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2016.12.15

男役

中山可穂 2015 角川書店

そこは夢の世界にたとえられる。

私が宝塚大劇場に行ったことがあるのは、一度きり。
高校の時も友人の一人が熱烈なファンで、大学の時も友人の一人が熱烈なファンで。
あれはたぶん、大学の友人につれていってもらったような気がする。
なんの作品だったのか、誰が出ていたのかも憶えていない。
劇団員といえばいいのかな。ステージの上の華やかさとサービス精神、なんといっても男役の皆さんのかっこよさ。
過剰なまでのロマンチシズムとアドリブの笑いのギャップに、生で何度も観たくなるファン心理を悟った。
礼儀正しく規律正しいファン達の熱量に圧倒され、独特の世界だなぁ、と思いながら、帰ってきた。

その時の印象そのままの世界が、この本の中にある。
宝塚そのものではなくて、印象としての宝塚。思い出としての宝塚。
著者が後書きで但し書きをしているけれども、リアルを追求したものではない。
逸脱するからこそ、幻想としての宝塚が強く心によみがえってくる。
友人たちの話から垣間見てきた宝塚、自分が一度だけ行った宝塚、その場所でならさもありなんと思うような、そういうしっくりくる感じがする。

中山さんの物語は、気合いを入れて読むものだと思っていた。
心の一番やわらかい所を閉まっているパンドラの箱をこじあけながら読むような、心が右往左往に引きずられて引き裂かれるような思いをするような、そんな恋愛小説を書く方だと思っているから。
美しい日本語で、美しい恋愛小説を描く、随一の方だと思っているから。
だから、読むタイミングをすごく選ぶのだけども、この物語はそんな心の準備は不要だった。

ファントムこと、扇乙矢。50年前に舞台事故で死に、宝塚を守護してきた幽霊。
現在のトップであり、引退を控えた、如月すみれ。
乙矢の相手役だった麗子の孫である、永遠ひかる。

彼女達、三代にわたって受け継がれていく、男役という生き方。生き物。
確かに女性であるには違いないが、彼女たちは男役である数年間を、女性ではないものとして自らを形作る。かといって、男性そのものではない。
男役は、男性の理想形を体現する、男役という性別であり、生物になる。
現実ではなく仮想の宝塚だからと敢えて書いておくけれども、そんな仮想の性別であり、この世界に仮住まいしているような人物像が、中山さんの世界に似合うように思った。
なにしろ、美しい。それだけで十分だ。

すみれの引退で幕を引く。
その切れ味がまた、中山さんらしいなぁと、舌を巻いた。
著者はもともと近代能楽集の一作品になるようにこの物語を構想したそうだが、ファントムだけではなく、男役そのものが舞台という一夜の夢でしか息づけない、そういう物語だったのかもしれない。

近いうちに、『娘役』のほうも手に入れなくちゃ。

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