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2012年11月

2012.11.27

三匹のおっさん ふたたび

有川 浩 2012 文藝春秋

あの3人がもう一度。
有川作品の中でも平均年齢高めの主人公たち。
まだ、じいさんとは呼ばれたくない。
おっさんと呼ばれる方がいい。

地域限定の正義の味方は、次の3人だ。
剣道の先生をしていたキヨさん。
柔道をたしなむシゲさん。
電気機械担当のノリさん。
そこに、それぞれの子ども世代、孫世代が加わって、地域と家族の物語を織り成す。
その後の祐希と早苗の様子にも、もちろん注目。
スピンアウトの「好きだよと言えずに初恋は、」も収録されている。

「今時の若い者」vs「今時の高齢者」。
どっちが困ったちゃんかなんて一概には言えないけれど、どちらにも眉をひそめることはある。
報道されるものは、メディアのフィルターの偏った情報に過ぎないけれども、高齢者が犯罪を犯さないわけではないし、未成年者がいたいけな弱者とは限らない。

本人達にしてみれば、悪気のない行為かもしれない。
犯罪という意識がないかもしれない。
迷惑であることを気付かない鈍感さがなせるのかもしれない。
あるいは、他の人もしているから? 自分ぐらいがしても大丈夫だから?
万引きしかり。ゴミのポイ捨てしかり。未成年の喫煙も。
公共の乗り物の中でのマナーのような日常生活の中での行動習慣にも、どこかぎすぎすしたものになってきている。

3匹のおっさんたちが、昔の当り前がどっかに行ってしまったことに気付いて戸惑ったり、やりきれなく感じたり。
それでも、輪を閉じることではなく、開き、触れ合うことで、変わることを信じて。
これは大人にも、子どもにも読んでほしいなぁ。
そして、考えてほしい。少しだけでも、開く方法、ないだろうか。
私も、これ以上、ぎすぎすしていってほしくないもの。

2012.11.13

ダンナ様はFBI

田中ミエ 2012 幻冬舎文庫

世の中には思いがけない出会いというものがある。
まったく予測だにしない時に、場所で。
思い描くこともなかったかのような相手と。
そんな出会いの不思議を私はよく知っているけれども、著者の出会いはかなり特別だ。
だって、相手はFBIの捜査官。2度すれ違っただけなのに、電話がかかってくるところから、出会いが始まる。

ゆっくりと関係が築かれ、結婚し、日本で生活を始めた二人。
その日常が面白い。
国際結婚ならでは、というだけではなく、ダンナ様が元FBIの麻薬捜査官だからこそのあれこれ。
時代は80年代半ばから90年代にかけて。今とは少し社会情勢は違うけれども、日本はいつもアメリカの後を追いかけているので、今になってダンナ様の懸念が現実になってきている。
アメリカ型の犯罪が日本で増加するという予測は確かにあたっているし、これからも進むだろうと予想される。
変なところだけは古きよき日本像を盲信している日本人は、都合よく目をそむけて現実的な対策は後手に回るばかりである。
今だからこそ、こんな専門家の力があると、いいのにね。専門家の言葉に耳を傾けて損は無い。

私の現実に即して、かなり耳を傾けて損はないと思われたのが、数々のダンナ様の愛のムチ。
FBI直伝・家庭も仕事も楽しむ10の掟と、FBI直伝・自分の魅力をアップさせる10の掟は、働く女性は読んで損は無い。
実践できていない部分もあるが、人の見分け方であるとか、関わり方であるとか、今更コーチングで社内研修に使われるような事柄が、とっくに20年や30年以上前にFBIでは当然のようになされていたみたい。

無理難題をふっかけられて、不平不満たらたらになる気分、あるある。
でも、悔しいけど、言う通りにしたらレベルアップするのも、わかるわかる。
そして、予想外の発想の展開に目が点になるのも……。
著者の愛情溢れた、率直で軽快な文章の読みやすさもあって、いっぱい笑わせてもらった。

「頑固で、シャイで、お節介」というダンナ様にそっくりな人を知っており、しかも関東風の口調に訳してあることからどうしても重なってしまい、私はちょびっと切なくなった。
そうか。やつは昭和の男ではなく、田中ミエさんの表現を借りるなら「明治男」であったか。
それはそれで笑える。
勝手に親近感を持って読み勧めていたものだから、最後のミッションでは思わず涙した。
素敵なエッセイだった。

2012.11.10

世界は言葉でできている

「世界は言葉でできているBook Edition」製作委員会(編) 2012 日本実業出版社

本歌取り。
金田一秀穂の序言を読んで、なるほどと思った。
そう言われればそうだ。
元の歌を言い当てるよりも、それより巧みな、美しい表現を磨くほうが面白い。
その辺の機微を踏まえている人が生み出す言葉は、もとの言葉と似通っておらずともぐっとくることがあるし、本家を超える可能性も出てこよう。

テレビでは数えるぐらいしか見たことのない番組を書籍化したものであるが、こうして文字で並べると、改めて、言葉を生む人によって個性があって面白かった。
言語は思考であり、言葉は哲学である。
言葉にはおのずとみずからが反映されてしまう。
ものごとに対する価値観であると、人生に対する姿勢であるとか、日々の生活であるとか、恥ずかしいものまでもにじみ出てしまうことがある。
同じ言葉をもとにして自分なりの表現を考えるという、いわば定点観測のような作業を減ると、お互いの個性がどうしても際立ちやすくなる。
そこがまた妙である。

恋を得たことのない人は不幸である。
それにもまして、恋を失ったことのない人はもっと不幸である。
瀬戸内寂聴(p.84)

瀬戸内寂聴の名言を読んで、あれ?と思った。
そう言えば、似たような言葉を私は贈ってもらったことがある。
今年の夏、見ず知らずの人からであったが。
バイロンのような古来の有名人から当代当世の人の言葉まで、いろいろな人の言葉がここには集められている。
もとの言葉のセレクトもいいんだろうなぁ。

いつでも愛はどちらかの方が深く、切ない。岡本太郎(p.228)

こんな名言に、どんな言葉が挑戦したか。挑戦していっているか。
それは、番組もしくは本著をご覧くださいってことで。

2012.11.09

霊性の文学 言霊の力

鎌田東二 2010 角川ソフィア文庫

言葉には力がある。
言葉は時に非力であるが、力がある。
日々に使う言葉はすべて、呪文であり、魔法を持つ。
それが文学として形をなしたとき、どんな力を持ちうるのか。

流れるようなすべらかな現代語で紡ぎなおした『超訳 古事記』の著者が、どんな言葉をほかにも紡いでいるのかを知りたくて購入。
ネット買いだったので、手元に届いてから目次を見たのであるが、そこで取り上げられている人物は幅広く、見ようによっては雑多に感じるかもしれない。ある時代を背負っている人々。
宮沢賢治、折口信夫、三島由紀夫、中上健次、高橋和巳、ドストエフスキー、ニーチェ、バタイユ、ロートレアモン、寺山修二、美輪明宏、宮内勝典、山尾三省、出口王仁三郎。
私にとってはなじみのある人もいれば、なじみのない人もいる。というか、なじみのない人のほうが多い。

本書の中でとりわけ印象深かったところといえば、美輪明宏による信仰と宗教の違いの指摘である。
そこを踏まえたうえで、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』でジョヴァンニがキリスト教者との会話で戸惑う場面を読む。
宗教は対立するが、しかし、対立するのではない道があるのではないか。

文学を紐解きながら、底に流れる霊性を掬い出しつつ、信仰とはなにか、宗教とはなにか、神とはなにかを問うていく。
それは聖なる高みばかりではない。なにかしらの越境や断絶、解体あるいは混沌を含みうる、ほの暗い深みを覗き込むような作業だ。
かといって、小難しいわけではなく、むしろ読みやすい。引き込まれるように読み、ここから読んでみたい本が更に増えもした。

呪われているということ。それは不可抗力的に悪に直面せざるをえない魂と運命をもっているということにほかならない。言い換えると、人類文化の“闇”を視る“眼”をもって生まれたということである。その呪われた者だけが、呪いの渦中に自らを投げ出すことによって、「至高性」に到達することができる。(p.140)

思考は言葉を媒介にして成立するので、動画ばかりでは思考は鍛えられないんだよね。
上質な表現としての動画の存在を否定しないが、具象にばかり偏っては、ますます感覚優位になり、不安耐性が低く、衝動の制御が難しくなることだろう。反省的思考も抽象的思考も低下して、現実検討が働かず、被暗示性や高くなることだろう。
白か黒かとスプリッティングしやすい認知では、世界の深みを覗き込むことは決してできない。覗き込んでなお引きずり込まれずに耐えることができない。
深みから高みへと飛翔する力であり、毒にもなり薬にもなる文学の力を、私は信じていたいと思う。祈っていたいと思う。

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