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2016.04.21

夜の写本師

乾石智子 2014 創元推理文庫

左手に月石、右手に黒曜石、口の中に真珠を持って生まれた少年は、満月の魔女、闇の魔女、海の魔女の生まれ変わり。
その死と闇を引き受けて、魔女の魔法を奪った魔法使いと戦わねばならない。

過去と現在の往還。重層な世界と言語。文化と自然の構築。
読みごたえがある。思い描き甲斐がある。
読むそばからイメージが膨らみ、主人公を追体験する。
主人公が前世である魔女たちの人生を追体験するように。

真実の探索はまったく新しい世界の探索であり、わくわくした。
私が思い描いた景色は、地中海沿岸。アフリカ北部……と言っても、私は行ったことがないが。
現実の日常とは違う世界を、あたかも体験してきたかのようなアクチュアリティがある。
主人公が場所を移動し、時代を移動するたびに、空気から変わるような転換があるのだ
その書き分けによる、読者の体験の切り替えが見事だったと思う。
しかも、著者は景色の描写が細かく、色合いを石にたとえることが多い。
たとえば、アイオライトと菫青石と表記したりする文面の雰囲気から、ますます、翻訳ものと錯覚することがあった。
名前と宝石の繋がりの手続きが、まさに貴石占術と思いきや、著者の名前からして石の賢者だったようである。

素晴らしいのは描写ばかりではない。
復讐の連鎖を閉じる円環。これが素晴らしいと思った。

ここから先はネタバレになる。
最初に殺された満月の魔女は月の魔力を奪われ、その生まれ変わりの闇の魔女は闇の魔力を奪われ、更にその生まれ変わりの海の魔女は海の魔力を奪われた。
月と闇と海は、女性が扱う魔法。3度に渡り、魔力を剥奪され、女性性を剥奪されて、生れ変わった主人公は男性になっていた。しかも、魔道師になるほどの魔力がない。
養い親を殺されて復讐の怒りを燃やす時、主人公は殺された自分自身のための復讐ではなく、他の誰かのためへの復讐に踏み出たことになる。
かつての親友や兄の生まれ変わりの支えと共に、写本師組合の同僚達の助けを受け入れ、主人公は孤独ではない自分に気づいた上で、孤独で貪欲な剥奪者と戦う。
主人公からいくら奪っても満たされることはなかった剥奪者が、本来、失ってしまったものを見つけ出して渡したことが千年の戦いに蹴りをつける。
最後に円環が閉じる時、失われたものを取り戻した二人が再び出会う時、最早、復讐は連鎖しないことを予感させる終わり方がとてもよかった。
双方が過去を背負って再開する時、過去があるからこそ、よい出会い、よい関係作りが始まるような気がするのだ。

旅行の友に駅の売店で買い、行きに半分読み、帰りつくまでに読み終えた。
これまで何度も書店で見かけたはずだが、こんなにもはまり込むとは思わなかった。
読み終えるまで、他のことには手がつかなくなったが、それだけの価値がある。
帰りがけ、同じ駅の売店で、2冊目、3冊目を買ったほどである。
絶品。

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