天と地の守り人(1)
間があいた分、世界を、登場人物を思い出すのに、少し時間がかかった。
『バルサの食卓』を読んで、シリーズを最後まで読み終えようと思って、手に取った。
読み始めてしまえば、引き込まれるまで程なかった。
舞台はロタ。再び主人公はバルサになり、訃報が伝えられたチャグムの足跡を追う。
チャグムは王子として国の興亡をかけた政治的駆け引きの只中にいる。
一方、バルサは、用心棒としては知られていても、市井の人間に過ぎない。なんの権力もなく、特別な力もない。軍勢を持っているわけではないし、財産を持っているわけでもない。
ただ一人の、少し、加齢を感じ始めた女性だ。
また、バルサの知らないところで、バルサが守りたいと願っているはずのタンダは徴兵され、アスラらのいる町も戦争となれば被害は免れない。
誰も彼もが巻き込まれていく。
戦争は、津波に似ている。
個々の事情を忖度せずに、わけ隔てなく襲い掛かり、飲み込むのだ。
でも、天変と異なり、戦争は人為的な災害であるからこそ、避けうる可能性もあるはず。
無力なのに、でも、何かをせずにはいられない。
無事がわからない。心配や焦燥や不安で、胸がきりきりと締め付けられるように痛む。
手遅れになるのではないか。すべては無駄になるのかもしれない。それでも。
バルサとチャグムのたった二人の挑戦の行方は、次巻である。
誰もが幸せになってほしいなぁ。
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» 天と地の守り人 第一部(上橋菜穂子) [Bookworm]
とうとうこの巻に手をつけることになった。守り人シリーズ最終章の三部作。早く読みたいような、でも、もうちょっと先延ばししたいような、複雑な気分で表紙を眺める。うー、どうしよう。。。珍しく、読むのを躊躇した。でも、図書館の返却期限は待ってはくれないので、とっとと読むしかないんだけどね(笑)... [続きを読む]
遅くなりましたm(__)m
胸の痛む巻だったよね。あの人は、あの人は、そしてあの人は…と気になることばかりだったように思います。そして、読みながら私は泣いてばかりだったような気もします^^;
昨日送ったTBが届いてないようですねー。再挑戦してみる!
投稿: すずな | 2011.10.26 12:34
すずなちゃん、TBちゃんと届きました。ありがとう♪
次々にこれまでの登場人物が出てくるのが、最終シリーズらしいですよね。
先が気になるけど、読むのが……。(^^;;;
年内には読み終えたいと思いますです。
投稿: 香桑@室長 | 2011.10.26 20:47