2018年9月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

著者名索引

香桑の近況

  • 2018.1.4
    2017年 合計55冊
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計378冊
無料ブログはココログ

« 心花堂手習ごよみ | トップページ | 花だより:みをつくし料理帖 特別巻 »

2018.09.05

永善堂病院:もの忘れ外来

佐野香織 2018年9月5日刊行 ポプラ社

誰しも忘れたくないことがある。
忘れられないことではない。忘れたくないことだ。

主人公の佐倉奈美は、キャリアを断念して実家を離れ、祖父母の住む地方都市の物忘れ外来で働き始める。
様々な老いや死の物語が、若い女性の成長と回復の物語に転じていく。

ぴんぴんころりも、ねんねんころりも、どちらも、悲しいものである。
逝かねばならないものの押しつぶされそうな不安。
がんや認知症の病気そのもののダメージも人を不安にするが、それは死のとば口であるという認識が不安を大きくする。
自分はこれから死に向かって残り時間を過ごしていくのだと、改めて気づいてしまう瞬間から、情緒は波打ち、悲しみや怒り、様々な感情を引き起こす。

世界から人を隔絶する膜がある。見えない膜だ。
その膜は、病気だったり、傷つきだったり、孤独そのものだったりする。
祈りが膜を乗り越える時があることを信じるのが、支援職の仕事でもある。
見送らねばならないもののいつまでも尾を引く後悔を解きほどくこともだ。

すべての人が苦しみが少なく、心満ち足りて、静かに眠るように逝くことができるといいのに。
その人生の再晩年期を、その生きて働いてきた苦労が報われるようなものであってほしい。
老いや死を扱いながらも、可哀想な物語に仕立てあげることなく、爽やかで穏やかな気持ちになる稀有な物語だった。
なかでも、老医師夫婦の和解の物語が、とても素敵でたまらなかった。

レビー小体型認知症に前頭側頭型認知症、脳血管性認知症。
そう。認知症の種類は、アルツハイマー型だけではない。
サルコペニアやフレイルなど、馴染みがないとわかりづらい言葉もあるだろう。
老いや死は誰しも避けて通れないものであるが、自分や肉親がそうなってみないとわからない人もまだまだ多いと思う。
こういう物語の題材になることを通じて、これが当たり前に起きることだと、もっともっと身近なものになってほしいものだ。

死は、その人が最後にできる教育だと、私は思う。
主人公がそのプレゼントを受け取りながら成長していく。
誰かにそうやって受け継がれていくから、無駄な死は、無駄な生は、ひとつもない。
そうやって世界は、今日も回っていくだろう。

#永善堂病院 #NetGalleyJP

« 心花堂手習ごよみ | トップページ | 花だより:みをつくし料理帖 特別巻 »

**死を思うこと**」カテゴリの記事

>>私の仕事」カテゴリの記事

小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/183237/74158144

この記事へのトラックバック一覧です: 永善堂病院:もの忘れ外来:

« 心花堂手習ごよみ | トップページ | 花だより:みをつくし料理帖 特別巻 »

Here is something you can do.

  • グッドレビュアー
  • プロフェッショナルな読者
  • ボランティア・寄付ならプラン・ジャパン
    子どもとともに途上国の地域開発を進める国際NGO

最近のトラックバック