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2011.09.12

花宵道中

花宵道中 (新潮文庫)  宮木あや子 2009 新潮文庫

長く積んでいた本を読んだ。思いがけずゆっくりと時間をかけたのは、一つずつを丁寧に読んでいきたい気持ちに駆られたからだ。
山田屋という見世を舞台に、数人の女郎たちを主人公にした連作になっている。
すっきりと簡潔な文章で、過度に情緒的にならず、そのくせ、ぐいとひきつける。
読みやすくて一晩で読んでしまえそうな本であるが、それぞれの女郎たちの物語を一つずつ味わいたくて、気付けば数日がかりになった。
物語の長さではない。深さが、それだけの時間をかけたくなった。

吉原を舞台とする作品が、妙に読みたくなる時がある。
江戸物というより、吉原物を選びたくなるのは、自分自身の中の女性性と向き合いたくなる時のような気がする。
間夫を持てば罰せられる。
でも、どれだけ気持ちを切り捨てても切り捨てても、やっぱり女で、人形ではなくて、心はあるのだ。
愛しても、愛しても、かなわぬとわかっても、愛したくなることがある。
それぞれに切なくて美しい物語は、性的な表現があっても卑猥にならず、潔くて凛とした清潔感すら感じた。
作者はとにかく綺麗に描いてみせる。どろどろした感情を持ちながらも、男女は、美しく咲いて、美しく散っていく。

物語の中、女郎達は短命である。
実際に、現在の女性の平均寿命よりははるかに短命であったと思われる。
近代において女性の平均寿命を引き下げていたのは産褥に伴う死が多いが、のみならず、栄養状態、労咳、性病など、まぁ、いろいろあっただろうなぁと思われるわけで。
稼げなければ河岸見世など、ランクの低い店でこきつかわれては年季明けなどなくなる。
かといって、年季が明けたからといって、門の外に受け入れ先はあるのだろうか。
一夜の夢に酔いながらも、最後にゆっくりと現実に立ち向かって行くような強さを、この作者は示すのがうまい。

美しくて、儚くて、男の夢をかなえるためだけの町で、男の夢をかなえるためだけに消費される女。
その位置づけをクリアにするのが、最後の勝野の章である。

勝野は男を信じていない。けれど、許すことはできる。(p.363)

どっかに希望は残されていなかっただろうか。
幼心に描いた夢の通りではなかったとしても、それでも、全部が全部、不幸だったとは思いたくない。
そうだとしたら、苦しすぎる。
忘れられて、なにもなかったかのようにめぐる日々だけではなく、変わり果ててしまったとしても、いまだなお残されている希望はないか。
美しくもなくなり、儚くもならなかった女の物語まで描いたところに、作者の魅力を一番感じた。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
遊女という悲哀だけでなく、その職に対して矜持を持ってきりりと歩んでいく彼女たちの姿が、とても美しかったですね。
江戸吉原の風景描写なども、美しいだけでなく猥雑なところも描かれていて、とても素晴らしかったです。
これがデビュー作というのがとてもすごいし、この後の作品も切なくなるような物語がたくさん(例外もありますが(笑))。とても引き込まれる物語を描く作家さんだなぁ・・・と思います。

水無月・Rさん、こんにちは。
歴史的史料を読みたいわけではなく、小説を読みたい私の感性にフィットしました。
舞台装置が江戸時代末期の吉原であるだけで、うっとりするような恋愛小説だったりするわけです。そのあたりが、まさに女性のための小説だったと思います。
ほかにも引き込まれる、切なくなるような物語がたくさんあるですね。ぜひ、次を手にとってみたいと思います。

吉原を舞台にした作品なので性的表現が多いのだけれど、それが卑猥にならずぎゅーっと胸を締め付けられるような切なさを感じる作品でした。でも、女性達の気高さも感じて、哀しいのだけれど惚れ惚れするようなカッコよさというかね、そんなものも感じられるお話でした。

すずなちゃん、ども。
霧里、朝霧、三津、茜、緑、桂山……誰もが魅力的な中で、私は八津が好きでした。
あきらめて、あきらめて、最後も切り捨ててあきらめてそこにいることを選ぶ気高さのようなもの。
かっこよくて、可愛くて、非常に魅力的な女性達で、愛しくなりました。

R-18文学賞受賞作家さん才能

・・・気になりますね。
本当に面白いな~、とおもいますし、どうしてこんな引き込まれる
作品書けるんだろうって思いますね。

最近読んだ作品では、
窪美澄さんのふがいない僕は空を見た、
吉川トリコさんの少女病、
最近発売された三日月拓さんの「きのうの家族」。
みんなR-18受賞作家さんの作品。

ちなみに3人の受賞者の解説の記事が載ってまして、
http://www.birthday-energy.co.jp/
ちょっと厳しい記事ですけどね。

受賞時期や、作家デビュー時期に、ヒントがあるそうです。

カバゾーさん、コメントありがとうございます。
オススメを教えてくださってありがとうございます。
その中でも「ふがいない僕は空を見た」を読んでみたいなぁと思っています。
積読本の山がもう少し低くなったら、探しにいってみます。

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『花宵道中』は、第5回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と読者賞を同時受賞したという、色々な意味で「水無月・Rなんかが読んじゃって良いのだろうか」という戸惑いが発生してしまい、つい手を出し損ねていた作品です。 でも、読んでみて結果は、読んでよかったわ~(^^)です。 しっかし、これがデビュー作とは、怖ろしいものです、宮木あや子さん。... [続きを読む]

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第5回R‐18文学賞大賞&読者賞受賞作。江戸末期の新吉原.。小見世の山田屋を舞台に遊女達の切ない恋を描いた連作短編集。 [続きを読む]

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