こんな物語に幼いうちに出会えると、きっと心のなかでキラキラとお人好しで優しくて素直な笑顔が輝き続けるに違いないと思いました。
シェーラ姫のお友達だった人は再会を喜んでください。

初めて出会う人は、私と一緒に冒険を楽しんでほしい。
美しくて楽しくて、童心に戻ってわくわくして読み進めました。
続きが気になります。早く読みたくなります。
でも、一言ひとこと、丁寧に読みたくなる美しい物語。
本として手もとにくる日を楽しみにしています。

これはおまけの感想ですが、なんとなく、「ですます」調で感想を紡ぎたくなりました。
#NetGalleyJP さんで読ませていただきました。

« 2019年1月 | トップページ | 2019年3月 »

Here is something you can do.

  • 25作品のレビュー
  • 80%
  • グッドレビュアー
  • プロフェッショナルな読者

最近のトラックバック