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2017.04.25

ちゃんちゃら

朝井まかて 2012 講談社文庫

庭師の仕事は空仕事。
なんて素敵な表現だろう。
まかてさん初読みである。

元気のいい庭師一家の物語だった。いなせで、憎めないというよりも、心憎い。
お侍が刀を振り回すわけではない、江戸の職人達の生活を感じるほうの時代劇だ。
庭師の親方である辰蔵の娘のお百合と、辰蔵が拾って職人に育てているちゃら。
この二人を中心に、5つの庭をめぐりながら、物語が進んでいく。
なにしろ、ちゃらの成長物語と思いきや、大きな事件がでーんと中央に構えている。
この二本の柱があるおかげで、先を急いで読まずにいられなかった。
和風の庭園の作法に詳しいわけではないが、草木には少しは馴染みがある。
といっても、思い浮かばない植物があれば、検索しながらというのも面白い。

浅い池と築山、三尊石を置いて、春の風の匂いを味わえるように按配した千両の庭。
料亭の女将が依頼主の、蘇鉄や棕櫚、芭蕉が植えられた南蛮好みの庭。
老夫婦のための、古里の庭。いかにもな庭作りから脱却した、自然の景色を活かした庭だ。当時の江戸には自然の雑木林が残っており、それを伐採して狐狸を追い出す悲しみをちゃらが知る場面、よくぞ書いてくれたと思う。
祈りの庭。主人公達がよく出入りすることになる寺のために普請する庭を通じて、庭とはなにか、改めて問いかけてくる。これが、第三の柱だ。
そして、名残の庭へと続くわけであるが、私にとって、この見え隠れする第三の柱が胸を打った。

絵に描いたような理想論があるとする。
その理想論に沿った施策は、しかし、人を必ずしも幸せにするとは限らない。
理想に人を従わせるのではなく、その理想を作り上げた始祖たちの思いを馳せてみるとよい。
理想の高さを盾に、理想に従えない人を切り捨てず、打ち据えず、人が思い描く理想に耳を傾け、心を通じさせることが大事ではないのか。
人は自分に繋がる配慮があって、初めてくつろぐことができる。
自分のためにと祈りをこめられた営為にこそ、人を幸せにする力があるように思うのだ。
庭という表現方法を取り上げながら、そこには、人としての生き方や祈りのありよう、幸せのありようが問われていく。
木を植える人は平和を作る人である、と、ベトナムの人から教えられたことを思い出した。

テンポもよくて面白い。胸もすくし、しんみりとする。
そんな素敵な読み応えのある小説だった。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
朝井まかてさんは、初読みでしたか。
意外です~。
そういえば、私も色々な植物の検索をしながら読んでいたことを思い出しました。
作庭の色々、江戸の町とそこに暮らす人々の息遣い、とても生き生きと描かれていましたね。

まかてさん、いろんな物語を発表されてますが、私は特に『残り者』や『恋歌』などの江戸末期の物語、『すかたん』みたいな大阪を舞台にした物語が好きです。

わぁぁ、ごめんなさい!!
名前も書きこまないうちに、送信ボタンを押してしまいました。
江戸に暮らす人々の息遣いが云々と書いたのは、私、水無月・Rです~(^^;)。

水無月・Rさん、CO&TBありがとうございます^^
お名前なくても、このタイミング、水無月・Rさんのはず!と疑いもしませんでした~。

まかてさんの『残り者』を読んでみたいなぁと思っていたところ、知人から『ちゃんちゃら』と『恋歌』を貸していただいたのです。
『恋歌』のほうも楽しみにして読んでいこうと思いました。

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» 『ちゃんちゃら』/朝井まかて ◎ [蒼のほとりで書に溺れ。]
面白かった~!朝井まかてさんの前作『花競べ ~向嶋なずな屋繁盛期~』も面白かったんだけど、本作『ちゃんちゃら』は更に勢いを加えて来て、江戸っ子たちのべらんめえや心意気がとても心地よかったです。... [続きを読む]

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