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2010.12.31

魔法の誓約(上・下):最後の魔法使者2

魔法の誓約上 (最後の魔法使者2) (創元推理文庫) 魔法の誓約下 (最後の魔法使者2) (創元推理文庫)  マーセデス・ラッキー 細美遙子 2010 創元推理文庫

ヴァニエルの三部作の第二部。
『魔法の使途』からおよそ10年が経ち、少年だったヴァニエルは20代半ばに成長している。
その間のヴァルデマールは、エルスペス女王の死去後、内憂外患を抱えて落ち着くことがなかったようだ。
鼻持ちならない孔雀さんだったはずの美少年は、相変わらず美しいものの、生涯の絆の相手を失った傷だらけの心を押し殺して任務に励み、すっかりやつれ果てている。

タリアにしろ、ケロウィンにしろ、ラッキーの描く主人公たちは、結構ひどい目にあっている。
それにしても、ヴァニエルのやつれようは気の毒だった。
体は疲弊し、心も消耗し、魔法さえ操れないぐらいにエネルギーが枯渇している。
にもかかわらず、彼の代わりになる者は誰もいないのだ。

そんなヴァニエルが数年ぶりに休養を取るための時間が与えられ、父親からの手紙をきっかけに帰省するところから物語が始まる。
ヴァニエルの個性を受け入れない父親、ヴァニエルをただの愛玩動物のように接する母親、厳しい練習で怪我を負わせたこともある武道ノ師範、嫌味たらたらの司教、結婚を迫って追いかけ回す侍女。
その環境の中に、自ら赴く。帰省が理由であれば休暇が取れるとあっても、ヴァニエルの帰る足取りが重くなるのも仕方がない。

しかも、ヴァニエルの故郷でさえ、時代の不穏な空気に包まれており、ほどなく隣国の問題に乗り出さずにはいられなくなる。
使者には使命がある。世界がヴァニエルを放っておかない。
隣国の事件の解決、魔法の対決と同時進行で、ヴァニエルは未解決だった少年時代のわだかまりと取り組んでいく。
彼は一人の大人として、使者として、過去を過去として人立ちしていかなくてはならない。
が、なんといっても難しいのは同性愛者としてのアイデンティティの問題だ。

ラッキーの小説にはこれまでも同性愛者は頻繁に登場するが、こんなにも同性愛者であることで悩むキャラクターは初めてではなかろうか。
ヴァルデマール周辺国での紛争よりも、同性愛者であることを家族にカミングアウトして折り合いをお互いにつけていく、自分自身とも折り合いをつけていくことが、本書のメインテーマだったように思う。
そういう意味で、『うさぎとマツコの往復書簡』に続けて読んだことが、奇遇で、かつ、興味深かった。

ヴァニエルは、ヴァニエル自身の子ども達、甥っ子のメドレン、事件の渦中にあるタシールといった少年たちを擁護する立場なのだ。
使命があり、責任がある。ヴァニエルは、自分の運命を引き受ける大人になる。
ヴァニエルは、もう引きこもらない。友情を感じ、愛情を受け取り、そして、きっと返すこともできるだろう。
その成長に至る過程が痛々しく、せめてもう少し幸せな時間もあったことを願い、第三部に思いを馳せた。

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