コンビニたそがれ堂:祝福の庭
村山早紀 2016 ポプラ文庫ピュアフル
あの三郎さんが帰ってきた。表紙に描かれた賑やかな店内に、にっこりと立っている。
魔法のコンビには通常営業。銀の髪と金色の目をした店長さんがいることに、ほっとした。
おでんとお稲荷さんが美味しくて、最近はコーヒーもフラスコで淹れてくれる。甘酒のこともある。
近頃は、素敵な着物をまとったねここさんがアシスタントに入ることも増えてきたようだ。
洋服屋さんで働く販売員の女の子。かつてはデザイナーを夢見ていた。
母親を元気付けたくて、往年の大漫画家に会いに行く小学生の女の子。
父親と同じように芸人になりたくて、でもなかなか売れなくて、相方である幼馴染にも後ろめたく感じるようになった男の子。
3つの物語はどれもクリスマスの時期にぴったり。
寂しいだけ、悲しいだけの物語ではないのに、なんでこんなにほろりとくるのだろう。
夢は叶うかもしれない。叶わない夢もあるけれど、形を変えて叶うこともある。
誰かから贈り物をしてもらえたら嬉しいけど、きっと贈るほうも嬉しいんだよって教えてくれる。
自分が誰かに何かしてあげることができること。それを喜びたい気持ちでいっぱいになる。
それが、きっとこの冬一番の魔法だろうと思ったのだ。
あとがきを読んで、こういうことってあるあると思った。
自分が仕事で関わってきた人たちが、思いがけず、当たり前のことであるが、思いがけず、大人になっていて再会したときの喜びとか。
ふとした瞬間に、過去のこれまでの自分の仕事が、やってよかったこともあったのだと教えてもらえる喜びとか。
私はこの人たちを守っているつもりで、かえって支えられているんだなぁって、ほんのりと胸が温まる瞬間を思い出した。
愛されているなぁとおずおずと認めざるを得なくなる時の、面映いような、たまらない幸せな瞬間があるのだ。
さあ、今年もクリスマスのプレゼントを用意しなくちゃ。ね?
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