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2018年12月

2018.12.29

家族の秘密

セルジュ・ティスロン 阿部又一郎 2018 文庫クセジュ

あらゆる真実が治療的になるわけではないが、それでも<秘密>はしばしば病原となりうる。(p.158)

途中、何度か挫折しかかった本である。
未解決の問題を秘密として抱えていた人の子の世代、孫の世代になって、秘密が漏洩することがある。
目の前の人の症状は、そうした親や祖父母の世代の秘密が反跳したり漏出しているのではないかと読み解いていく。

秘密を暴き出せばよい、というものではない。
この本の前半は秘密がどういうものであり、どのように現れてくるものであるのかを、解説する。
個人のレベルの秘密もあれば、社会のレベルの秘密もある。

著者はフランス人であるから、彼の出会うケースの中に落としているのはヨーロッパ戦線の体験であり、ナチスである。その体験への理解を通じて、日本での戦争を体験した人たちの記憶と秘密について、考えずにはいられない。
その体験が、どのように親の世代、私の世代、より若い世代に反跳するのか。
なかでも、「モニュメント建立されるたびに、何かが覆い隠されてしまう危険性がある」「集団との絆を強化することに重きをおくために、各々の経験のなかで最も個人的なものを放棄することを促す」。(p.134-)
この指摘は、たとえば、靖国のような存在の役割への理解の一助となるものだ。

暴き出すための読み解き方を教えてくれるのではなく、どのように秘密を病原とならないようにしていくのか。
この点は非常に臨床的であり、極めて現実的である。
自死などの死者について、あるいは、複雑な関係性、戦争や事故といった災害にまつわる罪悪感など、秘密になりやすいものを抱えている人に接する時の参考になった。
家族の自死や複雑な関係といった秘密にしがちな出来事を、子どもたちに「あなたのせいじゃないの」と伝えることに尽きる。
それも、伝えることに早すぎることはない、ということ。事実を知ることと意味をわかることは違う次元であるので、意味がわからないだろうと考えて情報を伏せるのではなく、事実は知らせておいて後から年齢相応に意味を理解することができればいいのではないか。
とはいえ、伝える側が感情的にならずに、自分の心が傷つかずに話せる形、話せる範囲から伝えていくことが肝要である。

何度か挫折しかかったのは、我が身と我が家の家族の秘密とはなんだろう?と引き寄せるようにして読んだからだ。
そう考えると秘密はある。きっとこのような秘密があって、このように私に反映しているのだろうと理解はできる。
理解していくことで、じゃあ、どうしたらいいかと考えると、だんだんとつらくなった。
しかし、著者の目的は秘密が暴かれることではなく、新たな病因とならないよう、秘密を次の世代に持ち越さないための努力を提言することであるように思う。

あなたのせいじゃない。
それは、あなたのせいじゃないのだ。

2018.12.14

猫を彫る

はしもとみお 2018 辰巳出版

幸せは猫の形をしている。

この写真集を見て、ぽんと思い浮かんだ。
遠目に見ると、写真と見まごう。
写真は写真だが、実物ではなくて木彫だったりする。
そのことに驚く。
眼差しや仕草が活き活きとしていて、とても自然で。
その愛らしさに頬が緩む。

Twitterで作品を見た時から、素敵だなぁと思っていた人の写真集。
書肆 吾輩堂で、その日に入荷しばかりだった本と出会うことができた。
私が気に入ったきっかけになった、猫の修学旅行という作品も収められていたから、迷わず購入。

彫刻のモデルになった猫たちは、福岡県の相島だったり、鹿角市だったりにいるそうだ。
家猫以外の猫たちの彫刻が混じっているのも楽しい。
なかなか彫刻の実物を見る機会はないことを残念に思っていたが、これはもう、実物に会ってしまったら連れて帰りたくてたまらなくなるだろう。
本でよかったことにしとこうかな。

しかし、なんで、作者さんは男性だと、私、思いこんでいたんだろう。

トラネコボンボンの365日 世界一周 猫の旅:明日はニャンの国? 猫といく冒険

中西なちお 2018 誠文堂新光社

なんて、おしゃれなんだろう。
そう思ったら最後、書架に戻すことができずに購入した本。
出会ったのは書肆 吾輩堂という、猫の本と猫の雑貨の専門店だ。

どのページも色合いが美しく、この絵を部屋に飾りたいなぁなんて思ってしまう。
12月22日(土)から29日(土)までの間、東京のギャラリーで原画展があるらしく、そこで販売もされると知り、行ける人が羨ましい。

世界のどこまでも連れていける空想キャット。
もう、留守番はさせなくてよい、そんな猫と一緒に回る世界一周。
いろんな民族衣装や建物を楽しむ猫たちが、愛らしくてかわいい。
透明感のある優しい色合いが、おしゃれできれいで、見飽きることがない。

絵本とも、写真とも、異なる世界一周の本。
自分が行ったことがある場所を見つけても楽しいし、行ったことがない場所を眺めても楽しい。
気が向いたページを開いてはめくり、また閉じてはめくり。

一番最初に惹かれたのは、p.90の3月25日のモロッコの青い町並みの絵。
その前後のアルジェリアの青い部族の絵も、タイの藍染の村の絵もすごく好き。
青が好きだけど、黒と茶の絵も好きで、原画展に行ったら、あれもこれも欲しくなって大変になるだろうなぁ。
この本と出会えただけで、満足しとこ。

むかし飼っていた猫には留守番をさせることが多く、一緒に旅に行けたらなあといつも思っていました。
猫はいつも文句も言わずに待っていたのでなおさら申し訳なく、
亡くしたときは、いつも留守番させて一人ぼっちで待たせてしまったな、と後悔しました。
以来、空想キャットと一緒に暮らしています。(p.3)

私も私の空想キャットと旅をしたい。本の世界を。

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