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2016.08.31

紅霞後宮物語 第四幕

雪村花菜 2016 富士見L文庫

4巻になり、なにやらここで一くくりだろうか。
明慧の死を招いた前巻の出来事を引き継いで、真相により迫ろうとする。主人公の小玉は相変わらず豪快であるし、テンポのよい会話にそれほどひきずられずに、物語はちゃんと進んでいく。
このあたりのバランスが程よいので、このシリーズは非常に読みやすい。
思わずくすりと笑ってしまうようなポイントは随所にあるが、話の筋は軽くない。
文林&小玉がどんな一派と相対してきたのかが、明らかになっていく物語だからだ。

政治が過ちを犯す時、独裁者の中ではなく市井の普通の人たちの無責任さの中に悪はあるのだと思う。
だから、悪の凡庸さというか、凡庸な人の中に悪を見出した時にぞっとする小玉の感性は正しい。
気づいた上で、自分自身を特別なところに棚上げしないで、しっかりと見つめて背負おうとするのは、本当にえらい。
現実において、なかなかできない姿勢であるように思うのだ。

出番の少ない文林であるが、現実的で計算高いのは悪いことではないと思っているので、今回のあれこれも、特に私の中で株を下げることにはならなかった。
むしろ、小玉不在だからこそぽろぽろと出てくる文林の素の驚き顔や本音のあたりが、かわいらしい。
もう少し、夫婦仲もなんとかなればいいのになぁ、と思うけど。
作者さんがどんな風にしていくのかを楽しみにしておこう。

ちょっぴり、失礼なことを書く。
その敵が、その敵への怖さが、小玉の感じている怖さが、なんだか物足りなかったのだ。
敵の狂気というものが、まだまだ手ぬるい、と思ってしまったのである。
私が物足りない感じがしたのは、すべての人の母になろうとした人のほうだ。この人のためになんでもかんでもやってしまうだけの説得力を、うまく感じられなかったのだ。
その人を母と思うだけで、その人のためになんでもかんでもやれちゃうような「純粋」な人を、あまり見かけたことがないだけかもしれない。
自分が母と名乗るだけで、子を自分の思い通りにしてもいいと勘違いしているような人を、母扱いしちゃいかんよ。
作中の人物達に説教したくなった。

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