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2016.04.26

魔道師の月

乾石智子 2014 創元推理文庫

『夜の写本師』があまりにも面白くて、旅の帰り道に行きと同じ店によって、2冊目、3冊目とあわせて購入。
その勢いで読み始めたところ、シリーズの続きと言えるような言えないような。
面白いことに、『夜の写本師』に登場する人物のその後であり、『夜の写本師』よりも数百年遡った物語である。

これはこれで別の物語。
主人公となるキアルスは書物の魔法の創始者であり、彼が暮らすコンスル帝国はローマ帝国を彷彿とする。
温暖な気候、版図を拡大する強大な国。老いても賢く、しかし、人嫌いな皇帝が統治する。
それはまるでハドリアヌス帝のようである。きっとお風呂も好きに違いないと勝手に決め付けておく。
そのキアルスが、ばかな勢いで焼き払ってしまった一冊の本を再現しなければならない時、一枚のタペストリーに記された人物の人生を追体験することになる。

この人生の追体験の仕組みは前書と共通しているが、キアルスが体験したティバドールの世界は中近東のイメージ。
ペルシャのような世界だ。土地を奪われた牧畜をする民たち。奪われる土地、壊される生活。それを取り戻すための戦いが始まる。
鍵となるのは、「憎むんじゃない」というティバドールの父親の言葉だ。
この言葉が、星の光となってティバドールを守り、キアルスを守り、太古からの闇と戦う力となる。
アイイリオン。その言葉の意味は物語のなかでは説明されないけれども、星の光という意味ではないだろうか。

本の魔法使いと大地の魔法使いの、魔法に対する理解やアプローチの違いも面白いのであるが、まったく異文化の世界に入り込むような体験の濃密さのほうが印象深い。
面白いというと語弊がある。大きな歴史の流れがうねる時を感じるような読書の体験を表す言葉が、ちょっと見つからないなぁ。

月は、太陽の光を集めて、より純度を増したものである。星は数多くの太陽。その光を集めたような月。
魔術師の月というタイトルは、キアルスにとってのシルヴァインであり、シルヴァインの死と共に穢された命の喜びであり、キアルス自身が憎しみから解放されて初めて再び白く夜空に輝く。
太陽の光のようなレイサンダーという友がいて、愛する魔女がいて、世界はやっぱり美しくて。
魔術師の月というタイトルは、エピローグにしてようやく意味を感じ取ることができた。

憎んではならない。
憎みあい、殺しあい、終わりのない負の連鎖を続けるのではなく、闇を抱えて星の歌を灯し、月を見上げるような生き方をそれと言わずに指し示す。
この強いメッセージ性が、ライトではないファンタジーの身上のように思った。すごい物語だ。

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