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2012.03.14

どうせ、あちらへは手ぶらで行く

城山三郎 2012 新潮文庫

『そうか、もう君はいないのか』を読み、続けて、城山氏の人となりに触れてみたいと思って、本書を買ってみた。
内容的にも、作家が書いていた日記のようなメモのうち、最後の9年間のものになる。
元気な妻と過ごした最後の一年間から、作家自身が死ぬまでの経過をたどることができる。
その点でも、この二冊はあわせて読む価値がある。

解説で真山仁氏が、「私たちには、『読まれることを想定して綴る言葉』と『自らの心の叫びや戒めとして刻んだ言葉』がある」(p.187)と書いている。
作家が人に読まれることを想定せずに書いた言葉は、妻を亡くした悲しみ、日々老いていくことへの不安に満ちている。
その中で、折れそうな自分を叱咤するように「楽しく、楽に」と自らに言い聞かせる。
娘や孫と過ごす時間を一番の幸せに感じつつ、仕事をうまくこなせなくなっていくもどかしさや嫌気。
物忘れが増えて、一人では立ち行かなくなりつつあると、途方に暮れる男性。

かんじんのお前が居ない。(p.88)

妻の夢を見ることの幸せと、目覚めた後の身を切られるような寂しさ。
時間が経っても、ふと、涙がこみあげてくる日があったことが伺える。
愛する伴侶をなくした人の心の記憶として、人が老いていくプロセスとして、この日記は災害で家族を失った人にも届く思いもあるのではないか。
それにしても、お酒の飲みすぎ。心配になるじゃないですか。酔いが醒めると眠気も覚めるのだから、眠れない人が痛飲しちゃだめーっ。痛々しくて居たたまれない。

最後の最後に、日記は1951年に戻る。
心憎い。やられたーっと思った。
瑞々しく、美しい出会いの記録だ。

次女の手による本書出版の経緯に、また泣かされた。
確かに、自分の両親の手紙や手帳、PCや携帯の中のメールなど、捨てるに捨てがたいが、見るに見がたいことだろう。
それに触れるまでには、子として親の喪のワークを勧めなくてはならなかったであろうが、しかし、私は、『そうか、もう君はいないのか』と『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』の二冊は、広く愛される本ではないかと思い、読めてよかったと思った。
含蓄のある言葉も多く、引用しておきたくなる。学ぶことの多い、人生観だ。
タイトルの元になった「歩け 歩け」の詩は、老い行く両親に読ませたいと思った。ほら、こんなもんだよって。ほかの人だって。

『読まれることを想定して綴る言葉』は仕事で使う言葉である。これは残ることは仕方がない。
このブログに書く文章は、私にとっては『自らの心の叫びや戒めとして刻んだ言葉』の率が高い。
名を隠し、顔を隠すことによってしか、私は叫ぶことができないから。
一番、聞いてほしい人をわずらわせてはいけないから、ここにあそこに叫ぶ。

さて、次は何を読もうか。
この本と一緒に『指揮官たちの特攻』を買って帰ったのであるが、案の定、私が読む前に父に取られてしまった。
山之口洋の『瑠璃の翼』も父が持っていって、「あなたは読まなくていい本だから」と言われ、そのまま父のものとなったので、同じ運命になるかもしれない。
代わりに、父が同じ城山氏の『役員室午後三時』ほか数冊を貸してくれたのであるが、どれも分厚い。
うーん。

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コメント

私も、そうか、もう君はいないのか。は読みましたが、亡き妻に向けた内容というのが、読んでいて胸が熱くなりました。

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