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2011.01.23

世界はおわらない

世界はおわらない  ジェラルディン・マコックラン
金原瑞人・段木ちひろ(訳) 2006 主婦の友社

ノアの箱舟という惨劇。
世界の終りのような大洪水。
世界が終らないために選ばれた家族と動物たち。
聖書で語られていない物語は、なんとも言えない苦々しさに満ちている。

ノアと、その妻アマ。長男セムと、その妻バセマト。次男ハムと、その妻サライ。三男ヤフェトと、その盗まれてきた妻ツィラ。そして、記録されなかった末娘ティムナ。
新約聖書の最初、マタイによる福音書の冒頭を見れば、よくわかる。
ユダヤの文化では、誰が誰の息子であるか、それだけを記録する。
だから、娘の名前は残らない。その娘が主に物語を語る。
ライオンやヌーやワタリガラスが語ることもある。
アマやバセマト、ツィラやヤフェトが語ることもある。
しかし、ノアは決して語らない。

大洪水の日。
どうして、隣人を助けなかったのか。それは罪ではないのか。
どうして、動物を一つがいずつ選べたのか。群れで生きる生き物もいるのに。
どうして、彼らを世話しえようか。専門知識もなく、十分な食料も、空間もなく。
どうして、どうして、自分たちだけが選ばれたと、神の意志を知りえようか。
どうして?とささやく声は、はたして悪魔の声か。

人のやることって、どうしてこう不完全なのだろう。
よかれと思ってしていることも、そのほかの生き物にとっては大きなお世話かもしれないのだ。
後世から見たり、第三者の目から見ればナンセンスなことが、当の本人は気付かずに、至極真面目だという、不条理。
どうしようもない愚かさに、胸が悪くなる。
災害直後の極限状態の描写でありつつ、そこには様々な家族関係の問題を、問題を抱えた家族の在り様を端的に描いている。
箱舟に閉じ込められた動物たちの騒音と悪臭に自分も飲み込まれたような、ざらついた感触がした。

世界は終わらない。
このタイトルは、読み始める時と読み終えた時では、どれほど響きが変わることだろう。
ティムナの出会いと変化は、ネタばれになるので書かないが、閉塞する世界を打ち破る力を感じてほしい。
たとえ人が滅びようとも、再生は繰り返される。自然には逆らえない。

世界は終わらない。Not the End of the World.

 ***

親切心は、人間のきまぐれだ。おさえることはむずかしい。暴力や欲望のように。(p.279)

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