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2012.03.05

失われた町

三崎亜記 2009 集英社文庫

別れはいつも突然で、予期していないときに襲ってくる。また一つ、訃報に泣く。
失ったことを悲しんではならないなんて、それがどれほど難しいことか、胸がつかえる思いでこの本を読んだ。
別れはいつも理不尽で、いつくるかわからないもの。それがわかっているから、だから、会える間に、大事な人に会いたくなる。
今すぐ、押しかけて行きたくなった。怒られるだろうなぁ……。

思い出だけをよすがに、ここから先、どれだけ私は耐えられるのだろう。
泣ける間は、まだそれだけ、思い出が生々しく残っているということ。
色あせること、風化すること、忘れてしまうことを私は恐れる。
しかし、思い出だけを抱えて、30年が経ったら。
思い出の中の彼だけが若いのか。それでも忘れてしまうより、ずっといい。
最初の数ページから泣いた。どのエピソードにも泣かされっぱなしだった。
なんだか顔がむくんでいる気がするのは、気の所為じゃないと思う。

『となり町戦争』と同じように、まるで現実のこの世界のどこかで起きているような小説。
よく読んでいけば、舞台は現実世界とは少し違う要素があることがわかってくる。
どこかにありそうな地名、どこにでもいそうな人名が錯覚させるが、これは一種のファンタジー世界だ。
聞き慣れないお茶の名前、風変わりな印象の音楽、どこか戦争の気配がする社会情勢。
そこでは、およそ30年ごとに町が消えるという不思議な現象がある。
その現象に巻き込まれ、大切な人を失いながら、被害を食い止めようとする人々がいる。

7つのエピソードは、主人公を変えながら、立場を変えながら町が失われるということを描きだす。
いくつもの出会い、さまざまな関係が、入り混じりながら、失う痛みは癒されることがなくとも、未来への希望を紡いでいく。
いつか失われるからこそ、それはとても理不尽なものだからこそ、「今」が愛おしい。
年齢が近いせいか、桂子さんに一番思い入れした。共に過ごした時間は短くとも、愛された記憶に満たされて、たたずまいを変えた彼女のように生きていきたいと思う。

あれから一年を否応なく思い出させるテレビの番組宣伝。
この一年間、一体、いくつの町が消えたのだろう。この地球の上で。
ダムの下に消える街。過疎が進んで消えていく町。市町村の統廃合で消えていった地名。
爆撃をされた町。地震におそわれた町。津波に飲み込まれた町。
そんな失われた町を思いながら読んだ。
残された人たちはどのようにしてこの先を生きていくのだろう。

人には決して癒されえぬ悲しみや苦しみがあることを知る音だった。それらを抱えたまま、それでも進んでいかなければならないという貫くような意志と想いが託されていた。(p.516)

本を読みながらなら、泣いていいよね?
本を読んでいるから泣いているだけだもの。
「思い出を、ありがとう」(p.259)と私も伝えられたらいいのに。
もう一度、会いたいなぁ。亡くなった人にも、もう一度会いたかったなぁ。

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コメント

こちらの記事を読みながら、「あれから一年」の番宣が流れる今、この作品を読み返したら、また違った思いを抱くのかな、と思った。きっと、もっと泣いちゃうんだろうなぁってのは分かるんだけど。

すずなちゃん、どもです。いつも以上に暗くなっています。
自分のクライエントが一年近く前に亡くなっていたことを昨日知り、なんか余計にずしーんときています。それで、記事も少し書き換えてしまいました。

自分が死んでも悲しむ人なんか一人もいないと自嘲する人でしたが、私はやっぱり悲しいんですよね。
他人の私でさえ悲しい。この悲しみを封じられるものなのか。悲しんではならないという、物語世界のルール自体が悲しくて、やりきれなかったです。

香桑さん、こんばんは(^^)。
美しい物語、不思議な世界観、とても魅力的な作品でしたね!
ただ・・・難しかった!三崎さんの設定ノートが見たいです、ホント。
三崎さんの作品の世界は、私たちが生きている世界とはちょっとした理屈がちょっとだけ違って、それが切ないですね。

水無月・Rさん、こんばんは☆
切なくて、切なくて、本当によく泣きました(^^;;;
難しいところは、ノリでスルー。笑
三崎さんは、「どこかにありそうなんだけど、ない」「どこにもないはずなのに、なんかありそう」というきわどいラインで世界設定をするのが上手な作者さんだと思います。
現実世界の話かと思えばファンタジーで、だけど現実にありそうだから、もしも本当にあったらかなり怖い。
そういう、ふと、現実に立ち止まって、これでいいの?と投げかけるのが上手な人だなぁ、と思うのです。
別れが理不尽で突然で避けようがないことは、現実なんですよね。

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» 失われた町(三崎亜記) [Bookworm]
SFというよりも、私的には恋愛小説という感じかなぁ。切なさに何度、心臓をぎゅぅぅぅっと鷲掴みにされたことか・・・。読み終わって、すぐに最初の章を読み直す。読み直させるというか、読み直すしかないって方が正しいけど(笑)すると、色んなことがすーっと腑に落ちる・・・というか。あーこういうことか!という感じで。上手いなぁ。思わず唸る。... [続きを読む]

» 『失われた町』/三崎亜記 ○ [蒼のほとりで書に溺れ。]
三十年に1度、1つの町から人が全て消失する。そこで生活していた人々は、自分達が失われることを知りつつ、「町」の影響下にあるため、助けを求めることも、阻止することも出来ない。そうやって、消滅は繰り返されてきた。失われた人々を惜しみ嘆くことは、「余滅」を引き起こすとして、忌避されている。 そんな「町」と対抗する組織「消滅管理局」。「町」は意思を持って、人々を引き込もうとする。... [続きを読む]

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