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2015.01.09

悟浄出立

万城目 学 2014 新潮社

実を言えば、中身を知らずに読み始めた。
近畿地方のあれこれから飛び出して、作者はついに中国大陸を舞台にするのか。
それも、西遊記に材を取るのかとわくわくしながら、ページをくった。

あれ?

次は、趙雲。三国志やし。西遊記ちゃうし。
二章目に入ってから、これは、中国の古典に題をとった短編集だと理解する。
これまでも、『鴨川ホルモー』を読んだときなど、この作者は中国の戦国ものと、日本の戦国ものが好きだと感じたものである。
そういった好きで親しんできたであろう古典のいくつかを、主人公ではない人物を主人公に据えて、傍らから語らせるという手法でリライトしたものである。
華やかさは少ない。だが、英雄ではないからこそ、身近にせまり、自分と重なりあうようななにかが描き出されているのではないか。

孫悟空ではなく、沙悟浄。
ただただついていくだけの消極的な人生から、一歩、先頭へと踏み出していく景色が鮮やかだ。
自分が行きたい方向へ行く。その転換の瞬間を切り取った手腕が見事だと思った。

趙雲。三国志の名だたる英雄の中で決して目立つほうではない。
戦いの勇猛さではなく、故郷を失ったことに気づく悲しみが胸を打つ。

項羽ではなく、虞美人。
覇王がかつて愛していた人の身代わりでしかなかった自分。
その自分を、自分こそが本物として覇王に迫る痛々しさ。
しかし、その女性に「いちいち意地を張るのも馬鹿馬鹿しく思わないでもない」と冷静な視線を与える作者が素敵だ。
私はこれはかなりの名品だと思う。

荊軻ではなく、同じ音の名前を持つ一役人。
秦の始皇帝暗殺と言えば映画を思い出すけれども、その宮城に勤めて一役人から見た事件の日。
歴史には残らないドラマが人の数だけあるということ。

司馬遷ではなく、その娘。
この章がまた圧巻だった。
書き手としての、書くという営みへの思いが叩き込まれている。
たとえ今、読み手がいなくとも、文字は300年後のその先の人々に物語を届けるかもしれない。
物語を書く使命感のようなものを感じた。

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コメント

何だかこっちではお久しぶりです!無事にTB送れてるといいけどなぁ・・・。

私も丸々一冊が西遊記だと思って読み始めたので、あれ?って感じでした。ワクワクよりも切なさ溢れるお話が多かったね。特に虞美人のお話はグッときました。
今までの万城目さんとは趣が違ってたけど、こういうの好きなんだなぁというのがすごく伝わってくる作品で、是非ともオリジナルの長編を書いてほしいなぁと思いました。読んでみたい!

すずなちゃん、どもども。
TB&CMありがとうね。ちゃんと届いていたよー。
大人向けの作風の短編集だったねぇ。この虞美人は、これが定説になってもらいたいぐらい、心に残りました。
次のオリジナルの長編がどうなるかも楽しみだけど、この中のひとつを長編化してくれてもいいよと思わないでもないw
いずれにせよ、はずれのない作家さんです。

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