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香桑の近況

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2018年7月

2018.07.26

笑う猫には、福来る:猫の手屋繁盛記

かたやま和華 2018 集英社文庫

3つの短編集、どれもそれぞれに魅力がある。
宗太郎の婚約者である琴姫ががんばる「琴の手、貸します」。
宗太郎が拾った子猫田楽ががんばる「田楽の目、貸します」。
そして、猫先生がいつものように弱りながらがんばる「あすなろ」。

前作『されど、化け猫は踊る』を何度も何度も読み直すたびに涙した。
ぐったりするほど、心が揺れ動かされる名作だった。
その分、猫太郎…もとい、宗太郎も、すっかりエネルギーを使い果たして、風邪っぴきになった。
そこから始まるのが「琴の手、貸します」。
宗太郎の複雑な心境を、にやにやしながら読んだ。

場所は変わって、その後の田楽。
目の見えない少女に可愛がられている田楽が、彼女に「田楽の目、貸します」。
ちび猫は若猫に育ってきたが、なんとまあ、父親そっくりの堅物で。
可愛らしくてたまらず、周囲の先輩猫や猫股と一緒に、手助けしてやりたくなる。
なにやら、尾羽に白い羽毛が混じるカラスまで出て来て、こちらも活躍しそうな気配だ。

このまま、宗太郎は出番がないかと思ったら、「あすなろ」でいつものように困り果てながら相談相手に向かい合う猫先生を見ることができた。
四角四面の堅物だった宗太郎も、ずいぶんと丸くなり、心が豊かになったものだと思う。
こんなに成長したのだから、そろそろ人間に戻してあげてもいいんじゃないかな?と白闇に問いかけたくなった。

猫たちは、人間が大好きだ。
白闇や珊瑚といった猫股たちも例外ではない。
愛情深く、諦めながら許してくれる。
彼らのひたむきな愛情を感じながら生活しているので、このシリーズはとても愛しい。

人と暮らす猫も、今はそうでない猫たちも、福が来てほしい。
猫と暮らしてきた人も、今はそうでない人も、福が来てほしい。
いっぱい笑えるといい。

2018.07.18

星をつなぐ手:桜風堂ものがたり

村山早紀 2018 PHP研究所

世界を見守る優しい精霊が紡いだような物語だ。
老いと死を見つめる人だけが持つ、どこか現世を遠くから見つめるような気配。
精霊は時々、猫の形をしているのだと思う。

主人公の一整は、働きなれた職場を離れざるを得なくなった後、桜風堂書店という小さな田舎町の古い書店に出会い、その書店と共に息を吹き返した。
そんな「桜風堂ものがたり」の幸せなその後を描く。

私は『桜風堂ものがたり』と『星をつなぐ手』のどちらも、単なる職業小説、お仕事小説のくくりに入れることはできない。
書店や出版の業界は、移り変わる時世の影響を厳しく受けている。
その業界にあって、本という星の光を守っている人たちがいる。

言葉こそ、世界の闇を照らす星だ。
その文字に込められた想いが輝く星になる。
人から人へ、人の手を経て届けられ繋がる星の光。
いつか自分が死んだ後までも輝き続ける星になる。

頑張るものには、もっともっと幸せになってもらいたい。
昔ながらのよきものが消えずに残り、弱いものは守られ、若い者は育ち、傷ついた者は癒され、年を取る者は賢く敬われ、得るべきもの手に入れ、あるべきところに収まるように。
そんな当たり前にあってほしいことが、今はとても難しい時代に生きているから、切なくも幸せな気持ちになった。

『桜風堂ものがたり』『コンビニたそがれ堂:祝福の庭』『百貨の魔法』『コンビニたそがれ堂:小鳥の手紙』と本作とを通じて、私が強く感じていることがある。
それは、作者が「終わりを見据えている感覚」だ。
主人公の成長物語であるのだが、その主人公を見守り、手助けする年長者たちの物語である。
自分の人生のピークは過ぎたかもしれないが、まだ少しだけ、誰かのために何かできる幸せがそこにすくいあげられているのだ。
私のように自分の子どもを持つことはなかった登場人物たちも、誰かに何を残し、教え、育て、守ることができる。
そこに、私はとても救いを感じた。自分自身が救われるような気持ちになった。
そういう意味で、これは若い人のみならず、人生の午後3時を過ぎた人間の物語だ。

物語というものは、古来、魔法を持ち合わせていた。
傷つき弱り迷った人の心に寄り添い、いたわり、慰め、励まし、力づける、物語の原初の魔法を感じてもらいたい。
ティッシュは箱で用意することをおすすめする。

 *****

書籍の出版に先駆けて、原稿を読む機会を得た。
この本が数多くの人の心に魔法をかけてほしいことを願い、先駆けてレビューを公開する。
ネタバレにはなってないはず。

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