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2012.02.21

ふがいない僕は空を見た

窪 美澄 2010 新潮社

大声をあげて泣き出したい。
主人公たちと一緒に泣き出したくなった。
泣かないと、心の中の水位を下げてしまわないと、これ以上、涙を溜めていられない。
手を噛んで、嗚咽を殺す。残った歯形を見て、自分の歯並びが不揃いだと思う。
どうしよう。恋人に会いたくなる。忘れられるわけがない。忘れたふりをしなくちゃいけないのに。
大声をあげて泣いてしまいたい。

5つの連作短編集。主人公が入れ替わっていくことで、それぞれの立場からの切なさがこみあげてくる。
恋は一人では成り立たない。しかし、「ミクマリ」と「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」の対で終わらないところが、いい。
「ミクマリ」の初々しさや瑞々しさを感じる少年と関係を持っていたあんずの「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」の救われなさ。芥川の蜘蛛の糸とは違い、その糸は地獄からの救いではなく、雁字搦めに現世に縛り付ける糸だ。
あんずはいい。自分の行為で自分だけが嘲笑われるならいい。覚悟の上に引き受けることだ。そのとき、なぜ、斉藤までも巻き込まなくてはならないか。そうやって繋ぎとめておきたくなる気持ちもわかるが、それはしてはならないと思う。
「2035年のオーガズム」を読んで、やっぱりと惨憺たる気分になった。自分の妻を繋ぎとめられないからって、よその男の子を貶めるなよ、と、あんずの夫に腹が立つ。主題は、斉藤の恋人になりかかっていた少女の家族の再生の物語なんだけど。
「セイタカアワダチソウの空」は、性のことは横に置き、斉藤の友人であるはずの福田のなんとも苦々しい日々を描く。貧困の皺寄せは、いつも子ども達に来る。こんな生活をしている子達を、こんな思いをしている子達を知っている。福田のラストの気持ちを応援したくてたまらない。
そして、「花粉・受粉」。斉藤の母を主人公にした、いい作品だ。仕事に逃げ込みながらも一生懸命に生きてきた感じが、好き。なんだけれども、その感想の前に、あんず夫ーーーっ!!と怒りのほうが大きかった。あーもー、こういう男、大っ嫌い。
自然って。人の思いとおりにならないものなんだけどな、とつぶやく。
だから、神さまって祈りたくなるんだ。

「女による女のためのR-18文学賞」の受賞作は、なんでこんなにざらざらとするんだろう。
去年の「偶然の息子」も、ざらざらしていた。母性と言い切ると語弊が生じるが、性行為だけを純粋に楽しむだけでは、なにかを描き損ねてしまうのだ。
このざらつきは、川上未映子『乳と卵』とか、三浦しをんや山田詠美にも垣間見られるわけで。
男性向けのエロやBLでは、こういう卵を抱える苦さは描かれないところが非対称だと思う。同性愛の場合もどちらかと言えば薄い。
性は生であることをしっかりと見据えている男性もいるが、そのあたりの温度差というか、こだわりが面白いな、と思った。

幸福の絶頂。もろくて儚い絶頂だ。
何度も何度も味わい続ける人もいるだろう。
失って二度と味わえぬ人もいる。もとから味わうことのない人もいる。
そういえば、「一緒にイキタイ」というのはダブルミーニングだと思ったことを思い出す。
「一緒に生きたい」と祈るように口にした。彼の腕の中で、幸福なまま、一緒に生きたいと祈っていた。

子どものために祈る。
私が産みたかった子どものために。私が産めなかった子どものために。かつて子どもだった人のために。
今、私が関わっている子ども達のために。これから関わりゆく子ども達のために。
子どもを育てたいなぁ。自分の収入が安定しないのでなかなか踏み切れなかったが、私が子どもを持つ方法がある。特定の子どもを支援する。私だけの子ども、じゃないけれど。私と彼の子どもでもないけれど。
私は誰かのために、じゃないと、がんばれないのだ。がんばれるけど、力半分になってしまうから。

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コメント

あぁ、私も「あんず夫ーーーっ!!」と叫びながら読んだことを思い出した。本当に嫌な男だったね。
最初は引いちゃって恐る恐るって感じで読み進めたけど(笑)、最後は思わずジーンとして涙した作品でした。

すずなちゃん、ちは。
ひいちゃわなかった。がっつりいった。笑
書き出しは軽い感じだったのに、こんなに深いところで気持ちを揺さぶられるとは思わなかったです。

あんず夫は父親になれなかったほうに一票投じたいと思います。ぷんすか。

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第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞作である「ミクマリ」を最初の章にした、連作短編集のような作品。 [続きを読む]

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