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2011年6月

2011.06.27

カフェかもめ亭

カフェかもめ亭 (ポプラ文庫ピュアフル)  村山早紀 2011 ポプラ文庫ピュアフル

コンビニたそがれ堂と同じ風早という町を舞台にした短編集だ。
船乗りだった曽祖父から受け継がれてきた、港町にふさわしい調度品をかまえたカフェ。
若い広海が店を受け継ぎ、客から聞いたちょっと不思議な話を集めた形になっている。
著者は長崎出身だそうだが、それを知らずに、店のイメージを長崎にあるひいらぎという喫茶店に重ねて読んでいた。

平易な文章と短い物語の集まりであることと、読みやすい条件は揃っている。
にもかかわらず、てこずった。
なんで、この店には不思議が許されるのだろう。
たそがれ堂は神様が店主だから、不思議があるのも当然だ。
でも、かもめ亭の魔法の源が見えてこない。
この世界は、魔法がありなのか、なしなのか、よくわからないなぁ。
そのどっちつかずな感じで、ファンタジーに遊べなかったのだ。なかなか。

しばらく途中で投げ出していたけれども、旅に行くときに持って行った。
ほかに読む本がなければ、最後まで読むだろうと思って。
そしたら、中盤以降が、私のツボだったらしい。
特に、この人の書く猫の話は要注意だ。
泣いて、泣いて、止まらなくなった。公共の交通機関の中だったのに。

そんなわけで、「ねこしまさんのお話」は、野良猫に少しでも触れ合った人に読んでもらいたい。
寂しい時や悲しい時を、犬や猫や鳥や、動物達に慰められたことがある人に読んでもらいたい。
愛する犬や猫や鳥や、動物達を見送ったことがある人に、読んでもらいたい。
一人、ひっそりと傷ついて泣いている子どもに、読ませてあげたい。
思い出しただけで、涙が出てくる~。

かもめ亭の不思議の理由が明かされるのは短編の最後「かもめ亭奇談」だ。
文庫化されるにあたって書かれたという中編の番外編「クリスマスの国」も素敵な物語だった。こちらには、たそがれ堂も少し出てくる。
どちらも、ファンタジーらしく、村山さんらしい風合いの物語だった。

村山さんの本は人前で読んじゃいけないことを、ほんと、忘れていた。
次からは気をつけます。

2011.06.24

彩雲国物語(21):紫闇の玉座(上)

彩雲国物語   紫闇の玉座(上)   (角川ビーンズ文庫)  雪乃紗衣 2011 角川ビーンズ文庫 

いよいよラス前。
今更番号を振りなおすのが面倒なのだが、本編17巻目にしてシリーズ21冊目。
大きく育った物語世界を、秀麗がようやく秀麗らしく駆け抜けていく。
残り時間との競争の中、かなり暴走気味なので、読み手は振り落とされないよう要注意。

こんなにも登場人物が多かっただろうか。
もう少し幅広くカバーした登場人物紹介と相関図がほしくなる。
それぐらい、あの人も、この人も、登場してくる。
懐かしい名前がここで出てくるか!というほど、多くの伏線が手繰り寄せられてくる。
しかし、まだ全貌が見えてこない部分もある。それで、仙は全員揃ったのかな??<混乱中

作者は北関東在住で、執筆中、3月の東日本大震災に被災したそうだ。
その体験は、この物語のどのあたりを書いている頃に起きただろうか。
そんな点も興味深く読んだ。
この物語の中でもかつてない災害が起きている。

その災害と戦う人たちの物語だからだ。
それは、次の世代によりよい未来を繋ぐための戦いだ。
東の空から王の星が上るとき、世界が残されているための戦いだ。
最低よりも少しはマシな、この世界を次に残すため。
自分の命がなくなるそのときまで、戦い続ける人たちがいる。

次の巻は、より一層、ぶあつくなるという。
最後は、王様、がんばってくれるかなぁ。心配心配。

2011.06.09

もう一つのシアター!:有川浩脚本集

有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)  有川 浩 2011 メディアワークス文庫

脚本設定はTheatre劇団子の石山英憲さん。
Theatre劇団子との出会いからインスパイアされて、有川浩が書いた『シアター!』
その世界を、今度はTheatre劇団子が演じるという、キャッチボールが生み出した作品。
この脚本も有川さんが書いたんだっけ?と首をかしげながらページをくって、事情を納得。
いろいろと原作を踏襲されている点で、原作のファンはスピンアウトとして読む価値がある。

もともと脚本形式で書かれたものはちょっと苦手だ。
歌舞伎やミュージカルは見るが、演劇もちょっと苦手。
映画は好きだけど、舞台の張り上げる声が苦手で……でも、野外で見る舞台は結構好きかも。マサチューセッツで見たテンペスト、ジョグジャカルタで見たラーマヤーナ。
舞台をテレビで見ると面白さが半減するんだよね。やっぱり、ライブはライブが一番。

だから、この舞台を生で観られなかったのは残念に思う。
役者さんたちを思い浮かべることができない代わりに、これまでの『シアター!』を読みながら思い浮かべていた人たち+『3びきのおっさん』からの清田祐希を思い浮かべながら読んだ。
そして、驚くほど、違和感なく読んだ。脚本を読むというより、これもまた読みなれた有川作品である、そのためだろう。

面白いのは【註】である。それぞれの場面や台詞に、舞台が出来上がるまでのエピソードだったり、実際の舞台を見ての作者の感想だったりが付記されている。
その生のコメントが、舞台を作る側の目線から活き活きとしたものを感じさせてくれるのだ。
作者の感激や戸惑いに、私まで、そんなものなのかと驚いたり、笑ったり。
物語を楽しむと同時に、舞台を作るまでの過程という実際に起きた物語を楽しむことができるだろう。

巻末には、有川さんの対談もおさめられている。
片方は、舞台のゲストだった大和田伸也さん(「もう一つのシアター!」オリジナルの登場人物役)と。
もう片方は、演劇集団キャラメルボックスの阿部丈二さん(司にーちゃん役)と。
これもそれぞれ興味深い。有川さんの今後の活躍の幅が広がりそうな気配さえある。
できれば、もともとの設定を作った石山さんのコメントも読んでみたかったな。

2011.06.03

図書館危機:図書館戦争シリーズ3

図書館危機 図書館戦争シリーズ3 (角川文庫)  有川 浩 2011 角川文庫

この巻は好きなのだ。
なんと言っても玄田さんがかっこいい。
玄田さんのための、玄田さんのファンのための巻である。

愚痴をこぼしながら順応したほうが楽。(p.164)

そんな怠惰に流されないようにするのは、実はとてもエネルギーがいる。
自分の言葉は狩られていないか。
自分の意思は流されていないか。
自分の思考は踊らされていないか。
日本のファシズムは、伝統的に、カリスマが形成するのではなく、組織としてお互いに見張りあうようにして台頭してくるから厄介なのだ。

たとえば、東日本大震災。
たとえば、福島原発事故。
ある種の批判をしてはならないと、人道的に、倫理的に、うわっつらだけの平等主義が言葉を封じていないか?
批判をしていいと認知された対象には容赦なく、議論というよりも、最早、非難、中傷、侮蔑のような言葉を投げつけるくせに。
二元的に短絡化された言論しか許されない息苦しさを、感じはしないだろうか。
そこに表現の自由は。思想の自由は。言論の自由は。

残念だけど、この物語世界は、私が生きている世界と繋がっている。
実際にあるとちょっと嫌な夢物語、ではなくなってしまっている。
この危機感を新たに感じると同時に、稲嶺司令のストイックさを見習いたくなる。

死者に救いは求めない。それが妻であっても、何も言えなくなった妻に自分の言い分を重ねて正当化することはしない。(p.355)

主張はあくまで自分の意見で。
発言はあくまで自分の責任で。
それはあくまで自分の自由という権利の行使であるのだから。

恒例、私的な名台詞top3をあげておきたい。
その1:「まぁあれだ、お前が還暦に一人で赤いちゃんちゃんこを着なきゃいかんようなことになったらそのときは俺が引き受けてやる」(p.120)
その2:「……ぽん」(p.330)
その3:「あたし、王子様からは卒業します!」(p.57)

今回も選ぶのは難しかったが、やっぱり、その1はこの台詞に。
私からも連絡を絶ってしまったが、こんな風に付き合えたらと願った人を思い出す懐かしさがポイントが高い。
もっとも、今は言ってもらえるなら、違う人に言わせたい気がする。笑
「これしきのことで騒ぐなバカどもが」もよかったんだよなぁ。迷うなぁ。ほんと。
番外は『ドッグ・ラン』より「すみません。頭がわるい犬なんです。わんわん」(p.376)ぐらいで。
児玉清氏との対談も、この巻では格別な感慨があった。実写する時に稲峰司令のイメージに合うなぁと思っていたら、司令と一緒に去ってしまった。御冥福を祈りたい。

2011.06.01

乱暴と待機

乱暴と待機 (MF文庫ダ・ヴィンチ)  本谷有希子 2011 MF文庫ダ・ヴィンチ

この2人の関係を気持ち悪い、で片付けてしまえたら簡単だ。
だけど、それぞれに少しずつシンパシーなんか感じてしまうから、複雑になる。

二組の男女。この4人で登場人物はほぼ終わり。
人に嫌われまいとするあまりに相手をイラつかせることが天才的に上手な奈々瀬。
その奈々瀬に復讐すると宣言して、同じ部屋で覗いている「おにいちゃん」英則。
英則の職場の後輩、見かけはそこそこだが好奇心旺盛でデリカシーは少ない番上。
番上の恋人で、高校時代に友達だったはずの奈々瀬から恋人を寝取られたあずさ。
濃密でねちっこくて、でもちゃちな作りモノの欺瞞が空虚に部屋を支配していて。

遺恨だらけの人間関係を、番上がずけずけと鼻をツッコミ、秘密を暴き立てる。
経緯を明らかにしてしまえば、関係が変わる、壊れる、そのことを頓着しない。
奈々瀬と英則が積み重ねてきた世界は、破壊者たる番上とあずさを巻き込んで再生産してみるのだから、もう堂々と開き直ってやっていくしかないではないか。
どの人物にも憧れないし、素敵だと思わない。どの誰にも自分を重ね合わせることをためらうし、重なりたくないと思ったりする。
とはいえ、どこかで見たことあるような、こんな人はいると思わせられてしまう登場人物たちが、それぞれなりに幸せなら、ハッピーエンドだ。不本意ながら。

気持ち悪い感じを綺麗に見せずに、なんか気持ち悪いままで呈示できるところが、作者の度量だろう。
はまる人もいれば、拒絶する人もいるかもしれない。私は途中で読み進まなくて困った口である。
タイトルと帯からもうちょっとドロドロしたものを期待していたため、期待と違って読み進まなくなったというのもある。
でも、最後の数ページ、舞台だなぁ、と思ったら、やっぱり舞台のノベライズだという。
奈々瀬の変貌はお芝居で見るような迫力があり、そこも演劇に携わっている作者ならでは、の名場面だと思った。

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