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香桑の近況

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2016年7月

2016.07.31

やさしい竜の殺し方 memorial

津守時生 2009 角川ビーンズ文庫

このシリーズは、終わったはずが後から後から増えていったような。
キャラの分だけ、物語は増えていくのかもしれない。
きっと、書き手の頭のなかで、キャラクター達がわいわいとにぎやかにしているのだろ。
それが垣間見える。

なんというか。
作者自身による公式アンソロジー?
一つは一つは楽しいし、懐かしいし、読み始めると引き込まれる。
その後もあれば、その前の話もある。
それぞれ、ファンにとっては嬉しいこともあるだろう。
想像していたところを補ってくれるような短編集になっているのだとは思う。

結構、好きな世界だったのではあるが、もういいかな。
大人の事情もあるのだと思うし、作者のサービス精神もあるのだと思う。
けれども、読み手の想像に任せる部分もあっていいと思うから。

それよりも、三千世界のほう、話が進んで欲しいなぁと切実に思うのでした。

あきない世傳 金と銀 源流篇

髙田 郁 2016 時代小説文庫

時は享保、舞台は大阪天満。
新たなヒロインは幸という。

好奇心、向学心があり、読書や勉強に興味を持つ、当時としては風変わりな少女。
学者の家に生まれ、女子として振る舞うことをしつけられつつも、こっそりと書字に親しんできた。
手の綺麗なものは信用するな、商いは物を右から左に流しているだけだという、父親の偏った教育を受けてきた。
にも関わらず、幸は「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆として、五鈴屋という呉服商で住み込み奉公することになる。

まだまだ物語の序盤というか、導入部。
最初は不幸続きでとっつきにくく感じがものの、読むほどにだんだんと引き込まれていった。
なにしろ幸という少女が、成長していく様子がまっすぐでほほえましい。
当時の女衆の中では、勉強好きという点が風変わりだけども、くるくるとよく働く。
どうやら、なかなかの器量よしなところもあるらしい。
彼女が、今後、どのように成長し、活躍していくのだろうか。

みをつくし料理帖とは、違ったタイプのヒロインが、違った時代、違った場所、違った世界で動き出した。
とはいえ、郁さんの描く物語だから、苦しいこともいっぱいあるんだろうなぁ……。

ここで終わるのか!?というところで、閉じた1巻。
次巻が待ち遠しい。

オーリエラントの魔術師たち

乾石智子 2016 創元推理文庫

このシリーズ、文庫本になったら買おうと文庫化を楽しみにしていたのだが、近所の本屋さんで置いていなかったので、Kindleで購入。
中身は楽しめるのであるが、やっぱり、本は本の形で読みたいなぁ、と思いながら、ゆっくりとページをめくっていった。Kindleであるが。

4つの短編は、それぞれ別々の魔法を操る魔道師たちが主人公になっている。
文庫では魔法をこめた陶器を焼く陶工魔道師の話が一つ目である。これを読んで、魔道師もまた職人であるなぁと思った。
泥を器に変える焼き物は、そもそも、魔法みたいなものである。リアルの職人さん達の手仕事なんて、魔法としか思えないもの。
なお、この一遍は文庫書き下ろしだそうだ。
単行本に収録されていた「紐結びの魔道師」は本書には含まれず、『紐結びの魔道師』のタイトルで連作短編集が文庫で新たに出版されるという。

どの短編もとてもリアルだ。現実をファンタジーの文法で翻訳しているような、リアル世界を描いているような近しさがあった。
全体を通じて、オーリエラントの生活や人々の息吹を感じるような短編集になっている。
歴史に名を残す魔道師の物語ではないし、世界を変えるような魔法の物語ではないけれども、もっと市井の中にあって生活に根ざしている感じがした。

これまで私が読んできた4作のような大きな大きな物語の背景で、足下を支えるように、こんな生活世界が流れていることを教えてくれる。
いろんな種類、いろんな方法の魔法が世界にはあふれていて、ひっそりと心の闇を育てている。
その闇を見つめながら、自覚的に闇を育てていく「黒蓮華」と、無邪気を装いながら「闇を抱く」は、好対照をなしている。

作品によって、テーマや作風を色々と実験できるというのも、短編集の面白みであるかのように思う。
なにしろ世界は多様であり、おまけに、この作者のすごいことに、それぞれの短編は時代も違えば、地理も違うのだから。
その中で、様々な生き方を選ぶ人たちがおり、魔道師だからといって一辺倒に語ることはできないところが、面白さなんだろう。
オーリエラントの世界に入り込んで日常生活を送るような感覚と同時に、大物ではない一般人のちょっとした生きづらさが現実的だった。

物語自体は面白みを感じたが、やっぱり本は本で読みたいものだ。

2016.07.21

悲しみのイレーヌ

ピエール・ルメートル 2015 文春文庫

イライラして攻撃的な気分だった時に、幸せではない物語を読むのもよかろうと思って選んだ。
久しぶりに読んだ海外ミステリは、凄惨な殺人から始まる物語だった。
いくつかの殺人事件。どれもこれも、凄惨で、奇抜で、不合理。
かつて個別に考えられていたものが一連のシリーズであることが徐々にわかってくる。
一向にわかってこないのは、殺人犯の正体。

途中で、表紙を見直した。
イレーヌ。
この名前の登場人物は1人だけ。
主人公であるヴェルーヴェン警部の妻だ。
……嫌な予感しかしない。

ミステリらしいミステリだ。
最初から最後まで読んでみると、20世紀初頭の推理小説を想起させる主人公の思考の描写であるとか、えらくバランスの悪い二部構成であるとか、この小説の特徴は、だからか!と納得することができる。
読み終えてから、果たして、どこまでがしかけでどこまでが真実だったのだろうと、境界線があやふやになるような感じがした。
読み応えのある、面白い、王道なミステリだったと思う。
殺人の情景は過剰に残酷であるが、人によっては、だからこそ、これを作り物の世界として読むことができるんだろうな。
こんなこと、あるわけないよって、ファンタジーとして。

私も、若いときはそうだった。
今回は、こういう殺人があったあった、こういうことをする奴がいるんだよなぁと、思った。
その凄惨さが奇抜に思えなかった。非現実的なものに思えなかった。
現実として、世界に悲惨が多すぎる。

せめて、物語には救いがあるほうがいい。私の好みとしてね。

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