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2011年3月

2011.03.29

小夜しぐれ:みをつくし料理帖

小夜しぐれ (みをつくし料理帖)  高田 郁 2011 時代小説文庫(ハルキ文庫)

これはもしかして……?
5冊目は、ハッピーエンドの予感を残す。
東日本大震災を経て、手に取る本、手に取る本がなんだか読みづらく感じていたが、ほっこり温まる心地がよかった。

澪ちゃんの前には選択肢がいくつか。
彼女には、料理を通じて見る夢がある。
ひとつは、天満一兆庵を再建すること。
ひとつは、つる家の名前を守ること。
ひとつは、野江ちゃんをとりもどすこと。
そして、ひとつは、大事な人たちに美味しい料理を供することだ。

毎日、毎日、心をこめて料理をすることで、道が開ける。
料理をすることに、澪はもう迷わない。
しかし、目の前に選択肢が提示されると、迷わずにいられようか。
選択肢が増える、道が開けるというのは、彼女の努力が認められたということだ。
だが、考えれば迷う。
だから、ただ手を動かす。

反面で、夢をあきらめなくてはならない者もいる。
娘の仇であったり、恋しい人と結ばれることであったり。
澪はどこまであきらめずにいられるだろうか。

小松原がつる家に訪れるたびに、あからさまに皆が気を使うのが微笑ましい。
その小松原の、小野寺数馬としての生活が描かれているのも、嬉しい。
澪ちゃんとは身分も生活も大きく隔たれてはいるが、ハッピーエンドにしてほしいなぁ。
ここから物語の終わりに繋がるような、そんな予感を残す一冊だった。

2011.03.08

僕の好きな人が、よく眠れますように

僕の好きな人が、よく眠れますように (角川文庫)  中村 航 2011 角川文庫

タイトル買いした一冊。
本として薄め。そして、軽め。
読みやすくて、平和な小説である。
どうしても、辛口の感想になるかも。

出てくる音楽は、主人公よりももっと年上の世代向けだ。
作者の年代に近づくほど、歌詞にもメロディを感じるところがあるだろう。
途中で、飲酒しているシーンが多いな、と思ったら、最後まで酒を飲んでいた。
ビールが多い。時折、ジンやターキーを飲む。
これじゃあ、恋に酔っているのではなく、酒に酔っていただけではないのか。
アルコールに酔っていても恋愛はできるが、生活となると素面に戻らなくてはならない。
主人公以上に生活が苦手な木戸さん(もしくは坂本という偽名を名乗っていた人)の飲む酒は、だからこそ強くなければならない。

恋愛と生活は、別次元に位置していると思うことがある。
不倫というのは、いいとこどりの恋愛になるのも、だからだろう。
相手を奪おうとか、ともに暮らそうとか言わず、生活の次元に引き込もうとしない限り、不倫は生活ではなく恋愛になる。
しかも、ちょっとした罪悪感や悲壮感で味付けしてくれるのだ。

主人公たちの恋は、おままごとのような無邪気な幸せさに彩られている。
それぞれが、あえて2人の背後にある生活から目をそらしている。
お互いだけを見つめていようと布団にくるまってすまきになる。
それ以上を望んでしまえば、恋は無力になるから。

いつか終わりがあるからこそ、安全に火遊びができてしまったのかもしれない。
今しかない。そのことは、悲劇性があるように見えて、それが見える打算も透けはしないだろうか。
恋が終われば、また生活に戻っていくだけ。戻っていけるという安心感がありはしないと、誰が言えるだろうか。
木戸さんというキャラクターが面白かったが、もうちょっと気持ちが揺さぶられるかと思ったら、さらさら~と流れていってしまった。
傍目から見れば、私の恋もこんなおままごとのようなものなのだろうか。
これより先はこんな恋はもうできないだろう。もういらないとも言える。

「浦和レッズの大応援エリアに、孤独なサガン鳥栖のファンが、まぎれ込んだみたいだ」(p.112)という一文があったが、アビスパもアウェーの応援に行ったら、そんな感じになるのかな。
ちょうど、Jも開幕したことだし。

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