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2017.01.14

大津中2いじめ自殺:学校はなぜ目を背けたのか 

共同通信大阪社会部 2013 PHP新書

読めば読むほど、腹が立って仕方なかった。
はらわたが煮えくり返るというか。
怒髪天を突くというか。
自分の中で、怒りがぐわぁっとこみ上げてくる。
読書でここまで腹が立つことって滅多にない。

いじめを苦にして自殺する子どものニュースは毎年のように報道される。
その中で、この件が特に記憶に残っているのは、ネットでの過激な反応と攻撃性の発露による。
匿名性を隠れ蓑にした個人がいじめ加害者と目される人物とその家族や学校関係者の個人情報の暴露が行い、それが無関係の別人にも及んだ。
鵜呑みにしたのか便乗したのか、教育長まで傷害事件の被害にあう。
単なる傍観者に過ぎないはずの第三者が、積極的に迫害者へと転じていった現象は、私は忘れられない。

その顛末もであるが、そもそも学校で何が起き、どうしてこうなったのか。
もう一度、全体を整理して見直したいと思い、購入したわけであるが、どこをどうとっても腹立たしく、やりきれない思いになる。
本書は直接的ないじめ加害者の分析ではなく、被害者が自殺にいたるまでに起きた学校での出来事や様子と、その後の学校の対応についての取材である。
これは意味が大きい。いじめは、数多くの傍観者によってエスカレートするが、この件では教職員が最大の傍観者となってしまった。
ひとつひとつが後手に回っていくもどかしさ。ここで誰かが気づいていれば。ここで誰かが声をかけていれば。ここで誰かが他の生徒に指導していれば。
ここで誰かが、この子を学校から避難させてあげることができれば。
誰も止めることがないまま心理的・身体的な暴力がエスカレートしていく過程は、結果が自殺と他殺の違いはあれど、川崎の中学生が殺害された事件と重なって見える。

大人は問題にしたくない時、平気で問題ないことにしてしまう。問題はなかったのが対策はないし、責任もない。そういう思考行動パターンをお役所仕事と呼ぶのではなかろうか。
担任の対応が不十分だったとしても、その人は異動したてであったという。新しい職場にすみやかに馴染めるかどうかは、人にもよるし、環境にもよる。その人が馴染むまで、十分なフォローを受けられなかったであろうことは、労働者として気の毒であったとは思う。
しかし、一番気の毒であったのは、亡くなった子である。そこを見失ってはならない。
そこを見失うから、その後の管理職らの対応がお粗末なものに「なれる」のだと思う。
保身や否認という態度は、自分のほうが可哀想という気持に裏打ちされていると考えるからである。

管理職を始めとする教員達が保身優先になったのは、ありがちであるとは思うし、その時の社会的な反響の大きさに対してますます防衛的になってしまったのかもしれない。
かといって肯定も受容も承認もできないが、ことに残念であったのはスクールカウンセラーの果たしてしまった役割である。

スクールカウンセラーは一般的にどのように考えられているかは横に置き、多くは週に1-2回、4-8時間程度の勤務であり、生徒や保護者との個別の面接や心理査定よりは、コンサルテーションを主として働かざるをえない職である。
相談室として個室をわりあてられているが、この時のスクールカウンセラーが職員室に机もあるというのが、よくあるパターンだと思う。
非常勤であるスクールカウンセラーは、まず教職員と日常的に交流をとることで教職員との信頼関係を築かなければならない。
教職員との交流を密にしないことには情報をもらいそこねることもあるし、まるで日常会話の一部のような肩肘をはらない形でのささやかな助言としてのコンサルテーションの積み重ねが、よく機能するスクールカウンセラーに必要なのだと思うのだが。
思うのだが、しかし。
確かに学校での滞在時間も短く、アクセス可能な情報には限りがあるとしても、もう少し生徒と関わることができていれば、自殺の原因は家庭であると、学校に保身の口実を与えずにすんだのではないかと残念に思う。
と同時に、これがスクールカウンセラーとして学校に入っていく心理士達にとって、大きな警句になると思うのだ。
誰のために、どんな仕事をするのか、自分なりに職務を見直してもらいたいと心から思った。

いじめはなくならないかもしれない。なくすことはありえないことかもしれない。
だとしたら尚更、いじめが発生した時の対応や工夫を磨くことが必要である。
なかったことにするのではなく。
その人の死から最大限に学びを得て、その死を無駄にしないことだけが、生きているものにできることなのだから、本書を読めてよかったと思う。

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