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2012.01.05

心の傷を癒すということ:大災害精神医療の臨床報告

【増補改訂版】 安 克昌 2011 作品社

阪神・淡路大震災の直後から書かれた、神戸で被災しつつ医療に携わった精神科医の臨床報告である。
東日本大地震の時に勧められたが絶版になっていた。その後、増補改定版が出版され、私も入手できた。
この本は著者が生前に書いた、たった一冊の本であり、遺稿が増補されてこの版になった。増補分の量、全体の5分の2程度。

被災地の内部から、当事者が発信した記録として、生々しさがあった。
95年1月末から約一年間新聞に連載したものをもとに、加筆したものが本稿の前半部分になっている。
文章はとてもわかりやすく、説明は丁寧で、精神科の臨床に携わる専門家でない人にとっても読みやすく、参考になる本だと思う。
事例も多い。思わず、泣いた文章もあった。私が他の方から聞いた体験談も想起する。被災していなくても、東日本の記憶は真新しい。
これは事例のほんの一部だとわかっていても、やはり、重たい。この重たさはまぎらわすものではない。

PTSDが人口に膾炙したのは、阪神・淡路大震災からだった。
その当時の事情を私は後から学んだわけであるが、およそ17年の時の流れを感じないほど、ここには既にいろんなことが語られていると驚いた。変な言い方しかできないけど、驚いた。
語られているトピックが、災害直後の躁的な防衛状態、看護師や消防士ら支援者の支援、死別体験と家族関係の問題、コミュニティの再生の意味に至るまで、幅広いのだ。
社会全体を見渡すような視野の広さって、この人のバランス感覚ならではなんだろうな、と思う。自分がつらいときって視野が狭くなりがちな気がするけれど、こんな風に広く保てるってすごい。
本論のしめくくりに、著者は「世界は心的外傷に満ちている」(p.259)と書くが、本当にその通りだと思うので、この本はプライマリに読まれる教科書のように、常に書架や書棚に並んでいてほしいなと思った。

増補の前半部分には、学校関係者に配った資料や災害後のためのメンタルチェックリストに始まり、その後に発表された原稿が集められている。どの文章もわかりやすいのは、説明の順番にもよるのかも。
後半部分には、中井久夫による告別式での追悼の辞や、鷲田清一の書評、関わりがあった人たちの寄せる文章から成る。著者の人となりがうかがえると同時も、そこをも含めて、最初から最後までなにかを喪失する体験を追いかけるような本になっている。

一般に、心の傷になることはすぐには語らない。誰しも自分の心の傷を、無神経な人にいじくられたくはない。心の傷にまつわる話題は、安全な環境で安全な相手にだけ、少しずつ語られるのである。(p.74)

私にはどうにも消化できない記憶がある。なにか起きるたびに、過去になりきっていないことを思い知らされる記憶がある。
だから、トラウマケアの領域に惹かれるのだと思う。私自身が抱えているものと、どうやったらつきあっていけるのか、私自身が探している。
まだ、誰にも話したことがないこと、話す言葉がないことを、問われても答えられないし、話したからといって終わりにならない。
まだ、終わりになる気がしない。そのことを含めて私になってしまっているから、丸ごと抱えてほしいと願わずにいられなかったんだろう。

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