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2010.09.15

わたしはここにいる、と呟く。

わたしはここにいる、と呟く。 (徳間文庫)  新津きよみ 2010 徳間文庫

胸がざわざわと落ち着かない。
すっきりしない。気持ち悪い。
どこにもどれにも救いがない。
タイトル買いした。初読み作家さん。

7つの短編が収められており、どれもが中に大きな時間の流れを持っている。
それぞれの主人公は過去を振り返り、成育歴全般であったり、ひとつの体験であったり、なにかしら過去に縛られている感覚を持つ。
「わたしを探して」は、両親離婚して母親においていかれた娘と、母親が再婚してもうけた娘の、それぞれの母子葛藤や同胞葛藤を描く。
「時のひずみ」では、子育てしながら夫婦が疎遠になってきた10年間と、これからの10年間に対する希望を、失せ物探しが繋ぐ。子はかすがいになる物語だ。
「あなたの居場所」は、中学で同じように夢に迷っていた二人の少女が、まったく違った生活を得ていくプロセスを描く。居場所探しと自分探しは表裏一体であるが、夢という言葉に縛られる不幸はステレオタイプに救いがない。これも分離できなかった母子の葛藤の物語である。
「忘れはしない」では30年もの時間を内包する。教師と二人の教え子。同級生にいじめられた記憶、教師にかばわれなかった記憶を忘れはしない。陰湿な復讐劇である。
「思い出を盗んだ女」でも、登場人物たちは古い旅行の思い出に縛られている。その旅行は、不倫だったり、家族だったり、今はもうそばにはいない人たちとの思い出となっている。この運命のいたずらは、先が読めちゃったかな。
「あの日あのとき」は、こんな事故があったことを思い出しながら読んだ。誰かを助けるために誰かが死んだ、電車事故。残された家族や、その場に居合わせた第三の当事者の10年後。生き延びてしまった罪悪感は許されることがあるのか、難しい主題である。
「その日まで」も、これまたある事件が思い出された。事件や事故は第三者にとっては風化していくものであるが、風化しえない、されえないのが当事者だ。いずれにせよ、悪銭身につかずと言うではないか。

わたしはここにいる。
だから、見つけて欲しい。
わたしはここにいる。
だから、見つけないで。
でも、わたしはここにいる。ここにいる。ここにいる。
忘れられても忘れはしない。
気づいて。見つけて。探して。わかって。謝って。

「わたしはここにいる」と呟くことそれ自体が、他者への願いとなっている。
自分が呼びかけるのではなく、向こうから気づいてほしい、呼びかけてほしいという願いである。
それは赤ちゃんの泣き声にも似ていて、どこか子どもじみているかもしれないが、とても切実な響きを持つこともある。
誰も、白雪姫にはなれないし、眠り姫にもなれないし、シンデレラにもなれないし、人魚姫にもなれないし、心の中で「ここにいる」と叫び続けてみても見つけてもらえるとは限らない。
あるいは、見過ごして、そっとしてもらえるとは限らない。
ここにいると呟いているのは過去の自分であり、その呼びかけは、現在の自分に、母親に、過去の恋人や疎遠になりつつある夫に、道をたがえた同級生、社会一般、あるいは、既に死んだ人に、向けられている。
叫んでも届かないことがわかっているから叫ばない。でも、呟かずにはいられない。
その営みのむなしさが救いがなくて、しかもなんだか軽々しくて、溜め息をつきたくなるのだ。
文章は読みやすく、物語の筋もわかりやすいが、私の好みではなかったようだ。

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