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2012.03.01

裁きの門

マーセデス・ラッキー 1996 創元推理文庫

愛は自由でなければ生きられぬ。

この言葉が深く印象に残ったのは、実はこの2冊目のほうだ。
高らかに歌い上げるように、この台詞はとても大切な場面で使われている。
タルマはケスリーを救うためになに一つ惜しまないが、私は守るべきものを間違えた。
それが今ならわかる。わかるから悔やまれる。くりかえし、発作のように号泣する。

素晴らしい本に出会うと、睡眠も食事も仕事も手につかなくなる。それは、何度目か数えられないほどの再読である今回も同じだ。
『女神の誓い』が短編や中編を集めていたのに対し、タルマとケスリーを主人公とする2冊目はがっつりと長編。
この本が、ラッキーが私の中のNo.1であることを不動にした。
魔法があり、精霊がおり、架空の世界で展開しているはずなのに、主人公たちが目の前で息づくような現実感に引き込まれた。
物語の筋が面白いだけではない。がっちりと骨太で力強く、なにごとも綺麗事では済まさない世界観に魅了された。

タルマとケスリーは、傭兵隊に所属するようになる。その傭兵隊の戦争場面から物語は始まる。
ずぶ濡れ、どろまみれの主人公達の戦いは、きらびやかでもなければ晴れ晴れしくもない。
さすが軍隊がある国の人が書いただけあると思うのだ。
自分の想像力の限界では、傭兵といえば自由契約の戦士ぐらい。物語やゲームで見かけるのは、そういう個人と個人の戦闘が多い気がする。
斥候のやり方、戦闘の合間の待機、戦闘のない季節の本拠地の様子や過ごし方、舞台の運営や訓練、そういった部分まで想像を広げて、説得力をもって語る小説を、私はほかに読んだことがなかった。
そして、魔法の使い方は、その後、私が今の仕事を始めた時に大きな参考になったのだ。イメージの使い方は、今も力の引き出し方のヒントとして役立っている。

ケスリーとジャドレックのロマンスも目が離せなかった。
前巻の感想にも書いたが、私が自分を投影させるとしたらケスリーのほうであったから、自然にジャドレックは理想的な恋人像となった。
若くも、ハンサムでもないかみしれないが、知性と教養があり、傷つけられた痛みを知っている人。
パートナーに対等な敬意を払い、意見が異なるときも聞いてくれ、その上で話し合える人。
本当は、朗らかな笑顔が似合う人。
そして、タルマのように、ケスリーのように、倫理的にすぐれている。周囲から敬意を払われるに値する賢者。
好みって基本、変わらないものかなぁ。

自分に似ていると思うのがケスリーならば、自分には難しい生き方だからこそ憧れるのがタルマだった。
今回、読み直してみたら、恋人がタルマっぽいことに気付いた。彼の考え方とか生き方の姿勢が、なんとなくタルマに似ている。
自分に厳しく、身内と子どもに愛情深く、筋が通って揺るがない。思考は現実的で、判断力も行動力もあり、鍛錬を怠らない。知的で冷静、恐ろしく記憶力もいい。
そういう生活や性格の面では難しいとしても、こんな指導者にでありたいと思いながら、お手本にしてきた部分はある。自分も少し大人になれただろうか。
恋人の頭を殴ってさらってくる不作法で野蛮な傭兵流のやり方できないかな?なんて考えているあたりは、大人になりきれないけど。

この先も、きっと何度も読み直すだろう。私の古い親友のような本だから。

何かを得るためには、ときとしてよろこんでそれを手放さなければならない。愛は自由に生きねばならぬのだよ、ジェル=エネイドゥラ。愛はつねに自由に生きねばならないのだ。(p.281)

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