2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

著者名索引

香桑の近況

  • 2017.1.4
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計323冊
無料ブログはココログ

« シアター!2 | トップページ | 時が滲む朝 »

2011.02.03

私は売られてきた

私は売られてきた (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)  パトリシア・マコーミック 代田亜香子(訳)
2010 作品社

ネパールからインドへ売られてくる少女は、毎年、約1万2千人。
世界的には年間50万人近い子どもが性産業に売られている。
タイも有名だが、カンボジアもまだまだ悲惨だ。
売られていく子ども達の数は、市場拡大を示しているのではない。
同等数の子ども達が、市場で消費されて市場から脱落していることをも示しているのだと思う。
虐待によって、病気によって、あるいは、自死を選ぶ子どももいるだろう。
言い換えれば、殺されていく子ども達の数であるのだと思う。

この本を知ったのは、書評か、なにか本を紹介する番組だったと思う。
世の中に悲惨なことは多すぎて、生活の中で触れる悲惨が充分にありすぎるので、この手の本は避けることが増えていた。
でも、なんだか、惹かれたのだ。
読んでみたいと思った。
母親をアマと呼ぶ少女。アマはノアの箱舟のノアの妻の名前だった。読むときが来た。
読んでみてよかった。

ラクシュミーという女神の名前をもらった少女。
たった13歳。でも、売られる少女の中では最も若いというわけではない。
売られる。叩かれる。閉じ込められる。レイプされる。更に売られる。
教育で洗練されてはいないが、彼女には知性があり、理性があり、深い情感があり、プライドがある。
新鮮な驚きを示し、学習することに喜びを見出す。母親を愛し、かすかな恋に胸をときめかせる。
少女の活き活きとした感性や、しなやかでたくましい、ヒマラヤの山のように誇り高い姿が印象的である。
その姿が、たとえどのような体験をしたとしても、その人は汚されることなくその人のままであることを教えてくれるのではないか。
彼女の魂が壊れる前に救い出されてよかったとほっとするような結末だった。

この子が育った環境では、情報も限られており、社会も限られていた。
大人を信じて喜んで売られていった彼女の世間知らずを責めてはいけない。
責められるべきは、彼女を売った継父である。
酒やギャンブルの楽しみのために、わずかな金のために少女を売り払った男である。その金がなくなれば、次は何を売るつもりなのか。
彼女達が生還したことを恥だと思ってはならない。あるいは、やましさから追い返す人もいるだろう。
恥ずかしいのは、少女を売ったことを忘れて、少女を買ったことを隠して、自分達だけは清いと思っている人たちのように思う。

『サンダカン8番妾館』を思い出した。
売買春は、昔からあった。今も各地にある。
だからといって、ありふれたものとして受け流すのは違うと思う。
自分の体しか売るものがなかった人を侮辱してはならない気が、私はする。
同時に、買うしかどうにもならない人を非難するのも、私は難しさを感じている。
でも、売られた少女を買うのは別だ。他者を売り、他者に売られた人を買うのは別だ。その人は売られて、買われて、自ら売っているわけではない。そこに能動性のひとかけらもない。
痛ましい気持ちと腹立たしい気持ちとがずっしりと残る。この重たさが、私に次に私がすべきことを探させるのだろう。

短い章立てで、漢字にはルビを振られており、主人公と同年代の読者にも提供できる。
どれだけ何を感じるかはわからない。でも、読んで、知っていて欲しい。
世界にはこんな少女達もいることを。こんな営みに加担しないために。

 ***

思い出そうとするのは、わずかな霧をつかもうとするものなんだな。忘れようとするのは、モンスーンを押しとどめようとするものなのだ。(p.92)

« シアター!2 | トップページ | 時が滲む朝 »

**国境を越えて**」カテゴリの記事

**女であること**」カテゴリの記事

小説(海外)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/183237/38720686

この記事へのトラックバック一覧です: 私は売られてきた:

« シアター!2 | トップページ | 時が滲む朝 »

Here is something you can do.

  • ボランティア・寄付ならプラン・ジャパン
    子どもとともに途上国の地域開発を進める国際NGO

最近のトラックバック