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2011.12.30

彼女がその名を知らない鳥たち

沼田まほかる 2009 幻冬舎文庫

たった一人の恋人。
読み上げたとき、最後の一文が悲しくてたまらなかった。
それこそが愛であるのだと、これほど貴いものはないと、他人事ならばわかる。
自分のことであっても、過ぎ去ってからならばわかることがある。
どうして恋がうまくいかないのか、その最中に、自分だけはなんでわからないのか。
たった一人の私の恋人。その人こそが恋人であったと、なんでわからないのか。

悲しくなるほど、すれ違う。
主人公の十和子が、優男と出会っては、その隣に妻としてあるのが自分ではないのかと煩悶する。
幸せを夢見る心情に心当たりがある女性は、彼女の不貞を指弾せずに、慎ましく目を伏せて見逃すだろう。
あるいは、思い出したくない、考えたくない、透明でいたい、ただただ自分を麻痺させていなければ生きていけないような過敏さも、奇矯ではあるが珍しくない。

自分は被害者であること。それだけが、彼女の免罪符である。

それにしても、読み進めるに従い、十和子の身勝手さに、ついていけなさを感じるようになる。
若くもなく、美しくもなく、仕事をせず、恋人だったはずの男に裏切られた。同居している陣治に生活をすべて頼りきりながら、十和子は陣治を嫌悪する。罵倒し、虐待する。
十和子の中では、現実と想像がたやすく混乱し、記憶と認識が曖昧になり、被害とか加害が転換する。
彼女は、言動不一致どころではない。言葉と言葉、気持ちと気持ち、行動と行動に一貫性がなく、気分が変わりやすく、矛盾だらけだ。

彼女は自分の矛盾を統合することができず、責められれば相手を攻め返す。
それでいて、ただ単に、どうしようもない、性懲りのない女であるだけではない。
やむにやまれずに彼女なりに一生懸命であることを、どこかで受け止めてもらいたがっているようにも見える。
否認と回避。自分を麻痺させなければいけないのは過覚醒があるからだ。刺激を受けると、侵入の体験が訪れる。あえて、PTSDの用語を用いてみたが、十和子に病理の臭いが徐々に強くなっていくところが見事である。
しかし、彼女自身は自分の行動原理をわかっていない。それを理解しているのは、ただ一人である。

忘れることのできなかった、8年前につきあっていた男、黒崎。
新しく知り合った男、水島。
二人の男に接点はなく、類似点もない。
しかし、封印がとかれてしまう。

陣治だけが結果を予測していた。
陣治だけが十和子を守ろうと、本当に守ろうとしていたのだ。
タイプはぜんぜん違うのに、腐野淳悟@『私の男』を思い出した。
タイプはぜんぜん違うのに、たった一人の私の恋人を思い出して泣いた。
十和子みたいに愛されてみたかった。十和子ぐらいに。
ちょっと、羨ましいと思ってしまった。
これは恋じゃないと思うよ。私なら、愛と名づける。

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