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2012年9月

2012.09.10

残穢

小野不由美 2012 新潮社

穢れは、いつ、どうやって消えるものなのだろうか。
怪談に二つあるという。
「怪について語った話」と「怪しい話」。
後者は、語ることが怪になる。だから、封印される。
この本についても、詳しくは話さないほうがいいのかもしれない。

というわけで、怖かったーっ。
作者の空白の9年間を埋めるような物語運び。
しかも、そこに実在の人物が出てくる。現実の地名が出てくる。既知の作品が出てくる。
しかも、身近に出てくる。
さもありそうな舞台仕掛けである上に、小野さんならではの、夜中にトイレに行くのが怖くなるような、きわめて身近なところでじっとりとまとわりつくような、ぞぞっと背筋をかけのぼってくるような、寒気のような怖さ。
怖くて、途中で休みつつ、でも、途中でやめることはできなかった。
どこに着陸するのか、知りたいじゃん。

1つの怪について語った話から出発する。
その怪はどこから始まったのか、さかのぼってたどっていく。
そのプロセスで、今世紀から90年代、高度成長期、戦後、戦前、明治大正期の時代の風土が語られていく。
ある時期から大きく報道された事件の数々は、私も記憶にしっかりとある。
作者が織り成す怪異の様相も、どこかで聞いた事件を彷彿とするようなものだ。

作者は、事件について調べている。数々の事件を、どう捉えるべきか、考えているような気がした。
天津罪と国津罪とを、どう捉え、どう裁くのかを考えてきたような気がした。
共同体社会に脅威をもたらす罪は、「穢れを生じ、穢れを除去するために祭祀を行う必要があった」(p.236)。
人の外部に付着した穢れというシステム。時間が経過したり、一定の手続きを踏めばリセットされるシステムになっている。しかし、手続きを守らなければ、伝染し、拡大する(が、希薄化もする)システム。
そのシステム自体が、近代化と共に希薄化し、継承されていないことへの警鐘を含む物語だ。
システムは壊れていっている。しかし、穢れはまだそこに。

蛇足であるが、作者は、事件について調べ、考えている。そう思ったのは、十二国記の「落照の獄」を読んだ時のことだ。
十二国記でも、天津罪を裁かなくてはならない。システムがエラーを犯すとき、システムの内からそのエラーをどう糾すのか。そのエラーの指摘によって、システム事態が間違いであったことを証明したとき、世界はどうなるのか。
『残穢』の中で、「世界のフレームを問い質す」という表現が出てくる。

どう世界を捉えるのか、という問題にすべては還元されてしまう。(p.333)

作者の思索の続きが、十二国記で味わえることを願っている。

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