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2016.07.31

オーリエラントの魔術師たち

乾石智子 2016 創元推理文庫

このシリーズ、文庫本になったら買おうと文庫化を楽しみにしていたのだが、近所の本屋さんで置いていなかったので、Kindleで購入。
中身は楽しめるのであるが、やっぱり、本は本の形で読みたいなぁ、と思いながら、ゆっくりとページをめくっていった。Kindleであるが。

4つの短編は、それぞれ別々の魔法を操る魔道師たちが主人公になっている。
文庫では魔法をこめた陶器を焼く陶工魔道師の話が一つ目である。これを読んで、魔道師もまた職人であるなぁと思った。
泥を器に変える焼き物は、そもそも、魔法みたいなものである。リアルの職人さん達の手仕事なんて、魔法としか思えないもの。
なお、この一遍は文庫書き下ろしだそうだ。
単行本に収録されていた「紐結びの魔道師」は本書には含まれず、『紐結びの魔道師』のタイトルで連作短編集が文庫で新たに出版されるという。

どの短編もとてもリアルだ。現実をファンタジーの文法で翻訳しているような、リアル世界を描いているような近しさがあった。
全体を通じて、オーリエラントの生活や人々の息吹を感じるような短編集になっている。
歴史に名を残す魔道師の物語ではないし、世界を変えるような魔法の物語ではないけれども、もっと市井の中にあって生活に根ざしている感じがした。

これまで私が読んできた4作のような大きな大きな物語の背景で、足下を支えるように、こんな生活世界が流れていることを教えてくれる。
いろんな種類、いろんな方法の魔法が世界にはあふれていて、ひっそりと心の闇を育てている。
その闇を見つめながら、自覚的に闇を育てていく「黒蓮華」と、無邪気を装いながら「闇を抱く」は、好対照をなしている。

作品によって、テーマや作風を色々と実験できるというのも、短編集の面白みであるかのように思う。
なにしろ世界は多様であり、おまけに、この作者のすごいことに、それぞれの短編は時代も違えば、地理も違うのだから。
その中で、様々な生き方を選ぶ人たちがおり、魔道師だからといって一辺倒に語ることはできないところが、面白さなんだろう。
オーリエラントの世界に入り込んで日常生活を送るような感覚と同時に、大物ではない一般人のちょっとした生きづらさが現実的だった。

物語自体は面白みを感じたが、やっぱり本は本で読みたいものだ。

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