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2014.09.13

セラピスト

最相葉月 2014 新潮社

この本の感想を述べるのは難しい。
人の心をのぞき見る部分があるため、へたな論評を加えたくない気持ちになる。

心理臨床というものは、茫洋として表現しづらいものである。
言葉で表しきれないもの、言葉で表すときに置いてきぼりになるものをすくいあげるような営みであるためか、その営みそれ自体が言葉になりづらさを有している。
また、治療者によって千差万別、相談者によっても千差万別。そこは、相談者にあわせてのオーダーメイドになるものだからこそ、プロセスそのものも千差万別。
それを簡単に言葉で表すことは難しい。
カウンセリングなるものへの不信感や限界を感じた時、それを取材するにあたって、著者自身がまず院で勉強しなければ語ることが難しいと感じたのもむべなるかな。
そして、著者自身が言葉に限界を感じるとに限界を感じたこともあり、大きく取り上げられているのは、箱庭療法や描画法である。

本当に、カウンセリングというものは、かなり曖昧な世界である。どうやって国家資格化するのだろうと趨勢を眺めつつも、心という曖昧なものと取り組むには、取り組む側にも有象無象である必要があるのではないか。
私はこの有象無象な状況に居心地のよさを感じたりもするのであるが。
曖昧さや複雑さ、抽象的でとらえどころのない、言葉になりきれないというのは、まさに、心の特性だと思われる。
単純明快に割り切るのではなく、そういった割り切れないもの抱えられるようになることも、心の成長の一つの目標である。これを専門用語で不安耐性と言ったりする。

セラピストにとって、その業界の外からはどのように見られているのか。どのような誤解があり、理解があるのか。
どういったことがわかりづらかったり、どのようなことが受け入れられやすいのか。
著者の目線は臨床心理を学びながら取材したとはいえ、クライアントよりの目線だ。数々の素朴な疑問が、逆によい味を出している。
そこから紡がれる言葉は、セラピストがセラピストである自分とセラピストへの期待を客観的に見直す手がかりになる書である。
しかし、なんと言っても、著者がインタビューした臨床家たちが中井久夫を筆頭にビッグネーム揃いということ。その臨床を垣間見ることができる資料としても貴重ではないか。

興味深かったのは、カウンセリングがGHQ主導で日本に普及していった経緯である。この時代を語らずして、日本では心理療法と言えばロジャリアンのカウンセリングとイコールであるかのように認知されているかが説明できない。
こういった歴史的な過程は、これまであまり整理されてこなかったように思う。
思えば、私が師事した臨床心理学の教授が大甕に全国から集まってとか、河合隼男
や小此木圭吾らと学んだとか、あーだこーだと話し合ったとか、そんな話をしていたことがあった。
いくつかの集会や勉強会の話が重複していたのかもしれない。もっとしっかり聞いておけばよかったなぁ。
彼は間違いなく、日本におけるカウンセラーの第一世代だった。自分達は本を読んでそれを実践していた、何でも試してみていたのに、今になってこの療法には資格がいるとか、セミナーを受けなければいけないと金を取るのはおかしいと気炎を吐いていたことを思い出す。
その教授も鬼籍に入った。彼ら第一世代がこの世を去りつつあり、それ以降の人間が事情を文章に残すことで、出来事が歴史の一こまにおさまる。
私の体験と、活字にされた情報が結びつく。なんだかとても感慨深かった。

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