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2010.08.26

盗人の報復:ヴァルデマールの絆

盗人の報復―ヴァルデマールの絆 (C・NOVELSファンタジア)  マーセデス・ラッキー 澤田澄江(訳) 2010 中央公論新社(C.NOVELS)

最近のラッキーの主人公は、がんばる男の子が続くなあ。
エルスペスの相棒で、後にナイアラの恋人になる、名脇役。
個性派揃いの〈使者〉の中でも、特異な前職と特技を持つのが、この主人公のスキッフだ。

スキッフが〈使者〉になる前、貧しい地域でこき使われていた子ども時代から話は始まる。
いかに〈使者〉がいたとしても、乏しく貧しく険しい生活が首都ヘイヴンの中にあり、ヴァルデマールが理想郷ではないことを作者は暴くのだ。
国の提供する最低限の教育と食事を頼りに、細々と生き延びるしかない子ども達。
虐待される。搾取される。陵辱される。弱者が恐れなくてはならない危険は多い。
生き延びることは、生半なことではない。生き延びるための技術があれば、大人になれる可能性が増えるかもしれない。

スキッフを拾い、生き延びるための技術を学ばせた、ベイジーという老人がなんといっても印象的だ。
戦争で両足を失い、身の回りの世話する手を必要としている男だ。ベイジーは少年達を集めてはささやかな教育と保護を与えて、盗賊の技術を与え、代わりに少年達の収入を頼る。
ベイジーは、「友達は自分で選べる家族だって」(p.100)というスキッフの言葉に涙ぐむほど、孤独な境遇にあった。
この共同生活は、家族のような温かさのある魅力的なものに見えてくる。しかし、いつまでも続かないことを、読者は予感してしまうのだ。

スキッフがキムリーに選ばれ、〈使者〉訓練生として〈学院〉で生活するのが物語の後半だ。
そこに出てくる人たちには懐かしさを感じた。
〈君主補佐〉はまだタラミールであり、学監はエルカース。テレンは既に教育係だ。
ジェイダスの名前が出てきたり、クリス、ダーク、ジェリといった顔ぶれも登場する。
タリアの物語「ヴァルデマールの使者」のシリーズと大きく重複する、しかし、ちょっと時間を遡った顔ぶれと思えばいい。
中でも、今回の大活躍はアルベリッヒだ。アルベリッヒにこんなに台詞が多いのも、初めてのような気がした。

少年が復讐の無意味さを学んでいく過程は、苦い。
復讐を志すほどの悲劇があり、その悲劇を購えることはないという事実がある。
けれども、少年は〈使者〉になる。
その苦い世界を、ほんの少しでもよりよいものにするために。

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