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香桑の近況

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2012年7月

2012.07.31

魔法の代償(上・下):最後の魔法使者3

マーセデス・ラッキー 細美瑤子(訳) 2012 創元推理文庫

最後の魔法使者であるヴァニエル・アシュケヴロンを描く三部作の最終巻。
ヴァニエルもついに40代。ヴァルデマールの重鎮として、たった4人しかいない魔法使者として、相変わらず、心身も磨り減るような毎日を過ごしている。
40代になっても少女のような美貌を持ち、潔癖で貞淑な乙女のように孤高を保つ。その心性まで、外見と同じように、若々しいというか初々しいというか、思春期のままのような。
そのヴァニエルが、再び、運命と出会う。大詩人のステフェンとの出会いだ。
そして、ようやく、ヴァニエルの心の奥底のむき出しの傷が癒される時がくる。

ヴァニエルの悪夢が物語の行く末を指し示している。
下巻を読み進むに連れて、結末が気になって気になって、でも悲劇は嫌で、先のページをめくってみては、うわっと思ったり、えーっと思ったり。
英雄になんてならなくていいのに。ずっとずっと愛を育んでいけるような世界だったらよかったのに。
いくら厳しい時代を担っていた伝説の人物とはいえ、ここまでひどい目にあわなくてもいいなじゃないだろうか。
ラッキーの描く人物の中で、ぶっちぎりトップのハードラックな主人公だと思う。
死んでからしか、くつろいで笑顔になることができないなんて。
その後、数百年、悲しみの森でいちゃついたり、いたずらしたりしていていいよ。
もともとヴァニエルにはシンパシーを感じていたが、不意打ちのように、その台詞が表れた。

「たったひとつの過ちのために一生苦しむことにどんな意味があるんだ?」(上p.255)

不意打ち過ぎて涙が出た。
でも。
でも、私は彼を忘れたくないのだ。彼はもっと孤独になるから早く過去にしろと言ったが、しがみついて何が悪い。私が、今も好きなのに。
自分と重ね合わせずにいられない。もしくは、恋人に重ね合わさずにいられない。
このような時が再び来るだろうか。それとも、あの時が再び来た機会だったのだろうか。
彼にもいつか幸せを感じてもらいたい。心を開いて、安らいで、穏やかな時を迎えてくれたらいいのにと祈る。
私自身は、私の心が揺れ動くことがあったら、その時に考えようと思う。

「一度幸せだったからというだけで、せっかくの幸せになる機会を逃しちゃいけない!」(上p.255)

2012.07.23

追放者の矜持(上・下):ヴァルデマールの絆

マーセデス・ラッキー 澤田澄江(訳) 2012 中央公論新社

〈使者〉アルベリッヒ。
カース出身の武術指南役の若き日の物語が登場だ。
セレネイがまだ世継ぎの王女であった頃からテドレル戦争まで。
ヴァルデマールにとっての大きな試練だった日々。

苦みばしった感じの、嫌われ者であっても動じない、厳しいが信頼のおけるおっさんという、おっさん好きにはたまならないアルベリッヒ。
おっさんになってからのアルベリッヒも大好きだが、若き日のアルベリッヒの堅物ぶりも大好物。
まさか、彼が主人公の物語を読めるとは思わなかった。

内表紙をめくると、この本は9.11のテロで亡くなった消防士に捧げられており、使命の前では命を投げ打ってでも役割を果たそうとする使者たちの姿に重なる。
と同時に、自爆テロをした人たちも、ある面では、使命の前に命を投げ打ってでも役割を果たそうとした人たちである(巻き込まれる被害者にとっては限りなく傍迷惑だが)。
そのように両面からものごとを見るとき、人はジレンマを感じる。そんなことができるのは、アルベリッヒに他ならない。

ヴァルデマールと当時敵対していたはずのカースの軍人が、ヴァルデマールの使者となる。
そこでは、信義や忠誠、名誉やアイデンティティといった価値観の問題が大きな主題となってくる。
敵国で信頼を得る市民になりうるのか、どちらの国を、民を、裏切ることなく、名誉を保ちうるのか。
アルベリッヒの悩みは、多民族国家アメリカの中で9.11後に暮らしてきたイスラム系の人たちの悩み、第二次世界大戦中の日系人の悩みに通底しているのだ。
正義とは何か。
アルベリッヒの悩みと答えの中に、作者自身のためらいと理想を感じた。

これまであまりカースの文化が語られたことはなかったが、言語の違いなどを見ていると、アジアっぽいイメージなのかな。
すると、黒髪で、凄腕の剣の使い手で、名誉や恩義を重んじているアルベリッヒは、著者にとってはサムライっぽい感じなのかなぁ。
そんなことを思いながら読んでいたら、アルベリッヒのヴィジュアルがFFⅤのカイエンに重なった。
やっぱり、好きだなぁ。

誰よりも誇り高く、名誉を重んじ、義や徳を身に着けた人。
そんな人を知っている。とても大好きな人が、そんな人だった。
大きな喪失の傷を抱えて、すっかりやさぐれいている感じまで似ている。
私には、その喪失を埋めることも、癒すこともできなかった。
私は彼の盾の友になりたかった。むしろ、〈共に歩むもの〉になりたかった。
無条件の愛と信頼を注ぎ、その空虚を満たしたかった。
彼がもう大丈夫だと安心できるように、支えと癒しを与えるものになりたかった。
でも、私はただの人。物語の人物のようになれるわけでもなく、ましてや人ではないものには。

2012.07.16

ビブリア古書堂の事件手帖3:栞子さんと消えない絆

三上 延 2012 メディアワークス文庫

北鎌倉の古書店を舞台に、本の虫で人見知りの店主と、その店主に淡く恋する本を読めない体質の主人公が、謎解きをしていくシリーズも3冊目。
恋愛要素はじれったさ満点でなにも進展しそうにない点で、非常に気楽に読めた。
この巻は、どちらかといえば、栞子さんとその母親の関係が主軸であり、少しずつ母親の像が見えてくる。

コバルト文庫、絵本、宮澤賢治。いくつかの本を経ながら、ゆっくりと進む時間。
『春と修羅』、作者はどのヴァージョンを読み継がれるのが嬉しいのかなぁ。
しのぶさんとまさくんのカップルが好き。この二人は、いっぱい幸せであってほしいの。
一番大きな謎は、やはり、篠川智恵子とは、どういう人物であったのか、ということだろう。
その謎は、次巻以降に持ち越されるが、栞子の母子葛藤は根深そうである。

さてさて、次回は智恵子さんが登場するのかな?
この物語、もうしばらく続きそう。

2012.07.10

左京区七夕通東入ル

瀧羽麻子 2012 小学館文庫

七夕にあわせて読んでいたつもりが、すっかり遅くなってしまった。
職場で回ってきた恋愛小説。
京都で暮らす大学生達の恋愛が可愛らしく、ハッピーに描かれており、通常ならば楽しんで読みそうな本だ。
でも、今の私には、なんか痛い。とすっと刺さったり、ぐさっと刺さったり、痛いんですけどー。
貸してくれた人にぶちぶち文句を言いながらやさぐれてしまった。なので時間がかかっちゃった。と、先に言い訳。

主人公の花。その花が好きになったたっくん。たっくんは数学に魅了されている。
たっくんとその友達が住む京都大学の寮は、映画『鴨川ホルモー』の撮影に使われている。
とても有名な寮で、小説の中でもよく見かける。たとえば、絲山秋子『エスケイプ/アブセント』にも出てきた。
ましてや、京都大学の学祭となれば、噂に名高いわけで。その炬燵って、森見登美彦『夜は短し、歩けよ乙女』にも出てくる韋駄天炬燵では……。
そんな景色、舞台は、京都で育った人、京都で学生時代を送った人、なにはともあれ、京都が好きな人にぐっとくるだろう。

登場人物たちは揃いも揃って、人がいい。
ちょっと不器用で、素直。一生懸命で、悪意がない。
困ったり、迷ったり、でも、好きな人にはまっすぐに。
寝食も忘れて仕事に打ち込む私は、花より、たっくんに近いんだよなぁ。
私が恋人に疎外感や心配を与えた面を思うと、反省。
心の中でごめんねってつぶやいた。

私は学生時代に運命の人に出会ったりはしなかったが、思い出して楽しいのは京都で過ごした数年間だ。
思い切り阿呆をしても許される不思議空間で蓄えた力は、今もどこかで私を支えてくれているような気がする。
あー、懐かしかった。町も、その時も。

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