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2011.11.08

最後の授業:心をみる人たちへ

最後の授業――心をみる人たちへ  北山 修 2010 みすず書房

潔く去ることができなかった申し訳なさ。
「自虐的世話役」(masochistic caracter)の概念と出会ったことは、非常に耳の痛くなるような理論であるのだが、私が生き残るために役立つヒントになった。
北山の本は買っては積んでの繰り返しで、この言葉を明確に意識したのは、この本に納められている最終講義のときであった。
この本は、NHKでも放送された2回分の通常の講義と、大講堂で行われた最終講義に、学会での特別講演を整理しなおしたものの三部から構成されている。
寺山修司がフォークルを引用していたので、次に読むのは北山さんだと思い、この本を思い出した。

臨床家を目指す人たちや、精神分析に興味を持つ人向けの内容だと思う。「テレビのための精神分析入門」では臨床家としての心得がいくつか述べられているからだ。セラピストは楽屋を見せないってことや、セラピスト自身の環境も大事だということは、先輩からの重要なな助言である。
臨床家は心の裏の意味を扱うものであり、それはパーソナルなコミュニケーションを通じて行われることであるから、マスメディアにはのらない部分であり、ソーシャルメディアにのせるべきでもない。

第三者に向けた言葉と第二者に向けた言葉は違うことを意識すると、最近の自分がSNSで第三者を増やしすぎたために言葉を発しづらくなってきた苦痛を自覚させられた。
このブログはオープンにしているが、日記用にしている場所では「今この場だけの内緒話」を私は好む。
ところが、あまりよく知らない閲覧者が増えてしまうと、第三者を意識しなければならなくなり、内緒話は控えざるを得なくなる。
そうやって見えざる他者を意識して綴る言葉は、大事な「あなた」に心を伝えたくて紡ぐ言葉とはまったく違うもの。

噛み砕かれた表現、独特の流暢な語り口。声が聞こえてきそうだ。何度も講義を受けてきたので、表情や仕草まで思い浮かぶ。
「いなくなる」「消えていく」「今はいるが不在になる」といった、九州大学を退官するにあたっての不在の予感が全体を貫いている。
そういうしめくくりの節目に際しての、北山自身の振り返りの時間、内容になっており、これからより専門的な本を読もうかという人にとっても、全体像を掴むためのガイドとして適切である。

「みにくい」というのもキーワードだ。
「私たちは、私たち自身でつくりあげていく自分の仮面と、自分の本来の醜い姿、あまりさらけ出したくない姿との間で葛藤する」(p.79)ため、醜い姿を、「見るな」「見るな」と禁止する。
神話、民話を引きつつ、「見るなという禁止」を犯して見てしまったがために、幻滅と逃走が起きる。見られて傷ついたものは立ち去り、見たものはすまないとは思いながらも決して謝らない。「この物語は永遠に終わらない。最初は最後の続きとなって、救助、結婚、幻滅、罪悪感、救助、結婚、幻滅……をただただ繰り返す」(p.128)
その形式の中で、「はかなく消えていくことこそが、みんなに愛される方法になる」(p.130)ことを北山は指摘し、「自虐的世話役」の概念を提唱する。
「とにかく自殺を考えてしまうこの物語のどうしようもない反復」(p.132)から抜け出て、ハッピーエンドになる線はないのか。
北山が示す解決は、「生き残ること」。「物語で居座ること」(p.139)である。

自己犠牲的に献身して、罪悪感を紛らわせるのではなく、すまないものがすむまで置いて抱えておくこと。
あるいは、悪いものを何もかも自分が背負い込んで立ち去ろうとしないこと。それは、かえって相手にすまない思いを残すだけなのだから。すまないことの連鎖、反復に陥るだけなのだから。
むしろ、不純なものを抱え込んだ醜く、汚い、自分のままで、生き残ること。
私の、極めて個人的な、今後の課題というか、指針である。

面と向かっていると、相手の心の裏を空想しない。でも、あなたが顔をそむけると、私はあなたがなにを考えているのか想いはじめるでしょう。(p.49)

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