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2017.04.21

ふんわり穴子天:居酒屋ぜんや

坂井希久子 2017 時代小説文庫

美人の未亡人が商う居酒屋ぜんや。
そのお妙にぞっこんの、武家の次男坊の只次郎。
二人それぞれが主人公を務める短編集だ。

お妙にはお妙の事情があり、物思いがある。
只次郎はには只次郎の事情があり、物思いがある。
そのあたりは面白みを感じるところである。

時代考証など、自分はそれほど詳しくないけれども、少し首をかしげることはある。
たとえるならば、テレビの時代劇を見ているような感覚なのだ。
江戸時代の風俗ならではの奢侈を禁じた改革であるとか、棒手振りたちの呼び声であるとか、遊女の書いた起請文であるとか、細工や仕掛けは色々と講じてある。

主人公の只次郎が士分の身分にこだわらないことと、現代的なくだけた言葉遣いで統一してあることから、時代背景に思いを馳せることなく読むことができる。
江戸時代っぽいいつかぐらいの雰囲気を味わうことができ、時代劇に慣れていない人にも読みやすい。
逆に、時代劇に慣れていると、いささか物足りない……こともあるかもしれない。
その点、歴史小説ではなく、時代小説、時代劇と思えばよいかも。

前巻で人間関係はだいたいできあがっていたので、お妙を魅力的に描くところは少なめであるが、代わりにお妙の内心を描く部分が増えた。
只次郎よりもお妙のほうに主人公がうつったかと思うぐらいだ。となると、只次郎がお妙の料理に舌鼓をうつ場面も前巻に比べて控えめに感じたのである。
気楽に読めるのはよいところなのであるが、料理のところとなると、二番煎じの感を禁じえないところが、損をしているかもしれない。

だが、未亡人となり、独居している女性ならではの生きづらさを描くことで、登場人物が活き活きとしている。
妙に志乃、栄、それぞれの生きづらさが一番の読みどころのように思った。

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