春の旅人
村山早紀・げみ 2018 立東舎
この本に桜の花の季節に出会えてよかった。
春の柔らかな日差しや、淡い紅色の花びらが世界を彩る季節にぴったり。
戸外で開いたら、ページの中に同じように美しい景色が広がるはず。
村山早紀さんの3つの短編と、げみさんのイラストのコラボ。
「花ゲリラの夜」と「春の旅人」は文章をイラストが彩る。
「ドロップロップ」はイラストが主役で、文章が脇を固める。
そんな掛け合いを感じる作品集だ。
げみさんの描く絵は、色合いが柔らかくて心地よい。
思い出の景色は白く淡く、時にはくっきりと象徴的。
物語を読みながら景色を思い浮かべるように、イラストが浮かび上がる。
村山さんの物語は、易しくて優しい魔法の言葉。
厳しいことや苦しいことを乗り越えていく力をくれる。
表紙の少し不思議なイラストの意味もわかる。
ページごとの天地に模様が入っているような本が好きで、そこも好み。
めくるたび、どのページも特別で、子どもの頃に買ってもらった懐かしい絵本を思い出す。
その美しさに思わず頬が緩むのだけど、シビアなテーマをぶっこむ村山さんが、かっこよくてしびれる。
この人の紡ぐ言葉は優しいだけではなく、まっとうで、背筋が伸びるお思いがした。
「地球のきょうだい」
なんて素敵な呼びかけだろう。
なんて壮大な呼びかけなんだろう。
花ゲリラも胸が躍るような思い付きだが、この呼びかけが私に一番響いた。
優しいだけ、美しいだけではない。
春ごとにツバメにおかえりなさいと声をかけ続けたいから、自分のことでいっぱいいっぱいの日にも、「きょうだい」と遠くから呼びかけてくれる青い光を心に留めておきたい。
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