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2011.12.23

災害とトラウマ

「こころのケアセンター」編 1999 みすず書房

1997年に神戸開かれた国際シンポジウムをもとに編まれた論文集。
阪神・淡路大震災のみならず、地下鉄サリン事件も踏まえた内容になっている。

岩井圭司「被災地のその後:阪神・淡路大震災の33ヶ月」
阪神・淡路大震災後、兵庫県精神保健協会によって設立された、こころのケアセンターの活動を紹介する。
相談ケースは女性のほうが多く、年代別には60歳がピーク。男性ではアルコール関連問題が女性より目立ち、女性では不安・対人関係・睡眠障害が男性より高率。また、家屋喪失例では睡眠障害、人的喪失例では抑うつ感を訴える者が有意に多い。

ロバート・パイヌース「子どもと災害:長期的帰結と介入についての発達論的観点」
これは読む価値がある。限られた時間のために、非常にコンパクトに、要点のみにまとめられている。
子どもがPTSDが、親のストレスと正の相関があることや、持続性の睡眠障害が注意欠陥をもたらしたり学習を障害しやすいことや、外傷体験のリマインダーがあることなど。年齢に応じての違いも含めて説明されている。
データのもとになっているのは、アルメニア地震、ノースリッジ地震、ボスニア=ヘルツェゴビナなど。
ちなみに、最初に書かれたポンペイのエピソードは、本村凌二『古代ポンペイの日常生活』により詳しく紹介されている。

中野幹三「地下鉄サリン事件:被害者の孤独と外傷後ストレス障害」
地下鉄サリン事件の被害者でPTSDの45例のうち、症例を紹介しつつ、当初は身体症状が精神症状をマスクしていること、サリンの毒性よりもサリンを吸ったという意味によって傷ついていることなどを指摘。
また、被害者の孤独感、孤立無援感は、改めて胸が痛い。気持ちの決着をつけることの難しさを考えさせられる。

アレキサンダー・マクファーレン「自然災害の長期的転帰」
多くのPTSD患者が、災害から2年間は受診しないという。
「多くの人は、実際起こったことの恐ろしさは無視し、そして忘れようとしてしまう」(pp.88-89)が、実際にPTSDになっている人もまた回避の症状があるがゆえに思い出さされることを回避しようとして、治療もまた回避することを指摘している。
うん。その通りだ。
長期的なフォローアップが必要であること。それから、これだけで治るような単純明快な治療方法はないということ。

小西聖子「犯罪被害者のトラウマへの対応」
国内での犯罪被害医者相談の第一人者。調査報告、対応の指針、事例を紹介。調査では、女子大生よりも、より高い年齢層のほうが、レイプの被害が高い率を示す。
トラウマワークに拘泥することなく、被害者とその家族ら関係者に対する心理教育の重要性を訴え、「全体としてセルフ・コントロールの感覚の獲得、あるいはセルフ・エスティームの再建」(p.122)を精神的援助の目的とする。また、被害者自身の社会的な行動のための援助をするところが、犯罪被害支援ならではの要素である。
セルフ・コントロールとセルフ・エスティーム。どちらも、私がほしい。

ジュディス・ハーマン「トラウマ、家族、コミュニティー」
この人の本を読んでおきたいのだが、高い……。
レイプからの回復について、ポジティブな要因は、行動的な対処の戦略、連携的な対処の仕方、成熟した防衛(利他主義とユーモア)、ネガティブな要因は、社会からの孤立、経済的なストレス、過去のメンタルヘルス上の問題があると整理。

加藤 寛「『こころのケア』の4年間:残されている問題」
阪神・淡路大震災から4年後の時点での知見は、今後数年間の東日本の支援の目安になるのだろう。
たとえば、仮設住宅に住む人がPTSDハイリスク群であり、「彼らは被災状況の大きさもさることながら、過酷な生活環境に長期に置かれ、さらに生活再建の最も遅れた人たちであり、その重積した影響がPTSD症状の遷延に結びついていた」(p.159)とある。
また、震災直後に活動していた消防隊員の体験を語る言葉は、重い。救援者が味わう非常事態ストレスについて紹介している。自らも被災者となった消防隊員は、IESでも高得点を示しやすかったそうだ。支援者支援は重要な課題である。

中井久夫「災害と日本人」
「身体の傷は八ヶ月すれば瘢痕形成がいちおう完成するが、心の傷は四〇年経っても血を流す」(p.177)
今年はこの人の文章を中心に読んだので、内容には重複することもあるのだけれども、何度読んでも歴史から学ぶことのリアリティを思い知らされる感がある。

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