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2011.01.06

ツクツク図書館

ツクツク図書館 (MF文庫ダ・ヴィンチ)  紺野キリフキ 2010 MF文庫ダ・ヴィンチ

筑津区にある。だから、ツクツク図書館。
でも、そこの入り口には、ただ「図書館」とだけ書いてある。
ツクツク図書館の噂は誰もが知っているけれど、誰もが行ったことがあるわけではない。
むしろ、利用者はごく少ない。
そこは、つまらない本しか置いていない図書館だ。

なんとなく買っていた本だったが、同じ作者の短編「とげ抜き師」を読んだことをきっかけに、こちらを積読本の山からすくいだしてみた。
この本の世界には、魔法がある。魔法は当然のようにあるので、登場人物たちは誰も驚かない。
読み手にも、魔法を自然に受け止められる人のほうがいいように思う。
ファンタジーは読み手を選ぶ。

ツクツク図書館は、本の分類も一風変わっている。
「雨に打たれた女学生の部屋」だとか「子どもにはまだ早い部屋」だとか「積ん読の部屋」だとかあり、その部屋にあわせた本が配架されている。
本を並べるのは《戻し屋》の仕事だ。
そこに置かれている本は、しかし、つまらない本ばかりである。つぶれた出版社やつぶれた本屋、あるいは、普通の民家から拝借された本ばかり。
本を集めるのは《運び屋》の仕事だ。
そして、雇われ館長がおり、所蔵されている本を読む係りがいる。あらゆる言語を駆使するが日本語だけがわからない語学屋もいる。
スタッフも、仕事も一風変わっている。月に一度、嫌な仕事もある。

本と切っても切り離せないのが猫である。なぜか、犬ではない気がする。
この本の中にも一匹の猫が出てくる。その猫をめぐるストーリーは明確には語られない。
なぜならば、言葉を憶える代わりに記憶を失っているからだ。猫の脳みそはとても小さい。
この猫が一番魅力的な登場人物だったと思う。読んでいる私は切なくなったけれども、この子はきっと幸せなんだろう。それがまた切ない感じ。
この猫に向けた最後の一言で、主人公の着膨れした女性のムカつく感じもおさまった。
魔法はやがて終わりを迎えるかもしれないが、でも、違う物語が始まるかもしれない。

誰にも読まれない本なんて、悲しすぎるじゃないか。
学生の時、大学図書館で見つけた埃まみれの古い本を思い出した。
19世紀に出された洋書で、ページをペーパーナイフで開きながら読まなければいけなかった。
要するに、全部が袋とじのように綴じてある、古い本だったのだ。
その姿自体が貴重に思えて、司書に確認を取ってから、ページを切っていったのであるが、私がそうしなければならないということは、100年以上、その本は誰にも読まれずに図書館の隅に置かれていたことを示していた。
今、読まれていないからといって、未来も読み手が現れないとは限らない。
いつか読み手が現れるときのために、本はひっそりと待っている。
それが、本の文化だと思う。

 ***

きっと言葉というのは理屈ではないのだ。耳を澄ませて相手のことを芯からわかろうと務めればきっと理解できる(p.108)

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コメント

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます^^
今年もどうぞよろしくお願いいたします!

つまらないからって読まれないって悲しいですよね。
1度、職場で借りられた本が古そうだなと思い、調べてみたらその借りた方が1番目で、なんと9年も眠っていた本だったんです^^
ようやく陽の目を見たんだねって何だか嬉しくなりました。
この作品に出てくる個性的な人たちそれぞれが良い味出していました。

大学の図書館で見つけた100年目にしてやっと読まれた本、というエピソードになんだかロマンというかそんなものを感じてしまいました。すごいねー。でも、そういう本と出合えたということを羨ましくも感じたり・・・。その本の感想も聞いてみたいなーと思ったり(笑)

苗坊さん、今年もよろしくお願いいたします。
文字って、距離的に遠く離れた人にも、時間的に遠く離れた人にも、言葉を伝えられる大発明ですもんね。
図書館の蔵書を一番最初に借りるって、なんだか嬉しくなります。
つまらない本って、きっと、その本を面白く思う読者にまだ出会っていない本なんですよ。

すずなちゃん、どもです。
いきなりハードルの高いリクエストを……。
うんうんうなって思い出そうとしましたが、18世紀後半にアメリカで出版された本なのは確かですが、なんだったかなぁ。英文の資料だったので、流し読みしかしなかったと思います(^^;;;
色あせた布張りで、紙の部分にタールのように黒く固まった埃がこびりついていて、でも、開くと紙は新鮮な色合いで、インクのにおいさえ残っていそうで。
その全体のイメージばかりが、鮮やかです。

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