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2012.06.10

彩雲国秘抄:骸骨を乞う

雪乃紗衣 2012 角川書店

一人ずつ去っていく。
中年期以降の人生の課題である。
見送ること。置いて行かれること。
老いていくことは置いていくことになる。
最後に自分自身もまた逝くからだ。

彩雲国物語を読んだ人にしか、お勧めしづらい。
しかし、彩雲国物語をハッピーエンドのまま、「いつまでもいつまでも幸せに暮らしました」と胸の宝箱にしまっておきたい人には勧めない。
ここの描かれるその後の日々は、何かを得る日々ではなく、何かを失う日々であるからだ。

悠舜、旺季、晏樹を追いながら、これまで失うことの多かった人たちの人生が語られる。
どの話も切ない。本編において、敵役であり、最後に負けた旺季はどのような人物だったのか。
最後の大貴族。本編でも魅力的で存在感のあった旺季を中心に改めて描くことで、戩華王との争乱の時代とその死も語られていく。
この三人は、秀麗や劉輝と異なり、戦争の経験を背負っている。死を背負っている。自らが殺してきた多くの命を。
骸骨を踏みにじりながら生きてきた。その自分が骸骨を乞う時が来る。

そして、劉輝。
大事なものを失いながら、心を穴だらけにしながら、引きずるように生きてきた王。
すり減って脆くなった王の心を癒しながら、潤しながら、豊かに満たしていく秀麗との愛情に満ちた日々。
こんな風に愛し合えればどんなに素敵なことだろう。途中から涙が出てしょうがなかった。
美しくて悲しい、輝きの日々。いつまでも輝き続ける日々。心を満たし続ける輝き。

紫仙や黒仙は何を思ったのか、明瞭には語られない。
しかし、まさか、藁人形だけが残ったりしたら、黒髪の軍師も不本意だと思うけどなぁ。

最後に、それまでの気分を入れ替えるように、悪夢の国試組の国試の時の物語が添えられている。
鄭悠舜、紅黎深、黄鳳珠、菅飛翔、来俊臣、姜文仲、そして、劉志美。
本編で決して登場回数が多かったとは言えない人物もいるが、誰もがかなり個性的で印象的。
いや~、やっぱり鳳珠が好き。この顔触れの中ではまともな方なんだけど、ちょっと変わり者で好きだなぁ。
お気に入りキャラとこの本の中で出会えた人はラッキーということで。

志美を通じて改めて、戦後を生きることの難しさが語られる。
阪神淡路大震災で人口に膾炙され、東日本大震災でも話題になったPTSDというものがある。
この異常な事態に対する自然な反応としての心身の症状は、もともと第一次世界大戦や第二次世界大戦、ヴェトナム戦争といった戦争帰還兵に特有の問題行動や症状から、研究が始まった。
その意味において、この本で描かれる喪失を抱えながら生きていくという課題は、東日本大震災を経て、多く共有されうるものであると言える。
と同時に、シリアのニュースを見たり、スーダンやソマリア、内乱や戦闘が続く土地はまだまだ多い。その世界で、この物語は繰り返され続けている。現在進行形で。
だからこそ、今現在は戦闘状態にはないこの国で、戦争をおそらくは体験としては知らないであろう世代に読まれる意義が、きっとあるのだと思う。
泣きながら、そんなことを思った。

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コメント

たしかに「ハッピーエンド」で終わらせておきたい人にはお勧めできない1冊だね^^;
本編からは想像できないような表紙だったから、ある程度の覚悟はして読んだけど、それでもかなりずんずんときた作品でした。
個人的には、秀麗の晩年である劉輝との日々が語られたのが嬉しかった。かなり泣けたけどね;;;

すずなちゃん、ども。
本編ではお子様だった劉輝たちが大人になるためには、こんなステップが必要だったんだろうけど、泣けました~。目がはれるぐらい号泣して、もうとまらなかったです。
秀麗、自分の子どもを育てたかっただろうなぁ。長生き、したかっただろうなぁ。

スピンオフとして予想外の内容でしたが、読み応え十分であり、大人の醍醐味を味わいました。
あともう一冊。できれば、最初の一冊目の読み心地も味わいたいものですね。

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